【論文】だれのためのコンビニ 第2回 高リスク・低リターンのFC契約


コンビニの「加盟店募集」の広告を見かけたことはありませんか。「未経験でも大丈夫」「独立開業の夢を応援します」「オーナーデビューしませんか」……気軽なキャッチコピーとあわせて、多様なバックアップ制度も紹介されています。

前回、コンビニ大手の全国制覇を紹介しましたが、実際にお店を支えているのは、本部とフランチャイズ契約(FC契約)を結んだ地元の加盟店オーナーです。では、コンビニが増えて消費者が便利になるなか、オーナーはどのような状況に置かれているのでしょうか。今回は、本部と加盟店との関係を軸に、店舗の現場に迫ってみたいと思います。

コンビニのFC展開と本部の成長

FC契約とは、本部が加盟者に商標・サービスの使用権や経営ノウハウを提供する一方、加盟店は経営指導を通じて得られた売上利益から対価(ロイヤルティー)を支払うというものです。形式上、オーナーは本部から独立した事業者で、両者は対等な契約関係に基づくとされます。コンビニの場合、本部直営店はわずか数㌫、FC加盟店が大半を占めます。つまり、オーナー確保が、コンビニ拡大の重要ポイントになります。

そこで本部は、オーナー募集を積極的に展開することになります。各地で説明会を開催し、オーナー候補が見つかれば、加盟金などを用意してもらって契約を結び、準備期間を経てオープンにこぎ着けます。その後は、期間満了まで営業を続けてもらうことになります。オーナーの前歴は、酒販店などからの転換組と脱サラ組とに分かれ、前者はオーナーが土地・建物を用意、後者は本部が手配します。いまでは後者が主流になっています。

こうして、コンビニ資本は、直営よりも少額投資でリスク分散できるFC契約をテコに、急拡大を遂げてきました。しかも、立地に際しては、高収益が見込めるエリアに狙いを定め、集中出店を通じて物流効率化と市場独占を図る「ドミナント出店戦略」を特徴としています。そのため、街中で同一看板のコンビニが密集する不思議な現象が生まれるわけです。

しかし、個々の加盟店は、周囲にライバルが増えれば激しい競争に巻き込まれてしまいます。その影響から、表1が示すように、出店ラッシュとは裏腹に既存店の売上高は低迷し、出店と閉店を繰り返す「多産多死」が常態化しています。対照的に、東京の本部は、店舗を一層増やせば、そこから吸い上げるロイヤルティーを一層還流させることができます。その結果、大手の利益率は2ケタの高水準をキープしています。小売業の利益率は平均3%程度。こうした莫大な利益が、コンビニの拡大再生産の原動力になっているのです。

表1 コンビニ大手3社の経営動向

加盟店オーナーの苦境

先ほど、FC契約は対等な関係であると述べました。しかし、加盟店の立場からは、それとは逆の高リスク・低リターンの姿が大きな問題となっています。

第1に、契約上の重い義務負担です。たとえば、仕入先・数量から販売価格、商品廃棄に至るまで、オーナーは本部の指示に従わざるをえません。もし逆らえば、契約更新が拒否されるのではと不安視しており、公正取引委員会の2011年調査でも「優越的地位の濫用のおそれ」が指摘されています。また、営業は24時間・年中無休が至上命令です。さらに、同一チェーンが近くに出店する場合でも、事前通告はありません。実際、高知県内のオーナーにヒアリングしてみると、経営の自立性がないなかで市場が飽和状態となり、ますます厳しいとの声が聞かれました。

もう1つの問題は、コンビニ独特の会計システムです。表2を見ると、本部へ支払うロイヤルティーが実に5割以上に及ぶことがわかります。と同時に、粗利益は棚卸・廃棄ロスを除いて算出されますので、ロイヤルティーがかさ上げされる仕組みになっています。しかも、その後の残りから人件費・光熱費・廃棄ロスを負担しなければなりませんから、可処分所得は一層目減りしてしまいます。

表2 コンビニ各社のロイヤリティー

さらに、最近は人手不足という新たな問題にも直面しています。従業員は大半がパート・アルバイトですが、最低賃金プラスαレベルなのにきつい業務であるため、コンビニは敬遠される仕事場になっており、都市部ではもはや外国人留学生が頼りです。しかし、時給を上げればオーナーの所得が目減りするため、結局オーナーとその家族が限界まで働かざるをえません。家庭生活を犠牲に年中無休の過重労働を強いられたり、過労でダウンしたりする人も出てきている、これが、いまのオーナーの一般的な姿なのです。

コンビニ拡大の行き詰まり

このように、FC契約を通じたコンビニ大手の発展の「陰」で、加盟店オーナーは過酷な状況に置かれています。本部─加盟店間の紛争や訴訟に発展するケースも出てきています。オーナーは経営者ですので、労働法の適用はありませんが、経営の主導権は本部にあり、オーナーは実質労働者のように働くことを強いられています。コンビニ・オーナーこそ、「働き方改革」が求められているといえます。

しかも、こうした高リスク・低リターンなコンビニFCのあり方は、もはや立ちゆかなくなりつつあります。その象徴例が、コンビニ全体のイメージの悪化です。従業員だけでなくオーナーのなり手も、不足する事態に陥っているのです。たしかに、最近はオーナーの負担軽減策も打ち出されていますが、まだまだです。このまま放置すれば、コンビニの存在は危うくなり、社会的損失も大きくなるのではないでしょうか。

岩佐 和幸
  • 岩佐 和幸(高知大学人文社会科学部教授)
  • 高知大学人文学部教授

主著に『入門 現代日本の経済政策』共編、法律文化社、2016年。『資本主義的グローバリゼーション』監訳、高菅出版、2015年など。