【論文】だれのためのコンビニ 第4回 地域経済に役立つコンビニに向けて―オーナー保護のためのルールづくり―


これまで3回にわたって、コンビニ業界の現状を地域経済の視点から紹介してきました。現在、大手三社の全国展開と業界再編・寡占化が進んでいますが、その結果、どこに行っても大手チェーンだらけの画一的な市場へ様変わりを見せています。店舗が増えて消費者は便利に感じますが、その反面、本部・東京に利益がますます流出し、地域にはオーナー・従業員のわずかな報酬しか残らない状況が生まれています。本部は高収益でも、現場は高リスク・低リターンのFC契約に縛られ、経営難や労働のブラック化、人手不足に伴うオーナーの過重負担、さらには全体的なイメージ悪化という悪循環を招いています。

それでは、どうすればコンビニを地域に役立つ存在に変えることができるのでしょうか。今回は、コンビニ・オーナーの権利回復の視点から考えてみたいと思います。

求められるオーナーの自己決定権

コンビニ問題の根本にあるのは、本部と加盟店オーナーとの間で交わされるFC契約です。そこでは、①商品の仕入れから販売、廃棄に至るまで本部の指示に縛られ、従わないと契約更新できなくなるなど、経営者としての自由裁量が認められていないこと、②コンビニ独特の会計システムによって、経済的に厳しい状況に追い込まれていること、この2点がポイントになります。

コンビニ業界の悪循環を変えるためには、こうした厳しい現状を改め、オーナーの自己決定権を確立することが欠かせません。そのためには、第1に、FC契約に基づく本部のコントロールを抑え、自営業者としての裁量を広げることが求められます。本部と加盟店は、契約上は独立した事業者同士と見なされていますが、実際には圧倒的な力の差がありますから、自営業者としての裁量を広げることが重要になってきます。

目下の大きな課題は、深夜を含む24時間営業です。関係者へのヒアリングで異口同音に挙げられたのが、この問題でした。24時間営業だからこそ、人手不足をカバーするためにオーナーが長時間働き、家庭生活と健康を犠牲にせざるをえなかったわけです。一部チェーンで若干見直しの動きがありますが、業界全体には広がっていません。こうした強制力に歯止めをかけ、オーナー側に開店・閉店時間を決める権限を与える方向に転換していくことが求められます。

第2に、コンビニ会計の抜本改革です。まず、フランチャイズ業界のなかで最も高いレベルのロイヤルティーを引き下げ、本部と加盟店との間で利益配分の公平性を図ることが必要です。また、商品の仕入れ価格の妥当性に加えて、「オープン・アカウント」(債権・債務をオーナーではなく本部が一括管理する会計処理)や、廃棄費用などをコスト計算から排除するロイヤルティー算定方法など、業界特有の会計システムを透明化していくことも不可欠です。本部による負担軽減策も始まっていますが、まだまだ不十分です。とくに、高率ロイヤルティーは、オーナーの収入悪化と従業員の低賃金の双方を規定する悪循環の根源ともいえます。比率を見直して本部と加盟店との格差を是正することが、経営全体の好循環と業界のイメージアップの第一歩になると思われます。

さらに、本部の一方的な指示変更への事前通告や、同一チェーンの近隣出店を防ぐ「テリトリー権」の保証も、オーナー保護の観点からは大事なポイントです。加盟店が安定した経営を続けられる環境整備に向けて、本部がオーナーに対して支援を強化していく取り組みこそが、チェーン全体の「共存共栄」につながっていくと考えられます。

「コンビニの時代」にふさわしい「フランチャイズ法」の制定を

それでも、個々のチェーンの自主的な取り組みだけでは、課題解決には十分とはいえません。その際の鍵となるのが、コンビニという業態にふさわしいルールづくりです。

現在、コンビニ業界に関連する法律としては、中小小売商業振興法と独占禁止法があります。しかし、すでにおわかりのとおり、オーナーや従業員を取り巻く問題には十分対応しきれていません。こうした限界を背景に、これまでに全国FC加盟店協会やコンビニ加盟店ユニオンが誕生し、オーナーの立場に立った法制度の確立が訴えられてきました。また、後者による団体交渉要求と労働委員会への訴えを背景に、オーナーの就労実態を踏まえた労働法の適用可能性を検討する議論も進んでいます。

さらに、これら当事者団体や法律の専門家からは、フランチャイズ業界を対象とする「フランチャイズ法」の導入が提唱されています。フランチャイズ法とは、フランチャイズに加盟するオーナーとそこで働く従業員の権利保護を目指した法律です。

具体的には、

  • ①契約前の情報開示・事前開示書類の登録制・会計透明化
  • ②非合理な契約更新の拒絶禁止
  • ③近隣への出店を規制するテリトリー権
  • ④加盟者の団結権・団体交渉権

などが盛り込まれています。つまり、先に述べたFC契約改善のポイントを法律として明記し、実効性を高めることが、同法のねらいです。

実は、フランチャイズ法のヒントは、海外にあります。米国や韓国など、いくつかの国ではフランチャイズ関連法がすでに導入されていて、情報や資本力など本部のパワーを規制し、加盟店の権利を守るルールが整備されています。日本でも、海外の先行事例を参考にルールづくりを行うことは、十分可能ではないでしょうか。

歴史を振り返ると、戦前期には百貨店の登場による零細小売店への圧迫を規制するため、1937年に第1次百貨店法が成立しました。戦後、スーパーが急成長する1973年には、大型店の出店調整を目的に「大規模小売店舗法」が新たに制定されました。「スーパーの時代」から「コンビニの時代」に移り変わる今日、時代にふさわしい「フランチャイズ法」の実現が求められています。

岩佐 和幸
  • 岩佐 和幸(高知大学人文社会科学部教授)
  • 高知大学人文学部教授

主著に『入門 現代日本の経済政策』共編、法律文化社、2016年。『資本主義的グローバリゼーション』監訳、高菅出版、2015年など。