千早川での小水力発電の可能性—千早赤阪

(一般社団)大阪自治体問題研究所
柏原 誠(大阪経済大学准教授)


昨年末にパリで開催されたCOP21では、「気温上昇を産業革命前の水準から2℃未満とし、1.5℃に抑制するよう努力すること」を定めた「パリ協定」が採択されました。

わが国では、昨年は九州電力の川内原発、今年に入って高浜原発の再稼働が強行されました。前者は、近隣の火山帯の活動、後者は送電スイッチを入れたとたんの冷温停止と安全面での不安を増すばかりで、再生可能エネルギーへの転換は焦眉の課題です。

これまで依存してきた大規模集中型の電源と異なり、太陽光・風力・バイオマス・地熱・小水力(発電容量1000kw以下のもの)などの再生可能エネルギーは、その地域の自然条件や地形などにより様々な活用の仕方が考えられます。府内唯一の村・千早赤阪村の千早川上流でます釣り場を経営する井関酵一さんに小水力発電の話を伺ってきました。

ます釣り場は、河内長野や富田林からのバスで40分、終点手前の千早川の上流部分にあり、約60年前から手軽に釣りが楽しめる場所として人気です。

井関さんが子どものころは、千早川に関西電力の水力発電所が2カ所ありました。線香工場でも水車を利用するなど、この地域はもともと落差が大きな千早川の水力エネルギーの利用が盛んでした。

昨年になって、金剛・葛城自然エネルギーの会から、小水力発電の実験にます釣り場を使わせてほしいとの申し入れがありました。小水力発電は、燃料代ゼロ、24時間安定した発電可能というメリットがある一方、大雨や洪水でのオーバーフローや流木や落ち葉などの対策という課題も抱えていますが、ます釣り場は魚の養殖のために必要なこれらの水流の制御が技術的にも構造的にもすんでいます。また、水利権などもクリアできているという優位性がありまし

た。

昨年の5月以降何度か実験が行われ、5センチメートル落差を5センチメートルほどのパイプを流れてきた水がプロペラ式の水車を回しました。

現状は、動力を電気に転換する技術は確立しているが、場所によって条件が異なる水の流れを動力に変える流路や水車の構造をさらに検討している段階です。事業化にはもう何段階か必要だろうとのことでした。

発電実験の様子
画面のパイプによって、18mの落差で流れてきた水で発電実験(現在は発電機はない)

井関さんは、ます釣り場の食堂の天井の照明を水力発電で点灯し、環境に親和的な釣り場というイメージを作りたいといいます。現在は、実験に場所を提供しているという関係ですが、採算や技術が確実なものになれば事業化する考えも持っています。村も地方創生総合戦略の事業に、木質ペレットと小水力の調査・研究を掲げています。地域のコモンズとしての再生可能エネルギーの利活用は地域の自立の大きな柱です。森林浴をしながら釣り糸を垂らし、エネルギーの未来を考えてみるのはいかがでしょうか。

千早川ます釣り場 http://chihayagawa.jp