【論文】「さいたま市市民活動サポートセンター条例」改正がもたらしたもの

住民と自治2016年6月号より

2016年6月15日

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村田 恵子(むらた けいこ)
特定非営利活動法人さいたまNPOセンター 専務理事


開設以来8年半、行政との「協働」が

埼玉県のJR浦和駅東口の駅前にある「さいたま市市民活動サポートセンター」(以下サポートセンター)は、非営利で公益的、自主的な市民活動を支援するための公共施設として2007年10月にオープンしました。

その特徴は①2005年9月から2007年10月まで50人以上の市民参加で議論されてきた意見がハード面でも運営面でも反映されている施設であること、②開設以来連日1000人以上が訪れて、2016年3月31日には、登録団体1700、来館者数累計400万人を数える人気の施設であること、③運営面では「さいたま市型協働管理運営」として、市内で3年以上の活動実績のある市民活動団体が「協働」のパートナーである指定管理者に応募できるとする「管理運営要領」をもっていたこと、④行政と指定管理者になった市民活動団体が「協働」の対等なパートナーとして構成する「連絡調整会議」や「協働管理運営」をチェックし運営の相談にのる第三者機関である「運営協議会」を設置して、システムとその活動において「協働管理運営」が実現していたこと、⑤市役所の行ったシンクタンクによる外部評価においてもオールAの評価を得ており、市民協働推進課が毎年行っている利用者団体アンケート調査でもほかの公共施設よりも高い評価を得ていることがあげられます。

2016年4月からの5年間は、あらたに第三期の指定管理者が選考されることになっていましたが、市役所は指定管理者にも運営協議会にも相談することなく、2015年6月に一方的に「管理運営要領」を変え、この結果、第三期指定管理者に応募したさいたまNPOセンターが主体となった市民活動団体は、企業、外郭団体と競争することを余儀なくされました。

10月はじめに行われた指定管理者選定委員会では、市民活動団体が最高点を獲得し、10月15日付で市民活動団体が選定されたという通知が指定管理者選定の担当課から市民協働推進課にだされていました。

14団体を「政治活動団体」とやり玉に

2015年10月5日のさいたま市議会の決算・評価特別委員会で自民党市議のひとりが、サポートセンターの利用団体の中から14団体(うち登録団体は12団体)を列挙して、「『原発埼玉県民投票準備会』は埼玉県議会に請願をしたが、これは立派な政治活動だろう」「デモをやっている『九条の会・さいたま』は自公政権に対する批判をくりかえしている、これは政治活動でないのか」など「サポートセンターを利用する団体が政治活動をしているのは問題だ」とし、公明党の賛同を得て、10月9日に2014年度決算報告書の承認の条件に「さいたま市市民活動サポートセンターの適切な管理運営の確保を求める決議」という附帯決議をつけました。

さらに、市民活動団体が第三期指定管理者に選考されたと通知された同じ日の10月15日に、さいたま市議会定例会(本会議)に、自民党市議によって「さいたま市市民活動サポートセンター条例」の改正案が提出されました。「サポートセンターの管理の基準をあらたに定めるまでの間、指定管理者制度を適用しない」つまり、市の直営にするという内容で、この改正案は翌16日に自民党・公明党の賛成で可決されました。反対は民主改革・共産党などでした。

市民団体は「政治活動」をしてはならない!?

この決議に対して名指しされた団体のうち8団体が抗議書を、96の利用団体と36人からは市議会に説明を求める要望書が提出されました。また、全国の市民活動支援センター46団体が連名で「市民活動団体による活動を不当に制限しようとする動きへの懸念」とする「意見表明」を市議会に送りました。「運営協議会」の委員も議会に対して説明を求める文書を送っています。

それから起こったことを一つひとつ列記していては紙面がつきてしまうので、主なことだけを挙げてみましょう。

市民協働推進課は、2016年2月10日に議会で「弁護士による法律相談をした結果、14団体の団体登録を取り消すことはできなかった」とする調査結果を報告しました。

わたしたちは最初から14団体に問題なしという結果は明白だと考えていました。運営の基になる「さいたま市市民活動及び協働の推進条例」(略して協働条例とする)の第2条2項では、個別の政策や施策に対する活動は、市民活動として除いていません。これまでの判例にもあるように、上位法の地方自治法第244条によって公の施設では利用拒否や差別的な取り扱いはできないのです。

市民協働推進課は3月15日、16日に2015年11月から利用団体が求めていた説明会を行いましたが、パソコン類やカラー印刷機などが夏ごろまで使用できないことが明らかになり、直営化を納得しない利用団体から罵声と怒号が飛び交い、荒れたものになりました。直営化による費用は、市職員の給与を含めると、指定管理者制度のときよりも約5000万円以上の経費がかかるのではないかとわたしたちは推測しています。

これに先立つ3月10日にもさいたま市議会では注目すべき発言がなされています。予算決算委員会で自民党の市議が、ある「安保法案に反対する」団体がグレーゾーンではなく真っ黒な政治団体で、その団体が使用していたサポートセンターは不適切な状態であった、と発言したことです。それに対して副市長が「(そのような状態ですので)直営で行う体制下で適正な状態にしていきたい」と答えました。

市民協働推進課によると3月7日に市民から通報があり、2015年9月にこの団体が「落選運動をする」と発言しているのが動画サイトで確認できたので、「協働条例違反」であるというものでした。したがって「サポートセンターは不適切な状態にあった」としています。この団体は正確には9月の段階では、サポートセンターの登録団体ではありませんでした。2015年10月に団体登録をしましたが、2016年1月末に市民協働推進課から呼び出しを受け、活動内容を問われたため「自分たちの活動を縛られたくない」として2016年2月4日に登録団体の取り下げを自ら行いました。

この団体は「どうしてわたしたちが条例違反の団体だと市役所にいわれなければならないのか。任意団体のわたしたちが何を主張しようが自由でしょう。それに2015年9月の段階でも、登録した後でも具体的な落選運動をしていた事実はありません。現在は登録団体にもなっていないのに議会で取り上げられ条例違反団体だと決めつけられ納得がいきません」と怒っています。

直営となったサポートセンターですが……

2016年4月15日現在、直営となったサポートセンターで窓口業務を行っているのは清掃を主な事業とし、福島県でテレビ局や美術館の受付業務を行ってきた市民活動とは縁のない企業です。金額だけの一般競争入札で選ばれたので当然といえるでしょう。

わたしたちが実施していた市民活動セミナー企画・運営や年3回のフェスティバルは、別の業者に委託するそうです。

「なんだか注意の貼り紙が増えたね」という声も聴かれますが、わたしたちが力を入れていた相談業務はどのようにされているのか不明です。

市民活動を活発にするためにつくられた施設が多様な市民活動を恣意的に規制する、という逆転した動きに変わらないようにするためにさいたまNPOセンターは、行政や市議会に対する働きかけを続けていきたいと思います。


(1)「さいたま市市民活動サポートセンター条例」では協働条例により、ア、イ、ウの活動を行う団体は登録団体となることができないとしています。

この条例が特定非営利活動促進法から引用されており、それ自体がまちがっているという学者もいます。

さいたま市市民活動及び協働の推進
条例 第2条第2項

(定義)
市民活動
市民が地域又は社会における課題の発見及び解決のために、自発的かつ自主的に行う非営利で公益的な活動をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
  • ア 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、又は信者を教化育成することを目的とする活動
  • イ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする活動
  • ウ 特定の公職(公職選挙法第3条に規定する公職をいう。以下同じ)の候補者(当該候補になろうとする者を含む。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とする活動

住民と自治2016年6月号より

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村田 恵子(むらた けいこ)
特定非営利活動法人さいたまNPOセンター 専務理事

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