差別発言をのりこえ多様性が生きる社会へ

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私が30年来地方議員として活動している足立区では、2020年9月25日の区議会本会議で、「LGBTで足立区が滅ぶ」と当選11回のベテラン自民党区議が発言し、物議をかもしました。SNSで発言を知った全国の当事者や関係者が抗議の声をあげたことで、テレビのワイドショーにも連日報道されたので記憶にある方も多いかと思います。

その後の足立区政の変化と現在、その背景にある住民パワーについてお伝えします。

同議員は少子化問題に触れ、LGBTについて「日本人が全部L(レズビアン)、全部G(ゲイ)となってしまったら、次の世代をになう人が生まれない」「もし足立区に完全に広がったら足立区民がいなくなってしまう。足立区は滅んでしまう」などと発言しました。

戦前の男尊女卑や個人の国家への従属を美化する「靖国派」議員は、長年にわたり行政に圧力をかけ、自治体職員を萎縮させていました。「自分の健康は自分で守らなければ。足立区に何とかしてもらおうと考えている人は、生きていたって大したことはない」「『自助・共助・公助』は長年私が求めて来たこと」との自己責任論の押し付け、「2歳までは家庭で育てたいというのが親心、母心。認可保育園は2歳以上からにして、0~2歳児は家庭での保育を中心に」など時代錯誤の発言をつい最近まで繰り返していました。そのたびに議会で抗議をしても「コップの中の嵐」で、許されるものだと思っていたようです。

しかし住民パワーがそれを許さなかったのです。発言を知った当事者団体の方が「ひどい」と動画をSNSで発信、これが爆発的に広がり、ついにテレビ取材もきました。ワイドショーなどのインタビューで「何が悪い」「謝罪そのものが考えられない」と開き直る同議員の姿に、多くの方の心が傷つき、さらに怒りが沸騰しました。「辞職を求めます」のネット署名は、短期間で3万名を超え、役所も議会も抗議電話の対応に追われる毎日でした。

そしてついに彼を謝罪・撤回、厚生委員長辞任に追い込んだだけでなく、足立区がLGBT支援先進自治体と評されるほどに変化するとともに、「靖国派」議員の前時代的な発言がなりをひそめ、足立区の空気が一変しました。

区長主催で「当事者団体の声を聞く会」が議員も参加して繰り返し行われ、私たちも当事者の生の声から多くのことを学びました。LGBT相談窓口の実現に続き、「ファミリーシップ制度」を23区で初めて(全国では兵庫県明石市に続いて2番目)実現しました。これは「LGBTも子どもを得て育てている。家族みんなが『公的認証』の対象になるようパートナーシップではなく、ファミリーシップ制度を」との当事者の意見を反映して実現したものです。小中学校では男女混合名簿を実現し、「男女の別なく制服を選べる」「下着の色は白などの時代遅れの校則は見直す」ために、中学校校則の改定にむけて、各校での議論が始まっています。当事者団体は、足立区の後援を受けて毎年「レインボー映画祭」を区内で開催し、多様性を認め合える文化を広げてくれています。2年前と比べ、隔世の感があります。住民自治の力が行政を変えたことに確信をもち、生きづらさを少しでも変え、個の尊厳が尊重される社会へ、力を合わせていきたいと思います。

額賀 和子
  • 額賀 和子(ぬかが かずこ)
  • 東京・足立区議会議員・自治体問題研究所理事

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