【論文】TPPで地域の暮らしはどうなるのか

住民と自治2016年7月号より

2016年7月15日

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鈴木 宣弘(すずき のぶひろ)
東京大学教授


「対等な競争条件」の名目の下に「企業利益の拡大にじゃまなルールや仕組みは徹底的に壊す、または都合のいいように変える」ことによって、人々の命、健康、地域の暮らし、環境が犠牲にされるのがTPPと規制改革の本質です。

「自由貿易」と「規制改革」の本質

TPP(環太平洋経済連携協定)を推進する米国共和党の幹部が巨大製薬会社から巨額の献金を得て新薬特許の保護期間の延長を画策しているように、TPPには国際的な「斡旋利得罪」の構図が当てはまります。

多国籍化した大企業の経営陣は、その資金力を利用して、政治家、官僚、マスコミ、研究者を操り、大多数の国民を欺き、さらなる利益集中に都合の良い制度改変を推進していきます。equal footing(対等な競争条件)の名目の下に「企業利益の拡大にじゃまなルールや仕組みは徹底的に壊す、または都合のいいように変える」ことによって、人々の命、健康、暮らし、環境よりも目先の企業利益を追求します。

この「今だけ、金だけ、自分だけ」(3だけ主義)の行為こそが「1%」(富の集中する人々に対するスティグリッツ教授の象徴的な呼称)による「自由貿易」や「規制改革」の主張の本質です。

規制緩和すれば「対等な競争条件」が実現し、みんなにチャンスが増えるかのように見せかけて、国民の命や健康、豊かな国民生活を守るために頑張っている人々や、助け合い支え合うルールや組織を「既得権益」「岩盤規制」と攻撃して、それを壊して自らの利益のために市場を奪おうとしています。

「東京オリンピックまで総理でいたい」という発言に象徴されるように、「米国に追従することで自らの地位を守る」ことを至上命題とする官邸にとってTPPは絶対でした。米国の政治は巨大企業の献金によって動かされており、日本にも類似の構造があります。つまり、結局は、一部の日米企業の経営陣の思惑で政治が動かされている構造があります。

TPP合意の政府説明・対応への疑問

米国では、2015年11月5日の大統領の署名意思表示の90日後の2016年2月4日に署名、それから政府が105日かけてTPPの影響試算を出し、それに基づいて議会で5月中旬から議論する手続きと日程が明示されているのに、わが国では、TPP協定の詳細も国民に示さず、影響試算が出される前に、「国内対策」だけが先に示され、しかも、関連団体から要望を聞いたとしながら、対策も半年以上前に決まっていました。政府が考えている以上のセーフティネット政策の必要性を要請項目に挙げた団体には、政権党の幹部が激怒し、役所を通じて、政府が考えている以上のことを要請するなと事前に要請事項の削除を迫りました。

そして、2015年末にやっと出された政府の影響試算は、「影響→対策」の順で検討すべきを「対策→影響なし」と本末転倒にし、いわば「影響がないように対策をとるから影響がない」と主張しているだけです。「再生産が可能に」との文言を国会決議に紛れ込ませ、「国内対策をセットで出して再生産可能にしたから国会決議は守られたと主張する」シナリオです。

年が明けて、協定の日本語版も一部出されましたが、それを見ただけでは解釈は困難です。そこで、その条文の背景説明を求めると、「交渉過程は4年間秘密なので説明できない」との回答が返ってくるでしょう(実際には、タイトル以外が全面黒塗りの資料を出すという国民を愚弄した異常な無神経ぶりを晒しました)。そして、結局、まともな説明はなされないまま、時間は費やしたとして、党議拘束をかけて批准してしまうという手続きが「民主主義国家」で進められています。

「TPPはバラ色で影響は軽微」?

内閣府の再試算では、前回、TPPによる全面的関税撤廃の下で3・2兆円の増加と試算された日本のGDP(国内総生産)は13・66兆円の増加と4倍以上に跳ね上がり、農林水産業の損失は3兆円から1300~2100億円程度と20分の1に圧縮されました。これほど意図が明瞭な試算の修正は過去に例がないでしょう。「TPPはバラ色で、農林水産業への影響は軽微だから、多少の国内対策で十分に国会決議は守られたと説明しやすくするために数字を操作した」と自ら認めているようなものです。これほどわかりやすい数字操作をせざるを得なかった試算の当事者にはむしろ同情します。

前回の3・2兆円も、すでに、価格が1割下がれば生産性は1割向上するとする「生産性向上効果」やGDPの増加率と同率で貯蓄・投資が増えるとする「資本蓄積効果」を組み込むことで、水増ししていましたが、今回は、それらがさらに加速度的に増幅されると仮定したと考えられます。象徴的にいえば、「価格が1割下がれば生産性は1割向上する」どころか、「価格が1割下がればコストは9割下がる」と仮定したようなものです。どの程度コストが下がるかは恣意的に仮定できるので、こういう要素を加えれば加えるほど効果額をいくらでも操作可能です。この分野を専門にしているわたしがいうのだから間違いありません。数字操作の「万能薬」=「生産性向上効果」を入れてはいけません。

実は、政府自身も関税撤廃の直接的な効果のみでは、GDPの増加は0・34%、1・8兆円の増加にとどまるという数字を計算しています。本来は、このような直接的効果のみの試算結果をまず示すべきです。

農林水産業については、コメ、乳製品、牛肉、豚肉など重要5分野に含まれる586の細目のうち174品目の関税を撤廃し、残りは関税削減や無税枠の設定をし、重要品目以外は、ほぼ全面的に関税撤廃したにもかかわらず、生産減少額が20分の1に減るとは、意図的に数字を小さくしたとしか解釈のしようがなく、全国の農家の反発の火に油を注ぐことになるでしょう。

国内対策の強化といっても前回の試算時点よりも牛・豚の政府補填率が1割増える程度であり、様々な品目の価格下落分が政府の補填で相殺されるわけはありません。すると、価格下落分と同額のコスト下落が自動的に生じると仮定していることになり、どこにその根拠があるのか、示すべきです。

前回も今回も関税撤廃の条件で試算された品目について、対策の拡充もないのに、例えば、鶏肉は前回の990億円から19~36億円、鶏卵は1100億円から26~53億円、落花生は120億円からゼロ、合板・水産物で3000億円から393~566億円という説明不能な影響緩和になっています。実現するかどうかも不透明な体質強化策を前提に生産量と所得が全く変わらないと仮定するのは、あまりにも恣意的です。官邸に人事権も握られ、総理が「TPPはバラ色」という以上「被害が大きい」とはいえぬという無抵抗に陥ったのは悲しい。

しかも、コメについては備蓄での調整のみ(しかも備蓄期間を5年→3年と短縮)、牛豚肉の差額補填の法制化と豚肉の政府拠出の牛肉並みへの増加(50%→75%)、生クリームを補給金対象にする、などの国内対策は、牛豚肉の赤字補填率を8割から9割に引き上げる点を除いて、TPP大筋合意のはるか半年以上前に決まっていました。

そもそも、重要品目は「除外」とした国会決議に「再生産が可能になるように」との文言を入れ込んでありました。まず、「除外」の意味は全面的関税撤廃からの除外であって1%でも関税が残っていればいいとの屁理屈を用意していましたが、それをさらに補強するため、どんな譲歩をしてしまっても、国内対策をセットで出して、再生産が可能になるようにしたから国会決議は守られたのだと説明すればよいというシナリオが当初から考えられていました。それに基づいて、「再生産可能」と言い張るための国内対策は「大筋合意」のはるか以前にTPPの農産物の日米合意ができたのちに準備されていて、あとは「演技」だったのです。

「踏みとどまった感」を演出した「演技」

牛肉関税の9%に象徴されるように、今回の主な合意内容は、すでに、2014年4月のオバマ大統領の訪日時に、一部メディアが「秘密合意」として報道し、一度は合意されたとみられる内容と、ほぼ同じでした。つまり、安倍総理とオバマ大統領は、2014年4月に、実は、寿司屋で「にぎっていた」のです。そのわずか2週間前に日豪の合意で、冷凍牛肉関税を38・5%→19・5%と下げて、国会決議違反との批判に対して、19・5%をTPPの日米交渉のレッドラインとして踏ん張るからと国民に言い訳しておきながら、舌の根も乾かぬうちに9%にしてしまっていたのですから、恐れ入ります。

その後は、双方が熾烈な交渉を展開し、必死に頑張っている演技をして、いよいよ出すべきタイミングを計っていただけの「猿芝居」だったのです。「これだけ厳しい交渉を続けて、ここで踏みとどまったのだから許してくれ」と言い訳するための「猿芝居」を知らずに将来不安で悩み、廃業も増えた現場の農家の苦しみは、彼らにとってはどうでもいいこと、いかに米国や官邸の指令に従って、国民を騙(だま)し、事を成し遂げることで自身の地位を守るのがすべてなのかと疑いたくなります。

そもそも、3・11の大震災の2週間後に「これでTPPが水面下で進められる」と喜び、「原発の責任回避にTPP」といい、「TPPと似ている韓米FTAを国民に知らせるな」と箝口令(かんこうれい)をしいた人たちの責任は重大です。このような背信行為に良心の呵責(かしゃく)を感じるどころか、首尾よく国民を欺いて事を成し得た達成感に浸っているかに見えます。

「TPPはビジネス・チャンス」?

日本が、ここまでしてTPPがバラ色だと装いたいのはなぜでしょうか。アベノミクスの成果が各地の一般国民の生活には実感されない(そもそもアベノミクスは一部の投資家と企業の経営陣のために円安誘導と株価の強引な引き上げを行うものだから地域経済全般にはマイナスなのは当然です)のを覆い隠すため、TPP合意発表で明るい未来があるかのように見せかけようとした側面もあります。

しかし、ビジネス拡大のバラ色の世界が広がるかのように喧伝(けんでん)されていますが、TPPがチャンスだというのはグローバル企業の経営陣にとっての話で、TPPで国民の仕事を増やし賃金を引き上げることは困難です。

冷静に考えれば、ベトナムの賃金が日本の36分の1という下での投資や人の移動の自由化は日本人の雇用を減らし、賃金を引き下げます。端的に言うと、グローバル企業の利益拡大にはプラスで、中小企業、人々の雇用、健康、環境にはマイナスなのがTPPです。

そもそも内閣府などのモデルで失業が問題にならないのは、農家が失業しても、即座に自動車産業の技術者として再就職できるというような生産要素の「完全流動性」「完全雇用」を仮定しているからで、米国のタフツ大学でも、この非現実的な仮定を排除した試算では、TPPによって、日本のGDPは、TPPがなかった場合よりも、今後10年間で、0・12%低下し、雇用は7万4000人減少すると推定されています。

「健康と環境は訴えられない」?

特許の保護期間の長期化を米国製薬会社が執拗(しつよう)に求めて難航したことに、「人の命よりも巨大企業の経営陣の利益を増やすためのルールを押し付ける」TPPの本質が露呈しています。グローバル企業による健康・環境被害を規制しようとしても損害賠償させられるというISDS(投資家が国家を訴える)条項で「濫訴防止」が担保されたというのも疑問です。タバコ規制は対象外に(カーブアウト)できますが、その他は異議申し立てしても、国際法廷が棄却すればそれまでです。健康や環境よりも企業利益が優先されるのがTPPです。

要するに、「米国企業に対する海外市場での一切の差別と不利益を認めない」ことがTPPの大原則なのです。遺伝子組み換え(GM)表示もその他の食品表示、安全基準も、「地産地消」運動なども、TPPの条文に緩和が規定されなくてもISDSの提訴で崩される危険性を忘れてはなりません。韓米FTAでは、ソウル市の学校給食条例の廃止に象徴されるように、米国産を不当に差別する可能性を指摘され、数多くの国や地方自治体レベルの法律・条令を「自主的に」廃止・修正することになりました。地域の産業を振興するための政策が不当な差別ということになれば、地方自治行政そのものが否定されかねない重大な事態です。

公共事業の入札に、地元に精通した業者の点数が高くなるようなシステムも許されません。そもそも、日本は地方自治体レベルの公共事業を、TPP参加国のなかで最も開放した国と評価されており、英文で国際入札にかけないといけない公共事業の範囲が広がります。かたや米国は、TPPが連邦法にしか影響しないので、州レベルの公共事業は国際入札の対象外ですし、州法による「バイアメリカン」(公共事業に米国産義務付け)も影響を受けません。

「消費者は利益」?

TPPによって食料品価格が低下して消費者がメリットを得ると強調されていますが、輸入価格低下の多くが流通部門で吸収されて小売価格はあまり下がらない実態があります。さらには、日本の税収約60兆円のうち2%程度を占める関税収入の多くを失うことは、その分だけ消費税を上げるなどして税負担を増やす必要があることになり、相殺されてしまいます。

さらには、米国などの牛肉・豚肉・乳製品には、日本では認可されていない成長ホルモンなどが使用されており、安い輸入品に押されて国内生産の縮小が加速すれば、輸入品の安全性に心配が高まっても、そのときに国内で生産してくれる農家がいなくなってしまっていたら、選ぶことさえできなくなります。

「食の安全基準は守られる」?

食品の安全性について、TPPでは国際的な安全基準(SPS)の順守を規定しているだけだから、日本の安全基準が影響を受けることはないという政府見解も間違いです。米国は日本が科学的根拠に基づかない国際基準以上の厳しい措置を採用しているのを国際基準(SPS)に合わせさせるといっています。

たとえば、BSE(牛海綿状脳症)に伴う牛肉の輸入基準は米国にTPP交渉参加を承認してもらう「入場料」として、すでに20カ月齢から30カ月齢まで緩めましたが、国際基準ではBSE清浄国に対しては月齢制限自体ができないので、米国からの要求を見越して、食品安全委員会は月齢制限撤廃の準備を完了しています。TPPで食の安全基準は影響を受けないという国民への説明と完全に矛盾します。

また、「遺伝子組み換え(GM)でない」という表示が消費者を「誤認」させるとして、「GMが安全でない」という科学的根拠が示せないならやめろと求められ、最終的には、ISDS条項で損害賠償させるぞと威嚇されて、その前に「自主的に」撤廃に追い込まれることも想定しなくてはなりません。

米国の要求に応え続ける「アリ地獄」

農産物関税のみならず、政権公約や国会決議で、TPP交渉において守るべき国益とされた食の安全、医療、自動車などの非関税措置についても、軽自動車の税金1・5倍、自由診療の拡大、薬価の公定制の見直し、かんぽ生命のがん保険非参入、全国2万件の郵便局窓口でA社の保険販売、BSE、ポストハーベスト農薬(防かび剤)など食品の安全基準の緩和、ISDSへの賛成など、日本のTPP参加を認めてもらうための米国に対する「入場料」交渉や参加後の日米並行協議の場で「自主的に」対応し、米国の要求が満たされ、国民に守ると約束した国益の決議は早くから全面的に破綻(はたん)していました。

しかも、「TPPとも米国とも関係なく自主的にやったこと」と説明しておきながら、結局、TPP合意の付属文書に、たとえば、「両国政府は、①日本郵政の販売網へのアクセス、②かんぽ生命に対する規制上の監督及び取扱い、③かんぽ生命の透明性等に関してとる措置等につき認識の一致をみた。」などの形で、前言が誤謬(ごびゅう)だったこと、実は国会決議違反だったことを平然と認めています。

さらには、米国投資家の追加要求に日本の規制改革会議を通じて対処することも約束されており、TPPの条文でなく、際限なく続く日米2国間協議で、日米巨大企業の経営陣の利益のために国民生活が犠牲になる「アリ地獄」にはまったかのようです。それにしても、法的位置づけもない諮問機関に利害の一致する仲間だけを集めて国の方向性を勝手に決めてしまう流れは、不公正かつ危険と言わざるを得ません。

米国から見れば、日本から取るべきものは、ほぼすべて取り、日本が期待する米国の自動車関税の撤廃は「骨抜き」にして、農産物などの実利は確保した「日米FTA」を作り上げています。

批准が困難になっている米国に日本が画策~どこまでも差し出す国益

米国では批准が容易でない状況にあります。米国議会がTPA(オバマ大統領への交渉権限付与)の承認にあたり、TPPで米国が獲得すべき条件が明記されましたが、通商政策を統括する上院財政委員会のハッチ委員長(共和党)がTPP合意は「残念ながら嘆かわしいほど不十分だ」と表明し、このままでは議会承認が難しいことを示唆しています。ハッチ氏は巨大製薬会社などから2年で5億円もの献金を受け、特に、薬の特許の保護期間、ISDSからタバコ規制が除外できることなどを問題視しています。次期米国大統領の最有力候補のヒラリー・クリントンはじめ、労働者、市民、環境を守る立場から与党民主党はそもそも反対です。「巨大企業の経営陣の利益VS市民生活」の構造ですが、双方から不満が出ています。主な大統領候補の全員がTPPに反対を表明しています。

こうなると、日本政府が再交渉には応じないとしつつ、米国議会批准のための賛成票を増やすために水面下で日本がさらに何かを差し出すことが心配されますが、案の定、もうしているのです。駐米公使の「条文は変えずに改善できる」との発言や、豚肉政策の改善要求が発覚するなど、米国側からの追加要求に日本がすでに対応努力をしており、際限なき国益の差し出しは留まるところを知りません。

そもそも、米国議会でTPAが1票差でぎりぎり可決されたのに日本政府も貢献しました。日本政府が米国のロビイストに多額の資金を提供し、反対議員の説得工作をしたと報道されています(Bloomberg 2015.5.24)。米国では日本の譲歩による米国の利益を強調してTPPへの賛成を促し、日本国内では何も影響がないので大丈夫という「二枚舌」です。「TPPはバラ色」と見せかけ、自身の政治的地位を少しでも長く維持するために、国民を犠牲にしてでも米国政府(その背後のグローバル企業)の意向に沿おうとする行為は、これ以上容認できません。

政府は「規模拡大してコストダウンで農業を輸出産業に」との空論をメディアも総動員して展開していますが、その意味は「既存の農家はつぶれても、全国のごく一部の優良農地だけでいいから、大手企業が自由に参入して儲けられる農業をやればよい」ということのように見えます。しかし、それでは、国民の食料は守れません。

食料を守ることは国民一人ひとりの命と環境と国境を守る国家安全保障の要です。米国では農家の「収入-(マイナス)コスト」に最低限必要な水準を設定し、それを下回ったときには政府による補填が発動されます。農家が所得の最低限の目安が持てるような予見可能なシステムを導入し、農家の投資と増産を促し輸出を振興しています。わが国も、農家保護という認識でなく、安全保障費用として国民が応分の負担をする食料戦略を確立すべきです。

関係者が目先の条件闘争に安易に陥ると、日本の食と農と地域の暮らしの未来を失いかねません。TPP農業対策の大半は過去の事業の焼き直しに過ぎないばかりか、法人化・規模拡大要件を厳しくして一般の農家は応募が困難になるように設計され、対象を「企業」に絞り込もうとしているのも露骨です。TPPの影響が次第に強まってきて、気が付いたときには「ゆでガエル」になってしまいます。

現場で頑張ってきた地域の人々はどうなってしまうのでしょうか。全国の地域の人々ともに、食と農と暮らしの未来を崩壊させないために主張し続ける人々がいなくてはなりません。まず、TPPが食料のみならず、守るべき国益を規定した政権公約と国会決議と整合するとの根拠を国民に示せない限り、批准手続きはあり得ません。

住民と自治2016年7月号より

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鈴木 宣弘
鈴木 宣弘(すずき のぶひろ)
東京大学教授

1958年三重県生まれ。1982年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学教授を経て、2006年より東京大学教授。専門は農業経済学。日韓、日チリ、日モンゴル、日中韓、日コロンビアFTA産官学共同研究会委員、食料・農業・農村政策審議会委員(会長代理、企画部会長、畜産部会長、農業共済部会長)、財務省関税・外国為替等審議会委員、経済産業省産業構造審議会委員を歴任。国際学会誌Agribusiness編集委員長。JC総研所長も兼務。

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