【論文】コンパクトで進み出した大規模開発、なぜ失敗するのか

住民と自治2017年4月号より

2017年3月15日

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中山 徹(なかやま とおる)
奈良女子大学教授


しばらく下火になっていた大規模開発が、コンパクトをキーワードに各地で動き出しています。しかし、状況は芳しくありません。ここではその特徴と今後のあり方を考えます。

長期にわたって続く景気の悪化、財政状況の悪化、人口の減少などにより、大規模開発がやや下火になっていました。しかし、コンパクトとインバウンドをキーワードとして、駅前再開発やインフラ整備などの大規模開発が各地で動き出しています。ここではコンパクトをキーワードとして進み出した大規模開発の実態を把握し、なぜうまく進まないのかを考えます。

開発のキーワードはコンパクトとインバウンド

日本の人口は今後、大幅に減少します。1900年の日本の人口は4384万人、その後人口は増え続け、2004年には1億2778万人になりました。ところが2005年は人口が2万人減少し、その後は一進一退を繰り返していましたが、2009年から本格的な人口減少社会に突入しました。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測によりますと、これから人口は一貫して減り続け2110年には4286万人まで減少するとなっています。大雑把にいいますと、100年後には100年前の人口に戻ります。

もちろん少子化対策を進め、子どもを産み、育てやすい日本にすべきです。政府が2014年12月に定めた「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」では、2040年には出生率を2・07まで上げ、2110年には9026万人の人口を確保するとしています。2040年に出生率を2・07まで上げるのは大変ですが、それが実現しても日本では人口が減少します。

もう一つ問題になっているのが東京一極集中です。2015年、東京都は8万4231人の社会増で全国1位です。2位の埼玉県が1万8077人なので東京都の突出が目立ちます。ちなみに社会増だったのは7都府県です。政府が定めた長期ビジョンでは、2020年には首都圏と地方圏の転出入をゼロにするとしています。しかし都道府県が作成した人口ビジョンによりますと、首都圏の自治体は、今後50年間で人口減を5%程度で想定しています。それに対して地方では30%程度の人口減を見込んでいる県が少なくありません。全国的に人口が減る中で東京一極集中が止まらないため、地方から見るとダブルパンチのような状況で、地方では大幅な人口減少が必至です。

そのなかで地方が生き残る方策として考えられたのがコンパクトです。これには二つの内容があります。一つは、人口減少と共に市街地を縮小させることです。人口が減少するにもかかわらず、市街地が広がったままですと、人口密度が低下し、行政サービスの効率性が落ちます。そこで人口減少に合わせて市街地も縮小し、人口密度を一定に保とうという考えです。もう一つは、都市機能(行政施設や商業・業務施設)を都心部に集中させることです。郊外に拡散した都市機能を中心部に集積させることで利便性を高めようというのです。この後者を理由とした大規模開発が各地で実施、計画されています。

人口減少との関係でもう一つ重視されているのが、インバウンドです。「人口減少→消費の減少→雇用の減少→地域経済の衰退」が各地で生じています。しかし特に地方では、最初の「人口減少」は避けられません。そこで、人口が減少しても、消費が減らない方策として観光を重視しています。ただ、国内観光客の需要は落ち込んでいるため、期待しているのは訪日外国人です。つまり、国内消費の落ち込みを、訪日外国人の消費で補うという考えです。そのため、ホテル、国際会議場など、訪日外国人を増やすための施設整備、空港や港湾などのインフラ整備が実施、計画されています。

コンパクトの実態

青森市は全国でもっとも早くからコンパクトシティーの取り組みを始めました。内容的には大きく二つです。一つは都市構造をコンパクトにすることです。市内をインナー(中心市街地とその周辺)、ミッド(インナーとアウターの間で低層住宅地)、アウター(郊外)の3地域に分け、インナーは都市整備を重点的に進める地域、ミッドは無秩序な開発を規制しつつ良質な宅地を供給する地域、アウターは原則として開発をしない地域としました。そして高齢者のインナーへの転居を推進しました。もう一つは中心市街地の活性化です。その中心が青森駅前に整備した複合施設「アウガ」です。市街地再開発事業で整備された再開発ビルで、総事業費185億円です。地下1階、地上9階、延べ床面積5万4505平方㍍、地下は市場、1~4階は商業施設、5、6階は青森市男女共同参画プラザ、6~9階は青森市民図書館が入っています。開業当初は順調でしたが、次第に売り上げが落ち、アウガを運営する第三セクターは債務超過状態となりました。すでに商業施設は閉鎖され(2017年2月)、全館、公共施設に変えることが検討されています。

秋田市もコンパクトなまちを目指して中心部の開発を次々と進めました。秋田市はJR秋田駅の主として西側を中心市街地とし、そこに公共施設、商業施設の集約を進めようとしました。その中心は中道一丁目地区と秋田駅前北第一地区の市街地再開発事業です。前者は、商業施設、美術館、住宅などで、総事業費135億円、延べ床面積4万1665平方㍍です。ところがこれらは必ずしも順調には進みませんでした。前者については、2012年7月に商業施設がオープンしたものの、2014年3月に閉店し、その後新たな商業施設が開業しています。また当初の予定区域は2・9㌶でしたが、事業化された区域は1・7㌶で、それ以外については未定です。後者については、1989年に事業計画が認可されているものの、いまだ事業化は進んでいません。JR秋田駅に面した地区で、計画の見直し、事業者募集もしてきましたが事業化できず、2017年に策定された秋田市中心市街地活性化アクションプランに再び計画として位置づけられています。一方、1980年秋田駅前南地区市街地再開発事業(北第一地区の南側)で開店したイトーヨーカ堂が2010年に閉店し、フォンテAKITAとして再オープンしています。

中心市街地活性化の状況

全国的に大型店が郊外にオープンし、中心部が衰退し始めたため1998年に中心市街地活性化法が制定されました。その後、2006年に改正されましたが、その前後から人口減少が問題となり、中心市街地の活性化とコンパクトが一体で議論されるようになりました。改正中心市街地活性化法に基づき、2016年11月までに202の中心市街地活性化基本計画(以下:基本計画)が認定されています。基本計画の期間が終了すると、その結果を政府に報告しなければなりません。すでに107基本計画の最終報告が提出されているため、それを基に達成状況を見ます。

基本計画では事業達成度を計るための目標値を定めています。目標値は6つ、通行量、居住人口、販売額、空き店舗、施設入り込み数、公共交通機関利用者数に分類されています。報告ではその目標の達成状況とその目標に関係する事業の進捗状況を示しています。事業の進捗状況は2つ(計画した事業は予定通り進捗、予定通り進捗しなかった)、目標の達成状況については3つ(目標を達成、目標は達成できなかったが状況は改善された、状況は悪化した)にわけ、2×3で合計6分類しています(表1)。2011年度から2015年度までに最終報告を提出したのは105市、107基本計画、設定された目標値は313です。その状況を見たのが15㌻の表2です。

表1
出所:内閣府地方創生推進事務局HPより筆者作成
基準値は基本計画策定時の実績値

「目標を達成し、事業も予定通り進んだ」というのは全体の23・3%、「事業は予定通り進まなかったものの、目標は達成した」と合わせても27・8%です。つまり基本計画の目標達成率は3割以下です。反対に「悪化した」というのが49・8%です。ほぼ半数は事業開始時点よりも悪化したという結果です。困ったことに「事業は予定通り進んだにもかかわらず悪化した」というのが34・1%、3分の1もあります。

基本計画はすべてコンパクトを進めるものではありません。しかし、中心市街地活性化は先に書いたコンパクトの二つ目の内容を進めるものと位置づけられています。その達成状況が表2のようになっており、コンパクトの状況はかなり厳しいといえます。

表2
出所:内閣府地方創生推進事務局 各年度版「中心市街地活性化基本計画最終フォローアップ報告」より筆者作成
%:全目標数(313)に対する割合

なぜコンパクトがうまく進まないのか

先に書いたようにコンパクトには二つの内容がありますが、そのうち、中心部への集積を進めるための開発は各地で取り組まれています。これを進める国の制度として中心市街地活性化があり、市街地再開発事業、土地区画整理事業など、従来からある事業を活用できます。なかでも市役所や美術館、図書館などの公共施設は予算化すれば中心部に集約できます。ただし、中心部の活性化を進めるためには、商業施設の集積が必要です。そのために市街地再開発事業などを実施していますが、青森市や秋田市の例で見たように、状況は芳しくありません。それどころか商業施設の販売額はむしろ悪化しています。15㌻の表3は中心市街地活性化計画で設定した商業販売額目標の達成状況です。目標達成どころか悪化していると総括したのが全体の82%です。

表3
出所:内閣府地方創生推進事務局 各年度版「中心市街地活性化基本計画最終フォローアップ報告」より筆者作成
分類の1~6は表1の分類番号
( )内は合計に対する%

中心部で大規模な再開発を行っても、商業施設の運営がうまくいかない理由は以下の3点です。一点目は、圏域全体の人口が減少していることです。先に紹介した青森県は10年間(2005年から2015年)で9%、秋田県は10・7%の人口が減少しています。二点目は、郊外に対する規制ができていないことです。郊外にある大型店はそのまま郊外で営業を続け、場合によっては郊外に大型店が新たに出店しています。三点目は、郊外と都心部を結ぶ公共交通網が整備されていないことです。基本計画で公共交通の利用者数を目標値としたのは25で、全体の8%しかありません。しかも「悪化した」として総括しているのが68%です。

このような状況下で、都心部で大規模な再開発を行っても商業施設が順調に営業できるはずがありません。

コンパクトのもう一つは市街地の縮小です。しかしこれは理念として掲げられているだけで、ほとんど実施されていません。また、縮小を進める国の制度もありませんでした。

新たに制度化された立地適正化の内容と実態

そのような状況を踏まえ、コンパクトの二つの内容を進めるために、2014年に立地適正化が制度化されました。立地適正化では市街化区域に居住誘導区域と都市機能誘導区域を設けます。前者は市街化区域よりも狭い範囲で、その区域に住宅を誘導し、市街地を縮小する考えです。後者は公共施設や商業施設を誘導する中心部です。後者については税制上、金融上の優遇措置が明記されました。国土交通省によりますと、2016年12月31日時点で、立地適正化計画に取り組んでいる市町村は309です。

この居住誘導区域ですが、市街地の縮小を想定した日本で最初の制度です。しかし居住誘導区域は設定しますが、具体的な誘導措置はありません。居住誘導区域外の一定規模以上の開発について届出制度を導入しただけで、これで市街地の縮小が進むとは思えません。大型商業施設の郊外立地については従来のままです。

一方、都市機能誘導区域については、新たな措置が定められたため、中心部の開発はさらに進むでしょう。実際、立地適正化に取り組んでいる自治体の大半は、居住誘導区域の設定ではなく、都市機能誘導区域の設定に重点を置いています。

地域内での公共交通を整備するため2014年5月に地域公共交通網形成計画が制度化されました。ただし、基本的に独立採算を想定しているため、実現の可能性が大きく向上するとは思えません。また、民間事業者が難しい場合は、住民組織などでの運営を考えているため、実現できるところはごく少数だと思われます。

その上、東京一極集中が是正される見通しもなく、2020年の東京オリンピックに向け、むしろ集中度合いが増しています。立地適正化で中心部の開発、整備を進めようとしている市町村が多くなっていますが、「なぜコンパクトがうまく進まないのか」の章で書いた問題はそのままのため、むしろ中心部での乱開発、失敗が増えかねません。

地域の特性を踏まえた都市

コンパクトとインバウンドをキーワードに大規模開発が進みそうです。しかしそれらは失敗し、不良資産化しかねません。

地方の整備は、東京一極集中の是正と同時に進めない限り困難です。それを棚上げして、大規模開発を進めても失敗するでしょう。今後100年間で30%程度の人口減を見込む場合、地方の減少率は低く想定し、三大都市圏での減少率を高く見込むべきです。

人口減少率が20%程度であれば、防災的に脆弱な地域、農用地内に点在している宅地、自然景観上重要な地域からの転居に予算を使い、市街地の全般的な縮小は進めなくていいでしょう。

また、公共施設や商業施設を都心部へ集約するために大規模な開発を行うよりも、日常的に使う子育て支援、高齢者、障害者、社会教育などの公共施設を日常生活圏ごとに整備するほうを優先させるべきです。商業施設についてはまちづくりの視点から立地できる範囲を限定すると同時に、買い物に行きにくい人に対しては、買い物をサポートする仕組みを導入すべきです。中心部を整備する場合も、地域の歴史性、特性を踏まえた内容にすべきです。鉄道や高速道路が整備されているため、地方中心都市の比重が高まっています。どこにでもあるようなスーパーや百貨店を誘致しても失敗します。

日常的に必要な交通は独立採算とせず、義務教育や警察と同じように、国の責任で整備すべきです。そうしなければ地方で公共交通は成立せず、高齢化とともに住めない地域が広がります。

【参考文献】

  • 閣議決定「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」2014年12月
  • 内閣府地方創生推進事務局 平成23年度から平成27年度版「中心市街地活性化基本計画最終フォローアップ報告」
  • 立地適正化については、拙著『人口減少と地域の再編』自治体研究社、2016年5月を参照
  • 公共施設の整備については、拙著『人口減少と公共施設の展望』自治体研究社、2017年2月を参照

住民と自治2017年4月号より

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中山 徹
中山 徹(なかやま とおる)
奈良女子大学教授

1959年大阪生まれ。京都大学大学院博士課程修了。工学博士、一級建築士。主な著書に『人口減少と公共施設の展望』2017年、『人口減少と地域の再編』2016年、ともに自治体研究社。

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