【論文】2015年「指定管理者制度の導入状況調査」結果の概要と課題―制度の抜本的な見直しは喫緊の課題―

『「指定管理」ブックレット改訂版 今こそ、指定管理者制度の抜本的な見直しを―制度運営の検証と見直しの論点、課題―』より

2016年5月26日

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角田 英昭(つのだ ひであき)
自治体問題研究所


はじめに

総務省は2016年3月、「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査結果」(2015年4月1

日現在)を公表した。指定管理者制度は、地方自治法の一部改正により2003年9月に施行され、その後3年間の経過措置を経て2006年9月から本格実施された。総務省は2006年、2009年、2012年と3年ごとに導入状況調査を行い、その結果を公表してきた。今回の調査もそれらに続くもので、概要とそれに対する評価は下記の通りである。

導入施設数は693..76,788施設で、現在も増え続けている。制度運営上の最大の問題は、指定取り消し、業務停止、期間満了取りやめ(以下「指定取り消し等」)が、今回の調査でも2,308件あり、制度の本格実施以来9年間で6,823件にもなっていることである。その結果、直営に戻すものもあるが、住民の福祉の向上を図るために設置された公の施設の多くが休止・廃止、民間譲渡などに追い込まれている。これは由々しき事態であり、適用施設の限定、制度の廃止をも含む抜本的な見直しが必要である。

なお、調査内容は、前回(2012年)から2010年12月の総務省自治行政局長通知を踏まえ、リスク分担(施設修繕、備品、緊急時対応)や労働法令の遵守、雇用・労働条件への配慮規定、個人情報保護の記載状況などが追加されている。これらは実態把握の上では重要な事項であり、追加したことは評価ができる。問題は中身であり、それをどう実効あるものにしていけるかが課題である。

また、今回の調査では「地方行政サービス改革の取組状況の見える化・比較可能な形での公表」が推進されており、調査結果の公表に際して、都道府県・指定都市・市区町村別の施設別導入状況が図表で示されている。それを見ると予想を超える進ちょく度であり、政府側のさらなる制度導入、企業参入を促す意図が明確にみえる。調査結果のポイントでも、「約4割の施設で民間企業等(株式会社、NPO、学校法人、医療法人等)が指定管理者に」と強調している。いま必要なのは、単に制度導入率や民間企業などの割合を高めることではなく、公の施設が本来の目的に沿って十分な役割が発揮できているのか、それを的確に把握し、改善していくことである。

1 全体的な状況

(1)導入施設数は、前回から3,312増え76,788施設になった。自治体区分別では、市区町村が61,967(+3,255)、指定都市が7,912(+271)と増えており、とくに市区町村の伸び率が高い。都道府県は6,909(△241)で、初めて減少に転じている。

施設別の導入状況をみると、都道府県の導入率は極めて高く、半数近くが既に9割を超えている。導入率が5割未満の施設は、例示された22施設中、図書館(9%)、開放型研究施設(28%)、博物館(49%)の3施設のみである。既に事態はここまで進んでいる。指定都市も類似の傾向を示している。市区町村は、導入率5割以下の施設の方が多く、これからさらに増えることが予想されるが、指定取り消し等の件数(2,095)は多く、その結果、「直営」(業務委託含む)に戻す施設(756件)も36%と高く、的確、慎重な運用が求められる。

(2)指定管理者別では、公共的団体が28,419(37%、前回比3%減)で最も多く、次が財団・社団法人等の19,680(25%、同1%減)となっている。これらの団体の割合は、調査の度ごとに減少している。その理由は、公共的団体の場合は指定取り消しなどが多く、財団・社団の場合は再編・統合等が進んでいるためと思われる。その一方、民間企業などの割合は、毎回確実に増え、株式会社は14,998(19%、同2%増)、NPO3,525(5%、同1%増)となっている。

(3)公募は全体で35,731(46%、前回比3%増)で、この割合は徐々に増えている。都道府県は横ばい(63%)であるが、指定都市(68%、同4%増)、市区町村(42%、同3%増)は増えている。

なお、市区町村の公募率は、増えてはいるが都道府県や指定都市と比べるとかなり低い。それは実

質的には参入事業者(応募者)が少なく、選択肢が限定されるためと思われる。

また、従前の管理受託者・指定管理者が公募によらず選定された施設数は37,263(48%)で、前回調査の割合(49%)とほぼ同じであり、約半数が公募によらずに選定されている。これはそれぞれの施設の性格や施設運営の実態などを踏まえて、自治体側が政策判断したことの結果であり、この水準でおおむね定着していくと思われる。

(4)指定期間は、5年が50,174(65%)で最も多く、前回比で+9,042(9%増)と大幅に伸びている。当初3年が最も多かったが、それでは職場運営は不安定となり、そこで働く職員も不安であり、専門的・技術的な蓄積、人材育成、利用者との信頼関係の維持、安定運営などに支障をきたすと指摘されてきた。そのなかで、指定期間5年が増え、定着してきたことは一定の前進である。

(5)選定手続・選定基準・選定理由の事前公表の状況は、今回はそれぞれ57%、56%、60%と若干

改善されているが、それでも50%台であり、民主主義的な手続き、透明性の確保が求められる。

選定基準の内容では、「施設のサービス向上」(96%)、「団体の業務執行能力」(94%)、「管理経費の節減」(94%)が高くなっているが、実際の場面では「管理経費の節減」が重視されている。

指定管理者の評価では、実施している施設数は58,945(77%)と比較的多いが、公共サービスについて専門的知見を有する外部有識者の視点を導入している施設となると20,271(26%)と少ない。

また、緊急時の対応、労働法令の遵守、雇用・労働条件への配慮規定の記載状況は、「選定時に示している、かつ協定等に記載している」の割合は、それぞれ67%、49%で、どちらも前回より若干高くなっている。しかし、これらは本来、すべて事前に記載しておくべき事項であり、早急な改善が求められる。とくに労働法令の遵守、雇用・労働条件への配慮規定の記載状況は49%と低く、対応が遅れている。

具体的な内容では、人員配置、勤務体制、労働時間に関することが多く19,786件になる。これらが実際にどのように記載され、それが予算措置(指定管理料)も含め、現場でどのように担保されているのか、実態を的確に把握し、自治体側に改善を求めていく運動も必要である。

なお、導入施設7万余の全体状況を詳細に評価、分析することは困難であり、以下では、指定管理者制度の問題点、課題が具体的かつ顕著に現れる「指定取り消し等」から実態の分析、検証をしてみたい。

2 「指定取り消し等」の状況

(1)自治体区分別の状況

「指定取り消し等」の件数は2,308件で、前回調査より107件減少したが、相変わらず高い水準である。その内訳は、「指定の取り消し」が696件(30%)、「業務の停止」が47件(2%)で、「期間満了指定管理の取り止め」が1,565件(68%)で最も多い。自治体区分別にみると、都道府県は106件(前回比△501)で大幅に減少しているが、指定都市は107件(+23)、市区町村は2,095件(+371)と増えている。

上記の「指定取り消し等」の件数減、都道府県の大幅減は、公営住宅法に基づく管理代行制度への移行分の減少(296→0)などによるものである。

(2)「指定取り消し等」の理由

「指定取り消し等」の理由(複数回答可)では、「費用対効果・サービス水準の検証の結果」が609件(25%)で最も多く、以下、「施設の民間等への譲渡・貸与」が571件(24%)、「施設の休止・廃止」が547件(23%)、「指定管理者の合併・解散」が178件(7%)、「指定管理者の経営困難等による撤退(指定返上)」が174件(7%)となっている。なお、市区町村では、「その他」のなかに公募しても応募なし24件、議会の同意が得られない36件などもある。

「費用対効果・サービス水準の検証の結果」とは、自治体側が指定期間の満了をもって指定を取り止め、指定管理の費用対効果やサービス水準などの実態を踏まえて、当該施設のあり方を再検討し、直営や施設の統廃合、休止などに振り分けていくものである。実態的には行政による公の施設の仕分け、再編・整理の便宜的な手法、手段になっている。

その意味では、「費用対効果等」の件数が少ない指定取り消し施設の理由を見た方が、ことの本質がよく見える。同施設は全体で696件あり、取り消し理由(703件、複数回答可)を見ると、「施設の休止・廃止」が205件(29%)で最も多く、次が「指定管理者の経営困難等による撤退(指定返上)」「業務不履行・不正事件」131件(19%)、「指定管理者の合併・解散」123件(17%)、「施設の民間等への譲渡・貸与」122件(17%)となっている。これらを合わせると8割以上になる。こうした理由で公の施設が再編、淘汰されている。

(3)「指定取り消し等」の後の管理の状況

では、その結果、これらの施設がどうなったのか。「指定取り消し等」の理由から考えれば当然であるが、「施設の統廃合、民間等への譲渡・貸与」が1,050件(45%)で最も多い。これに「施設の休止」130件を加えれば1,180件(51%)になり、結果的に半数以上の施設が、統廃合、民間譲渡、休止に追い込まれている。ここには「費用対効果等」により自治体側が独自に振り分けた結果も含まれている。

その一方、「直営に戻す」も767件(+135、33%)に増えている。とくに市区町村の割合は36%と高く、精査は必要であるが一定の評価はできる。同時に、直営といっても施設によっては常勤職員がいない、経費節減が徹底されている、非常勤職員の割合が高い、さらには専門職員の辞職や配置換え、技術やノウハウの蓄積も薄くなっているなど、さまざまな問題を抱えている。併せて業務委託の状況調査も必要である。再指定は134件(6%)と少ない。なお、上記の「管理の状況」の区分には、「費用対効果等」の理由により、自治体側が独自に振り分けた結果も含まれている。

この間、総務省は2度にわたって是正通知を出しているが、状況は改善されていない。指定管理者制度は、自治体側にとっては人員・経費の削減、管理権限の一部まで委ねることができる行革の“切り札”であり、民間企業にとっては、自治体が税金で建設した施設を企業活動の道具にできる、先行投資のいらない安全な市場であり、うまみがなければ、経営が困難になればいつでも撤退(指定返上)できる。実際に指定取り消し施設の131件(19%)はこの理由である。民間企業の管理者からは、管理権限の拡大、オプション事業の容認などの要求も出ている。

これで公的制度といえるのか。制度を主導してきた総務省の責任は大きいが、自治体側の姿勢、制度運用、参入団体・企業のモラル、経営実態が厳しく問われる。議会の議決を経て指定した公の施設がこの9年間で6,823件も「指定取り消し等」になり、かつ公務を通して大量の官製ワーキングプアが作り出されている。端的にいえば、指定管理者制度は公的制度として事実上破綻しているといえる。適用施設の限定、制度廃止をも含めた抜本的な見直しは緊急の課題である。

同時に、既に76,000超の施設に導入されている現実を踏まえ、そこで働く労働者、事業者の実態を調査し、雇用・労働条件、委託料、運営などの改善を図っていくことが必要である。

詳しくは「改訂版 今こそ指定管理者制度の抜本的な見直しを」(自治体問題研究所、2016年5月発行)を参照されたい。

『「指定管理」ブックレット改訂版 今こそ、指定管理者制度の抜本的な見直しを―制度運営の検証と見直しの論点、課題―』より

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