(一般社団)京都自治体問題研究所
大西 一三(地域エネルギープロジェクト代表・生産森林組合長)
南丹市園部町大河内では地域農家を中心に普及をすすめてきた太陽光発電による発電量が地域の電気需要量を超えたことを記念して発電所敷地内で「式典」を行いました。集落の全戸(55戸)の電力使用量を上回り、総発電量は21万kWhに達し、集落の「電力自給自足達成」を祝いました。
3年前に農家組合で「大河内自然エネルギープロジェクトチーム」を立ち上げ、農家を主体にした太陽光発電に取り組んできました。2014年に4基、さらに2015年にも4基を建設しました。すでに国の認可を得たものが2基で、集落内に10基の発電所が稼働することになりました。1年間の発電実績から大河内地域の発電の特性も確認でき、いずれの施設も計画段階の予測発電量を上回る結果を得ています。原発の再稼働が推し進められ、固定買い取り価格が年々引き下げられる中、多くの方の協力を得て「自給自足の地域発電」を実現できたことに感謝し喜び合いました。
行政の金銭的な支援も得ず(もちろん望んでもいませんが)、正真正銘、「民」の力で到達したものです。政治が、「原発ゼロ、脱炭素の社会」を真塾に決意すれば早晩「再生可能エネルギー100%の日本、地域再生の日本」も不可能ではないと思うのはわたくしだけでしようか。
今年4月から電力全面小売り自由化がはじまり、一般家庭も電力会社を選べるようになりました。しかし、電力小売り会社を選ぶ基準とする「電源構成の情報」の公開を義務にしていないところが問題です。今後、情報の収集と合わせ消費者の選択が問われることになります。
福島第一原発事故を繰り返さないためにも、市民主体の再生可能エネルギーを選んでいたたたきたいものです。そのことが国のエネルギー政策の方向を変えることにもつながっていきます。だれもが購入する電気を選べる社会がきたのですから、今後、いっそう再生可能エネルギーに関心を向けていただくことが、再生可能エネルギー電気を増やし、地域経済を変えることにつながり、見通しの立たない原発依存の日本社会を変えることになるだろうと期待する一人です。
地域再生のためには地域住民(農業者)が主体となって「地域にあるもの」としての地域資源・地域特性を生かしつつ、農業の持続可能性を確保していく必要があります。
それには、地域の自然エネルギーをいかに暮らしの中に組み入れるかです。
また、エネルギー自給の確立は、住民の生活に安心をもたらすだけでなく、地域に新しい富の循環を生み出し、「地方再生」を実現するための有効な手段となります。
この間、太陽光発電施設設置に取り組んできましたが、地域の振興と活性化につながるよう心掛け、事業参加者は集落内の農業者に限定して普及を図ってきました。「1農家1発電所を」スローガンにして取り組んできたところです。
年々買い取り価格が切り下げられるなか、事業者として参加していただくことに苦労や苦心がありました。あと3〜4年FIT制度が充実・維持をされていくならば飛躍的な普及は可能だと思います。
「再生可能エネルギー」は、日本のどの地域にもなにがしかのエネルギーは存在しており、今後の地域の振興施策や地域の活性化に大きくかかわっていく分野だと思います。「自然エネルギーの普及・促進」はわくわくする地域をつくっていくことにもなります。
「原発ゼロ」に踏み出したドイツでは、再生可能エネルギーが2015年に発電量の30%に達しました。EU全体でも2030年までに45%の目標を掲げています。
その一方で、日本の再生可能エネルギーの割合は2%、大規模水力発電を含めても10%にすぎません。これには、「電力が不安定になる」、「コストがかかる」などを口実にしながら、再生可能エネルギー接続を制限・拒否し、国もこうした電力会社の姿勢を容認・支援し、「原発固執政治」を進めているところに大きな原因があります。このことが再生可能エネルギー普及の大きな障害となっているといえます。
国民の圧倒的多数の思いとは裏腹に、原発事故はなかったかのように原発の再稼働が進められ、地球温暖化にかかわりなく、化石燃料依存の火力発電が推し進められています。
全国各地で、地域の特性を踏まえた再生可能エネルギーの普及の取り組みを図るべき時です。地域環境に配慮しながら、その地域の農林業振興とコラボレーションした再生可能エネルギー発電を目指すことが大切です。日本列島、広く、薄くの取り組みこそが地域の振興、活気をつくり、真に未来ある日本をつくることになると確信するものです。