なくてはならない―子どもの健やかな成長のために―子ども会の育成、充実に奮闘!!

和歌山県地域・自治体問題研究所
丸山 雅史(御坊市職員)


全国的に子ども数の減少、社会生活環境の変化と地域における人と人との関係性の希薄化などを反映して、地域の自主的な子ども育成組織である「子ども会」が減少傾向にあります。子どもの健やかな成長のために子ども会の存在は不可欠だという熱い思いを持って、和歌山県御坊(ごぼう)市で子ども会育成に奮闘している丸山雅史氏に寄稿していただきました。

子ども会育成組織の現状は

わたしは御坊市役所で青少年健全育成を主に担当しています。その中でもとくに大きなウエートを占めているのが子ども会に関する仕事です。

子ども会とは、地域の子どもたちが自主的に親睦交流する組織で、学校のように学年ごとではなく多世代で、学校よりも小さな地域で集まることに特徴があります。

子ども会にはその保護者からなる育成会が置かれ、その育成会をまとめる存在として、「子ども会育成会連絡協議会」が各市町村に置かれています。

御坊市の場合では、「御坊市子ども会育成会連絡協議会」、通称「市子連(いちこれん)」が存在し、わたしが事務局をしています。

さらに上部に、「和歌山県子ども会連絡会(県子連)」が置かれ、さらに「近畿地区子ども会連絡協議会」「全国子ども会連合会(全子連)」が存在します。

もともとは、小学生を対象にして始まった子ども会事業ですが、現在では全子連が「就学前3年の幼児から高校3年生年齢相当までを構成員」としており、小学生に限定しないようになってきています。

各地域の最小単位の子ども会は「単位子ども会」と呼ばれ、自治会などが母体になっていることが多いようです。

御坊の「市子連」は

御坊市の子ども会はわたしの知る限りの昔から、少子高齢化による子どもの減少で、運営が難しくなった単位子ども会が脱退し、全体の規模が小さくなっていくという状況が続いています。

少ない子どもをスポーツ少年団や学習塾などその他の課外活動と奪い合うという状態も起きていて、行政全体としてもどこにどの程度注力するかを選ばなければならない段階になっているのかもしれません。その一方で、単位子ども会が無くなっていることにより、子ども会活動をしたくてもできない家庭や児童も増加していると思われ、市子連への問い合わせもたびたびあります。

そのような状況で市子連自体の運営にも影響があります。

市子連の行事への参加者の減少はもちろん、会長や監事など役職の引き受け手が無く、同じ人に何年も会長をしてもらっているという現状があります。

市子連では年一回の総会と数回の理事会が行われますが、基本的には事務局主導で、単位子ども会や保護者の話し合いで運営しているとはいいがたい状態です。

各単位子ども会は自治会やPTAなどとの結びつきが強いらしく、市子連としての活動は事務局が行うものだけになってしまっています。

このような傾向は御坊市だけのことではないのかもしれませんが、近隣の他市町と比べて自立性が乏しく、行政と市民の協働がうまくできていないのかもしれません。担当者として考えさせられるところです。

さまざまな体験事業に取り組んでいます

市子連の行事として、たとえば年3回から6回ほど行われる「わんぱく王国自然工作体験事業」や、和歌山工業高等専門学校や地元の商店と協力して行われる「夏休み子ども体験事業」、ジュニアリーダーやシニアリーダーの育成を兼ねて和歌山県立白崎青少年の家に一泊する「胸キュンキャンプ」などがあります。

先に述べたように全体としてはじりじりと参加者が減っている状態ですが、「夏休み子ども体験事業」などは毎年定員いっぱいまで応募があり、必ずしも市子連行事の需要がないというわけではないようです。

ジュニアリーダーやシニアリーダーというのは子ども会のお兄さん・お姉さん的役割で活動に協力する中高生や、青年のことで県や、市町村などさまざまな単位で組織化されています。

「胸キュンキャンプ」については市子連事務局は事務的な手続きと参加者募集、それに物資をそろえることが主な仕事で、当日の運営は主に和歌山県シニアリーダーズクラブHOPEと白崎青少年の家に行っていただいています。わたしが担当する前は日(ひ)高(だか)地方のジュニアリーダークラブに協力をお願いしていたのですが、その団体がなくなってしまったため、いまは他市町のジュニアリーダーに協力していただいています。小学生の参加者は例年10人から20人ほどで、年度によって増減が定まりません。そのため、参加者よりも運営側であるリーダーのほうが多くなるということもあります。

「わんぱく王国自然体験事業」については、事務局主導で行われ、山あいの土地を借りて野外炊飯や木工を行ったり、冬場は公民館などを借りてクリスマスの飾り付けなどを行っています。こちらの参加者は最近は減少気味です。子どもの減少もありますが、担当のわたしが魅力的なイベントを考えられていないという面は否定しがたいところです。

子ども会活性化のために規約改正に

そのような状態にある御坊市の子ども会ですが、今年度、規約などの改正を行いました。

まず、明確化されていなかった市子連への加盟の手続きや基準を明文化しました。

また、かつて子ども会が小学生だけのものだった時代の名残で小学生に限定するような文言があったのを訂正しました。

そして補助金などの支給要件の緩和です。

子ども会の構成員を小学生に限定しないというのは、あくまで市子連での方針ではそうなったということで、各単位子ども会に直接当てはまるものではありません。

というのも、改正に当たって「子どもが中学生になっても子ども会役員をしなければならないのか」というような戸惑いの声が聞かれたことや、各単位子ども会にはそれぞれの事情があるためにです。

したがって、実際に中高生や幼稚園児を子ども会にいれるかどうかは各単位子ども会の判断になります。

和歌山県は「リレー式次世代健全育成」として中高生を子ども会活動にかかわらせようとする方針ですが、県下全体として中高生の参加は少なく、それには子ども側の事情だけではなく上記のような大人側の都合もあるようです。

規約などの改正の効果が出るのはまだ先の話ですが、少しでも子ども会縮小への歯止めになればと思います。

リーダー育成と活用に力を注いでいます

また、規約などの改正のほかに、他市町のジュニアリーダーやシニアリーダーに積極的に協力をお願いするとともに、御坊独自でリーダー研修を企画するなどリーダーの育成と活用に力を入れています。

こちらもまだまだ見切り発車でこの先どうなるか分からない面があります。そもそも中高生数が減っており、また部活動など他の課外活動との兼ね合いも小学生より多く、右肩上がりにリーダー活動を行う中高生が増えるということは考えにくい状況です。

それでも、大人のみで子ども会事業を行うよりも、そのほうが子どもたちの反応はたしかによく、どうにかしてある程度の規模まで育て維持していくのが望ましいと思います。

子ども会は健やかな成長のために絶対必要です

少子高齢化により、子どもの数が減っていますが、子ども会が無くていいという話にはなりません。

子ども会がなくなってしまった地域や市町村もありますが、それは地域が結束するためのひとつの有用なツールを失ってしまったということだと思います。

新興住宅地などでは子どものことを中心にコミュニティーが形成されていくというのは社会学的によくいわれていることです。

御坊市でも実際に、子ども会活動をきっかけに新住人と旧来からの住人との交流が活発化したという事例があります。

そしてなにより、毎年、市子連の事業への参加を心待ちにしてくれている子どもや保護者が存在している以上、子ども会というシステムを存続させ、子どもの健やかな成長に貢献していかなければなりません。