【論文】町村議会のあり方研究会報告と2040議会

  • 榊原 秀訓(さかきばら ひでのり)
    南山大学大学院法務研究科教授

2019年4月19日

月刊『住民と自治』 2019年4月号 より


議員のなり手不足を受けて、小規模自治体の議会の選択肢が示されています。しかし、地方行政体制のあり方を提案する2040構想と同じく、憲法や地方自治の理念には適合しません。

「2040構想」と軌を一にする町村議会のあり方提案

わが国においては、現在の地方自治に関する政策は、市町村合併後にもかかわらず、人口減少にどのように対応するかが主な関心になっています。地方創生においては、自治体間の競争が強制され、また、自治体間連携においては、中心都市の生き残りのみが図られているようにすら思われます。このようななかで、本誌の連載で取り扱われてきた「自治体戦略2040構想」が出され、町村議会のあり方の検討もこの流れと軌を一にしています。

高知県大川村において、議員のなり手不足に対応するために町村総会の検討を開始したことを契機に、総務省『町村議会のあり方に関する研究会報告書』(2018年3月、以下単に報告書)が提案されました。他方で、議会活性化のために、すでに自治体の半数で議会基本条例も制定されていることや、政治分野における男女共同参画推進法が議員立法で制定され、今後、地方議会においても、女性議員の増加が必要と考えられることにも注目が必要です。以下では、これらの動向も考慮しつつ、報告書の提案を紹介・検討し、その意味を探ることにしたいと思います。

報告書の内容

(1)町村総会の消極的評価

まず、町村総会の検討です。法律の規定にもかかわらず、町村総会は長年にわたって存在しないものでしたが、報告書は、諸外国の状況に照らし、「町村総会を現実的に成立させるためには、①定足数を設けないこと、②審議と採決を分離し、採決方法として住民投票を採用すること、③全員ではなく、一定の住民代表から構成すること」の三点の検討が必要として、結論的に、「住民が一堂に会する町村総会については、現在、実効的な開催は困難である」としています。そして、町村総会という対応を消極的に評価しつつ、新しく二つの選択肢を提案します。

(2)地方議会の二つの選択肢の提案─「集中専門型議会」と「多数参画型議会」─

一つ目に、「少数の議員によって議会を構成するものとし、議員に専業的な活動を求める」方向性を有している「集中専門型議会」です。「議員には、首長とともに市町村の運営に常時注力する役割を求めるとともに、豊富な活動量に見合った議員報酬を支給し、議員活動そのものによって生計を立てていることを想定するものである」として、これに加えて、議員とは異なる立場で住民が議事に参画することを提案します。

これとは対照的に、二つ目に、「本業を別に持ちつつ、非専業的な議員活動を可能とする」方向性を有している「多数参画型議会」が示されます。「議会の権限を限定するとともに議員定数を増加することによって、議員一人ひとりの仕事量や負担を緩和するとともに議会に参画しやすい環境整備として議員に係る規制を緩和し、議会運営の方法を見直すもの」です。

そして、「集中専門型議会」と「多数参画型議会」という二つの類型の議会のあり方イメージが、表のように示されます。

表 「集中専門型議会」と「多数参画型議会」の類型の比較
表 「集中専門型議会」と「多数参画型議会」の類型の比較

住民参加・公務員の立候補の支障の緩和・議決事件の限定と請負禁止の緩和

報告書は新たに検討すべき仕組みとして三点を示していますが、それはいずれかの類型の議会と密接な関連を有しています。第一に、集中専門型議会と一体的な制度として、住民参加の仕組みである「議会参画員」があげられます。その役割は、「条例、予算その他の重要な議案について議員とともに議論(議決権なし)」で、選任手続等として、「くじその他の作為が加わらない方法などにより選定、一定の辞退要件などを設定」というものです。

第二に、公務員が議員に立候補することの支障の緩和であり、集中専門型議会との関係で検討されているものです。そこでは、「復職申出期間」について、①「立候補した選挙に落選した場合にあっては、公務員が立候補のために辞職した日から一年以内に限る」、②「立候補した選挙に当選した場合にあっては、議員としての任期(一期に限る。)満了(任期途中で辞職した場合にあっては当該辞職の日)後一年以内に限る」といったことを示しています。

第三に、議決事件の限定と請負禁止の緩和です。議決事件の限定と請負禁止の緩和は、多数参画型議会に必須のものと考えられています。「条例の制定」や「予算」「決算」などについては、「議会における議決を必須のものとすべき」とし、他方で、「契約締結や財産処分などについては、」「個々の契約等を逐一議決対象としない」ことが考えられるとします。

報告書の検討過程と地方議会における基本的価値

(1)検討過程と自治体規模による限定・パッケージ化の問題点

報告書に対しては、全国町村議会議長会の意見、全国市議会議長会会長のコメントが出され、日本弁護士連合会からも意見書が公表されており、これらも踏まえて、まず、検討過程やいくつかの基本的価値との関係を確認しておきたいと思います。報告書の検討過程について、町村議会関係者が参加せず、その意見を聴くこともなく、机の上で見解をまとめることに対する批判がなされています。外国の地方議会の状況も参考に、報酬を高めた少数の専門性を有する議員からなる議会と、低額の報酬で多数の必ずしも専門性を有さない議員からなる議会という理念の対照は必ずしも新しくないものの、小規模自治体の議会のみを対象にして制度化を行い、しかもそれを「パッケージ化」として示したところに特徴があります。

他方で、報酬や定数については現行法の枠内でも比較的自由に設定可能であり、さらに、議会改革として、議会改革基本条例に基づく議会活性化が小規模自治体を含めて行われています。現実の運用として、小規模自治体では、報酬が低くて定数が少ないものとなっており、運用でできなかったものが制度改革によって解決できるのかという疑問があります。

さらに、二つの理念自体は、一般的なものであり、規模による限定や、付随した論点を特定の類型と結びついた「パッケージ」として示す必要があるとは思われません。この間の地方自治に関する政策と同様に、中央集権的性格が出ており、実態を踏まえて提案がなされているとは言い難いです。しかも特定の官僚が研究会を主導したのではないかという疑いも出されています。

二元代表制

(1)二元代表制と参加制度

従来から自治体における画一的な統治構造の妥当性が問題とされることがあります。たとえば、わが国における強い首長ではなく、ヨーロッパにおける地方議会中心主義の実現といった関心に基づくものです。二元代表制を見直し、執政制度(議員と首長との関係)の改革を求める見解もあります。しかし、憲法上、二元代表制を前提に議論することが必要と考えられます。

先に触れた議会基本条例は、二元代表制を前提に議会の活性化を構想したものです。また、二元代表制といっても、住民の役割は選挙を通じた代表者の選出に限定されず、その参加が重要です。行政だけではなく、議会への参加が重要であり、議会改革によってさまざまな参加の仕方が現実に行われています。報告書が提案する議会参画員については、後で検討します。

(2)町村総会

報告書は、町村総会について現実的困難を強調して町村総会を選択肢から外しています。確かに、民主主義の観点からも討議は重要で、町村総会における討議の保障は重要な論点です。しかし、町村総会のような直接民主主義の理念には積極的評価が多く、現実に存在した町村総会に対しても比較的積極的な評価が行われているように思われます。また、諸外国における類似の存在に照らしても、安易に選択肢から外さず、理念の現実化を探る必要があります。

もっとも、二元代表制が憲法上のものであることから、町村総会との関係をどのように整理するか考えなければなりません。町村総会のなかに執行機関を構成する者も含むことになり、その限りで厳格な分離はできませんが、町村総会にはそれを上回る価値があるように思われます。

(3)議員のなり手の拡大と多様性

議員のなり手不足への対応は、すでに各地の地方議会でも検討がなされ、具体的な提案もなされています。報告書において、「公務員の立候補の支障を緩和する仕組み」にかかわって、わざわざ「公務員としての身分を有しない間において政治的行為の制限が課せられていない例」として、公益的法人への派遣があげられていることも興味深く感じます。報告書の問題点は、公務員に対する制約の緩和が、特定の類型や小規模自治体に限定されていることですし、公務員の政治活動の自由保障からすれば、その一般化が必要です。

また、町村においては、都市部の自治体と比較すると、一般的に男性議員が多くて女性議員が少なく、高齢の議員が多くて若年の議員が少ない傾向がより顕著であり、議会における多様性確保も重要な価値です。したがって、なり手不足の解消は、このような議員の多様性確保という価値と両立することが必要です。

集中専門型議会と多数参画型議会

(1)集中専門型議会

次に二つの選択肢について検討してみたいと思います。まず、専門集中型議会です。専門集中型議会の議員には「首長とともに市町村の運営に常時注力する役割」が求められ、首長と議会は緊張関係に立つことを前提にした二元代表制にはそぐわないものです。専門集中型議会は、文脈はかなり異なるものの、以前、当時の橋下徹大阪府知事が提案した「議会内閣制(議院内閣制)」の見解と類似性を有します。しかし、このような一体化は、二元代表制やその基礎になる憲法的価値との衝突が生じ、仮に憲法上の問題をクリアしたとしても、議員独自の役割を減少させるものとして、政策的な妥当性に欠けるように考えられます。なり手不足という問題状況がある下で、専門性を有する者を確保することは容易ではなく、政治的志向を専門性と説明することにもなります。

さらに、集中専門型議会では議員が三名から五名程度と少数と想定されていることも問題となります。委員会を設けないことから、詳細な審議が確保されるか懸念があり、議員が少数のため、議員の多様性確保が困難となります。このような限界を意識して、議会参画員が提案されているようですが、多様性を議会参画員にのみ期待することで、政治分野における「男女共同参画」を実現することはできません。

他方、議会参画員については、議員との「距離が狭まり過ぎ」ないかという懸念が示されていますが、議会参画員と同様に、イギリスには公選議員と共に議員以外の者が参加するCo-optionの仕組みが存在しており、議会への参加の選択肢と考えることは可能でしょう。しかし、議会参画員には、専門性や利害関係は要求されず、裁判における「裁判員」制度のような仕組みと考えられます。裁判員に対する場合と同様に、議会参画員に議会のことを知ってもらう必要があります。さらに、特定の事件のみ担当する裁判員と比較すると、議会参画員は議会の一通りのことを理解しなければならず、裁判員以上に論点は複雑だと思われ、討議型参加制度の経験からすると、かなり詳細な説明と議論が必要になります。

報告書の「公務員の立候補退職後の復職制度の創設」への批判として、「公務員の政治的中立性が実質的に確保される現実的で実効性ある制度」となるのか疑問も出されています。しかし、諸外国においては必ずしも珍しくなく、このような批判は、むしろ公務員の政治活動の自由をあまりに制限的に理解し、「公務員の政治的中立性」を過度に強調するもののように思われます。

(2)多数参画型議会

次に、多数参画型議会です。議決事件の限定など議会の活動を限定することによって、議会の監視権限が低下し、「二元代表制の形骸化、首長独裁」とならないかが懸念され、地方分権による議会権限の拡大とは反対の方向の提案で、条例によって議決事件拡大も行ってきた議会基本条例の発想にマッチするのかという疑問もあります。また、請負禁止の緩和については、「適正な事務執行と議会運営の公正という行財政運営の基本原則」の保障の点から批判されています。さらに、夜間・休日開催については、諸外国でも行われ、いくつかの自治体の議会で行われていることですが、それとパッケージ化することが「行政が複雑化・専門化する中で、限られた審議時間で適切な処理が可能なのか」といった疑問も出されています。

議員のなり手不足に対する対応として、議員活動の減少が提案されているわけですが、議員の活動は多少やりがいのあるアルバイト先の提供といったこととは異なるはずで、議員としての活動を限定することによって、やりがいを減退させないかも気になります。また、公務員制度に関して、議員「一人当たりの政治的影響力が減殺されることなどを踏まえて」、「他の自治体の一般職の職員」との兼職を認めることが示されています。これは諸外国においても存在する制度であり、内容自体は積極的に評価できると思われますが、「議員一人当たりの政治的影響力の減殺」といった理由はあまりに抽象的なもので、一般化を考えるべきです。さらに、この類型の議会においては、専門集中型議会とは異なり、多数の議員が存在することになりますが、単に議員の数が多いというだけでは、「男女共同参画」の実現にとって十分ではないでしょう。

「圏域」・「画一化」により地方自治を否定する「2040構想」下の地方議会

「自治体戦略2040構想」には、地方自治の保障は登場せず、そこでの地方議会の位置づけは明確ではありません。同構想は、二層制の自治体構造を柔軟化し、「圏域」に焦点を当てていますが、「圏域」自体には、地方議会が存在するようには考えられませんし、「画一化」の強調は、地方自治の存在それ自体を否定し、最低限の行政サービスを提供すれば足りるとするもののようにすら思われます。しかし、地方議会は憲法上の存在であり、住民自治にとって最重要の組織です。地方議会が単に存続すればよいわけではなく、他の基本的な価値とも両立した議員のなり手不足の解消が必要です。

【注】

  • 1 本誌以外のものとして、榊原秀訓「地域活性化と自治体戦略2040構想」月刊全労連263号(2019年)14ページ~21ページ、白藤博行・岡田知弘・平岡和久『「自治体戦略2040構想」と地方自治』(自治体研究社、2019年)なども参照。
  • 2 報告書公表前後の雑誌の特集として、都市問題109号(2018年)特集「町村総会と小規模自治体のあり方」、自治体法務研究53号(2018年)特集「市町村議会の活性化と住民参加」、地方自治職員研修712号(2018年)特集「どうなる、どうする、町村議会」、ガバナンス205号(2018年)特集「小規模市町村議会の展望」参照。
  • 3 廣瀬克哉編著『自治体議会改革の固有性と普遍性』(法政大学出版局、2018年)。
  • 4 全国町村議会議長会意見と全国市議会議長会会長コメントの内容やそれを踏まえた検討として、大田直史「地方議会・議員のあり方改革の方向性」季刊自治と分権73号(2018年)参照。
  • 5 待鳥聡史「地方議会改革の文脈を再考する」地方自治840号(2017年)10ページ~11ページ。
  • 6 たとえば、浦幌町議会『議員のなり手不足の検証(検証報告書)』(2017年3月)。
  • 7 榊原秀訓『地方自治の危機と法』(自治体研究社、2016年)35ページ~40ページ。
  • 8 篠原一編『討議デモクラシーの挑戦』(岩波書店、2012年)。

2019年4月19日

月刊『住民と自治』 2019年4月号 より

  • 榊原 秀訓
    榊原 秀訓(さかきばら ひでのり)
    南山大学大学院法務研究科教授

    1959年静岡県生まれ。1982年名古屋大学法学部卒業、1987年名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。近著に『地方自治の危機と法』自治体研究社2016年。

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