埼玉県滑川(なめがわ)町・「森の測定室」代表の主山しのぶさん

埼玉自治体問題研究所
村田 千代子


図らずも、今回の登場者、「森の測定室」代表の主山しのぶさんには、「森の測定室」を開設する原因となった東日本大震災および福島原発事故からちょうど5年目の2016年3月11日に、お会いすることとなりました。

「森の測定室」代表の主山さん
「森の測定室」代表の主山さん

さて、その「森の測定室」とは、滑川町にあり、口コミやネットなどを通じて、土壌や落ち葉、食品など1リットルを一検体として、その放射線量を測定しています(有料)。ここでの測定器は、国基準よりもっと低いレベルの測定を行うことができるものとのこと。それは、放射能汚染区域のような場所の危険度を測るというだけでなく、将来も含め生活していくうえで安心を確保する必要に迫られているからです。これまで保育園・幼稚園、農家などから2000件を超える検体がもちこまれ、結果を返しています。いまのところ結果はほぼ不検出ですが、100%ではないので油断はできません。

主山さんが「森の測定室」を始めたきっかけは、2011年3月に福島原発事故があり、翌月にお孫さんが誕生したことから始まります。原発事故での被害の甚大さや放射能の広がりを知るにつけ、この地域で出産させていいものかとずいぶん悩んだといいます。無事出産はさせたものの、病院内での放射能の影響も心配で、水は大丈夫かとペットボトルを持って病院へ行くと看護師から「心配しているのはあなたくらいですよ。ほかの人は水道水でいいといっています」とのこと。びっくりし、本当に自分だけなのか、不安や疑問を抱く人が少数派にされてしまうのだろうかと悩み、放射能の専門家を講師に開いた学習会を突破口に同じ悩みをもつ若いお母さんなどが少しずつ集ってきました。早速行政に働きかけようと、放射能から子どもを守ってほしいという思い「給食の放射線量を量ってほしい」などの5項目について、原発事故の年に一週間で800筆余りの署名を集め請願を行いました。こうした活動のなかで、「いつでも測れる放射能の測定室がほしい」という切実な要望がどこからか出されました。ちょうど空いていた主山さんのお父さん所有の元ジンギスカンのお店を、集まった人たちが協力し合い改装することになりました。店の厨房部分を測定室にし、時々カフェも開けて、みんなが集まれるスペースを作り、2012年10月に「森の測定室」がオープンしました。

主山さんの隣にあるのが測定器
主山さんの隣にあるのが測定器

ここにはいろいろな活動家や、学習会・催し物が「訪れます」。もともと主山さんは「自然の中で子どもを育てる会」のなかで、学習や考えることの大切さを学んできています。知らない・考えないということは自分の首を絞めるだけでなく、大罪を犯すことになることはよくあり、その典型がこの原発事故でもあります。だからこそ主山さんは、少しでも大勢の人が集いながら楽しみながら学習をし、考えていくことの大切さを知っているのです。そこからこういう場所を提供することの重要性を感じ、森の測定室がこれからこういう場所を提供することの重要性を感じ、これからの活用の仕方も考えているようです。主山さんは自身のことを、訪れる人たちをつなぐパイプ役だといいます。

しいたけ1kgを刻んだものを測定器へ
しいたけ1kgを刻んだものを測定器へ

この日も省エネ対策の「ロケットストーブ」づくり講習会に若いお母さんがたが集まっていましたが、しめくくりには、5年目にあたる2016年の3・11、午後2時46分を待って、「被災された方々を忘れないように」とキャンドルを灯し、皆で黙とうをささげました。

(文・写真 村田千代子)