町内会・自治会の特質と現代的課題

2016年1月15日
住民と自治2016年1月号より

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中田 実(なかた みのる)
名古屋大学名誉教授、東海自治体問題研究所副理事長

町内会・自治会を加入率減、担い手不足の悪循環から救い出し、時代の課題に応(こた)えられる組織に転換していくべきいま。地縁組織の特長をふまえて、住民と自治体の課題を考えます。


町内会・自治会のいま─長い転換期─

いま、あらためて町内会・自治会のあり方が注目されています。その背景には、深刻な大規模災害に見舞われた都市でも農漁村でも、近隣住民の助け合いや支えあいが重要な役割を果たした事例が多くみられたことがあります。災害直後の救出から避難所・仮設住宅の暮らしを通じて、同じ地区で生活をともにする人々の気心の知れた関係は、生活の迅速な再建に欠かせないものでした。また、「集落消滅」から「里山・里海」再生に向かう活動のなかで、地域再生の基軸として、集落の意味が再確認されてきました。

しかし、災害も高齢者介護も先のことと思いたい地域住民にとって、町内会・自治会の存在は影が薄く、マイカーとコンビニとSNSがあれば、隣人との付き合いは不要と思われることも多いのが現実です。その背景には、日々の仕事や生活に追われるなかで、いま地域がどうなっているかの情報もなく、直接関係のあること以外はなるべく関わりたくないし関わる余裕もない、という住民生活の姿があります。そしてそのために、こうした住民で組織される町内会・自治会は、組織への加入率の低下や役員のなり手がないという、組織存続の条件を欠く事態に追い込まれようとしています。

人口減少に転じた社会の構造転換は、地域でもそれへの備えをゆるがせにできないものにしてきています。震災を契機に、一時期注目されていたNPOやボランティア団体も、その守備範囲が明らかになってくるなかで、町内会・自治会などの地縁型組織の意味と役割とが、あらためて問われるようになっています。

(1)世帯の縮小と地域課題の変化

情報化を基盤とする日常生活の利便性の向上は、地域生活面での共同の必要性を低下させ、それが生活単位の縮小、すなわち小規模世帯の急増をもたらしています。この過程は少子高齢化の進行と並行関係をもって進んできました。

町内会・自治会は、住居=世帯を単位として組織されています。そして、世帯内の問題は世帯内で処理し、地域組織は、地域環境の整備や交通安全・防犯の活動、そして住民総出の地区行事という、世帯を超えた領域での活動を行えばよい、という役割分担ができていました。しかし、単位となる世帯の人数が減って家事や育児、介護の負担が重くのしかかるようになり、同時に非正規雇用の拡大と貧困層の膨張、それとあわせて進む公的福祉施策の後退で個人や世帯の負担が増え、地域の活動に参加することがむつかしい世帯が増えてきました。こうした状況下では、町内会・自治会が従来通りの組織運営や活動をしているだけでは、組織加入率や行事参加者が減少するのは当然のことでした。

世帯(家族)の縮小=個人化が進むなかで、町内会・自治会には、多様な条件を抱える住民個人を対象とした活動を行うことが求められるようになってきました。現代の町内会・自治会が直面する問題は、町内会・自治会について住民の理解や関心が薄いことだけでなく、世帯の構造変化から生じてくる問題が底流にあることを見落としてはなりません。

(2)地域行政サービスの縮小と町内会の広域再編の動き

このような状況のもとで、行政の側からは、分権の名により、住民自治と、住民と行政との協働が叫ばれるようになりました。地域組織の弱体化が進むまさにその時に、より大きな期待が地域組織に寄せられるという矛盾に、地域は直面することになっているのです。

そして、住民組織への加入率の低下が止まらないことがみえてくると、これらの組織の協力をえて末端業務を行ってきた行政も、地域組織へのテコ入れ=再構築を迫られてきました。町内会・自治会よりも広域の学区規模で、住民組織の再編を図る動きです。地方自治法上の「地域自治区」をはじめとして、従来から行政部署ごとに縦割りで囲い込んできた各種の住民組織を、すこし広域で住民自治協議会等にまとめ、各組織への補助金を一括交付金化して、その運用を住民協議会の自治に委ねる、というものです。

こうした住民組織の広域的な再編にあたって参加諸組織の対等性が強調されることがありますが、その基礎組織となるのが町内会・自治会であることに変わりはありません。他方で、近年の市町村の福祉計画では、町内会・自治会より下位の単位の組や隣組の役割に注目する動きも強まって、地域の活動への期待は高まっています。

長い伝統をもって地域の自治を担ってきた町内会・自治会は、今後いっそう進む少子高齢化の、多様で深刻な状況や課題に応じた組織と活動の見直しを迫られています。孤独死の防止や認知症住民の徘徊(はい かい)・生活の見守り、子どもの安全、空き地・空き家の管理など、新たな課題が生まれてきており、こうした課題に後押しされて、会の運営と活動の新たな展開を図る動きも出てきています。大きな課題をまえに、立ちすくむ地域もあるでしょうが、多くの組織は徐々にではあっても体制を整えようとしているといってよいでしょう。住民自治の力量は、厳しい課題に立ち向かうなかで鍛えられていく面も持つのです。この特集の以下の事例は、そのことを立証してくれます。

本章は、町内会・自治会の基本的性格とその可能性について、総論的に検討することを課題としています。

地縁組織の特徴と町内会・自治会

町内会・自治会の起源を、その全国的な制度化が行われた1940年の内務省訓令「部落会町内会整備要領」に求める見解があります。しかし、この時に、多様にあった会の名称を統一して町内会に変えた市町村であっても、地縁組織自体は、その前にも後にも長い歴史をもっています。地域住民の自治を考えるときには、国の政策だけを基準に判断するのでなく、実態として存在してきた住民組織の歴史をふまえることが必要です。

住民がある土地に生活の拠点を置いて生産・生活を行うためには、一定の条件整備が必要で、そこには住民の共同の力に依拠するしかないことが多くありました。

歴史的にみても、藩政期はもちろん、明治期に入って以後も、土地を持つ者と持たない者とで認められる権利に差はありましたが、その地域独自の共同社会関係を無視して政策を強行しても、現実は動かなかったのです。

明治初期に政府が政策的に導入した大区小区制が機能せず、旧来の町村に基礎を置く制度に戻されたこと(郡区町村編制法、1878年)、あるいは占領軍の町内会禁止令のもとでも町内会は実質的には存続したのがその例です。

(1)地縁組織としての特徴

グローバル化が進む時代になお、生活の場での住民の組織や関係が注目されるのはなぜでしょうか。この問いを解くカギは、地域組織が地縁関係に基礎を置くものであることに見出せます。

人間は生身の存在として、足を置く大地なしに生きていくことはできません。そして、同じ地域に留まる者の間には、意識するしないにかかわらず何らかの関係が存在し、現在でも、比重は低下したとはいえ、その点に変わりはありません。自然災害も、環境問題や各種の地域的な人災も、特定の地域範囲で、程度差はあれ、そこに居住するすべての人を巻き込んで害を与えます。深刻な災害時には、ほとんど例外なく『災害ユートピア』(R・ソルニット、亜紀書房、2010)が出現しますが、そこでは性・年齢も職業も家系も民族・国籍も関係なく、同じ場所にいるということが、かれらの関係を規定します。それが地縁関係の基本です。

こうした地縁関係は、地域生活の単位を基礎に表われてきます。人の暮らしの基準となる土地をめぐる人間関係(地縁)は、生活の単位組織の所在地、すなわち住所を基本とします。そのために、住居(及び生計)を一にする世帯(単身世帯を含む)が、その構成単位となります。

住民の生活は、その「区域内に住所を有する者(住民)」同士の関係の上に成り立っています。もちろん今日の住民の生活領域では、地縁による関係は限られたものとなっていますが、それでも地域の利便性、快適性、安全性等を高めるために、問題点を取り上げ、議論して、より多くの住民が満足できるものにするように協力し合うことが必要です(この取り組みを「地域共同管理」と呼びます)。地縁組織である町内会に求められるのは、この地域共同管理の機能を果たすことです。

(2)地縁組織の重層性

地域区画には広狭両面があり、広域の地域管理は行政や公共企業体等の業務です。そして、公的管理が及びにくい狭域こそが、住民が共同で行う管理の区域です。その狭域を生活の場とする住民が、自らの頭と手で、より安全で快適なものにしていく取り組みのためにつくっているのが地域住民組織です。それが町内会・自治会が追求する「近助」(山村武彦『近助の精神』金融財政事情研究会、2012)の関係であり、地域組織運営の原点です。

人の縁は多様ですが、地縁は他のどの縁よりも普遍的で客観的なものです。

グローバル時代にまだ町内会か、と考える人もいるでしょうが、政治学者の坂本義和氏は、グローバル化で主権国家は相対化されて一種の「地方自治体」となり、重層化された各種の「共同体」的連帯が広がるであろうことを想定しています(『人間と国家』下、岩波新書、2011、229頁)。身近な生活の場でも、地域生活がより快適なものとなるように地域共同管理を充実させることが期待されるのです。身近であればこそ、近くの人びとの自分たちの力でしかできないことがあるのです。

この役割を自覚的に組織化し、より適切かつ有効に管理するには、地域組織は、全世帯、全住民に開かれたものでなければなりません。したがって、町内会・自治会は、全世帯、全住民が参加する権利(義務ではなく)をもつものです。また、地域組織は、そのようなものとして、特定分野での活動を目指す市民組織とは異なって、地域を代表する包括型の組織であり、行政との接点をもつ組織です。こうした活動の経験は、隣にいる人が「赤の他人」ではなく、「遠くの親戚」以上に頼りがいのある人であることを知ることで、他者や公共に関心をもつ第一歩となり、また、社会関係資本の構成要素ともなるのです。

(3)退職住民の活躍の場づくりの支援

地域には多様な世代の住民が生活しています。かれらが地域で隣人同士、十分な交流機会をもてないでいることが、その能力を発揮できないでいる大きな原因となっています。その背景には、組織が住民に十分開いていないことがあるように思われます。この隘路(あい ろ)の打開のために、先ず強化が求められているのが情報発信力の向上です。町内会・自治会の未加入者が、加入しない理由としてあげる主な理由は、「多忙」と並んで「地域のことがわからない」ということです。情報発信の重要性に見合った人材の確保と広報体制づくりがぜひとも必要ですが、各種の職業で情報発信の経験を積んだ退職者が地域にもどってきています。この人たちの組織化が重要なポイントです。

さらに最近、子ども会が、子ども数の減少で世話をする親も減って負担増となり、それが支障となって子ども会を解散する事例が多いことに胸が痛みますが、子ども会の行事を老人会と一緒にしたり、必要に応じていろいろなお手伝いをしてくれる「お助け隊」を組織したりする例も聞かれます。

地域では、多様な役割を住民みんなで協力して担い合うことができます。お互いの負担を均(なら)して、無理なく役割を果たしあえる関係をつくることが重要です。そこでは、コンピュータ操作等の得意技で高次の役割を担う人もあれば、住民の誰もができることはみんなで少しずつ担当するということもあるでしょう。いずれにせよ、“つながり”とは「役割を担い合うこと」であり、それが地域で生きる活力を生みだすことにもなります。

町内会・自治会の活性化と自治体の役割

町内会・自治会が取り組む課題の多様化、困難化は、この組織が地域の企業や学校、福祉施設、あるいは種々の市民団体、NPO等と、相互協力体制を築いていくことを要請しています。しかし現実には、なかなか連携が進んでいないのも確かで、その理由は、町内会・自治会にたいする理解の違いや、両方の団体の誕生の歴史的経緯の違いもあって、組織間の接点がなかなか見いだせないことがあります。いったんつながりができれば、連携の有効性が確認できるだけに残念なことです。

連携のためには、両者とつながりをもつ行政の役割が大きいのですが、行政組織も、地縁組織と市民組織で担当部署が分かれているところもありますので、先ずは行政内で連携の意義を確認することが必要です。行政職員や専門的なアドバイザーによる支援の体制づくりは、今後の町内会・自治会の活動の展開で重要な一歩となると思われます。また、市民団体についても、自分たちの活動を住民生活の原点に根付かせる大事な経験となるように思います。

町内会・自治会の活動を行政下請けとひとくくりで捉えて論難する議論は、この組織の内外にあいかわらず多くみられますが、現代の生活が公共的な対処を必要とするライフラインにつながれ、ごみ処理から街路灯の維持管理まで、多くが公共的な事業として行われているだけに、住民の組織的な参加が欠かせないことも明らかです。行政と住民とが担う役割の関係を含めて共同で議論する必要は増しています。批判する人自身が組織の担い手とならなければ解決しないのが地縁組織です。

現実の課題をともに議論し、協働できる地域組織を整備していくことは、自治体にとっても欠かせない課題です。

住民と自治2016年1月号より

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中田 実(なかた みのる)
名古屋大学名誉教授、東海自治体問題研究所副理事長

1933年、愛知県生まれ。名古屋大学教授、愛知江南短大学長などを歴任。著書に『地域分権時代の町内会・自治会』自治体研究社など。


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