【論文】だれのためのコンビニ 第5回 地域経済に役立つコンビニに向けて―新たな地場コンビニづくりへ―


前回は、フランチャイズ法を軸にコンビニ業界健全化の方法を紹介しました。ただ、地域の視点から考えると、それだけでは不十分です。大手コンビニは、地域経済とのつながりが希薄だからです。コンビニが生活圏に存在する以上、地域のために役立つような店舗へ変えていく仕掛けが必要です。

ではどうすれば、コンビニを地域に役立つ存在に変えることができるのでしょうか。最終回となる今回は、「地場コンビニ」をキーワードに考えてみたいと思います。

地域に貢献するコンビニ

本連載では、コンビニ業界が大手3社への寡占化が進む一方、地場コンビニは姿を消し、ローカルチェーンも大手の傘下に収められる状況を紹介しました。全国各県に三強が進出し、本部で細かい点まで決められた画一的なコンビニが広がっています。果たして、コンビニという形態で地域のカラーを打ち出すことはできるのでしょうか。

実は、大手が市場を席巻するなか、地域で頑張っているローカルチェーンがあります。代表例が、北海道に拠点を置くセイコーマートです。株式会社セコマ(旧株式会社セイコーマート)が運営するセイコーマートは、初出店が1971年と最古参にあたりますが、最近はサービス産業生産性協議会の調査で、大手をおさえて顧客満足度1位に選ばれたことで注目されています。

セイコーマートの特徴は、北海道色を強く打ち出している点にあります。たとえば、店内では北海道産のものを使って道内工場で製造した商品をアピールしており、地域経済循環にとってプラスとなる経営を行っています。また、店舗展開では、都市部だけではなく過疎地にも進出し、出店エリアは道内人口の99・8%をカバーしています。その際、過疎地への出店を容易にするため、フランチャイズ店から本部直営店へと重心をシフトしています。フランチャイズ契約についても、ロイヤルティーは10%と大手チェーンに比べて格安であるほか、テリトリー権を認めて半径150㍍以内には出店しないなど、オーナーにはやさしい契約内容となっており、大手チェーンとの違いは鮮明です。

さらに、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の際には、過去の災害経験を生かして95%以上の店舗が営業を続け、被災した道民の生活を支えたことが大きな話題になりました。このように、セイコーマートは、地域に拠点を置くコンビニだからこそ、地域密着の経営が可能になり、さまざまな地域貢献を行うことができると思われます。

一方、大手チェーンのコンビニでありながら、地域の実情に合わせた運営を模索するケースも存在します。一例として、高知県南国市でJA南国市が運営するYショップくれだの取り組みを紹介します。

同店は、2014年にAコープの後継店としてオープンし、JA南国市が本部と契約を結んで運営しています。同店の特徴は、開店当初より地域密着を模索してきたところにあります。たとえば、地元高齢者向けに総菜を置いたり、農家の利用者を想定して園芸用品を販売したりするほか、JA南国市の運営する直販所「かざぐるま市」から地元産の野菜・果物などの生鮮品を調達し、週に一度はJA全農こうちが店頭で魚を出張販売しています。ちなみに、営業時間も24時間ではなく、午前7時から午後7時の12時間営業です。

その意味で、Yショップくれだは、本部が決めたコンビニの画一的なフォーマットを地域に合わせて修正し、オーナーであるJA南国市の個性を生かした店舗運営を行っているのが大きな特徴であるといえます。

地域住民がつくる地場コンビニ

とはいえ、コンビニの立地場所は、収益性の観点から都市部に集中しており、中山間地域にはコンビニはやってこないのが普通です。最寄りのスーパーが遠く、日々の買い物に苦労している住民にとって、「便利な」コンビニは無縁の存在です。しかし、こうした不便な状況を住民自身で変えようと、自らコンビニを立ち上げるケースが出てきています。その1つが、高知県津野町にある交流施設「森の巣箱」です。

「森の巣箱」がある床鍋集落は、町の中心部から山間部に入った場所にあり、かつては「陸の孤島」と呼ばれていました。小学校が廃校となり、唯一の商店も消え、衰退の一途をたどっていましたが、危機感を抱いた住民有志が行動を起こし、廃校舎の利活用を検討してこの施設を立ち上げました。買い物やちょっと飲みに行く場所がほしいという願いから、1階部分を昼はコンビニ、夜は居酒屋とし、宿泊施設を2階部分に設けてオープンしたところ、一躍注目されるようになりました。

この集落コンビニでは、生活に必要なものや住民の好みを踏まえた無駄のない品ぞろえを行っており、地区内の生産物を販売するコーナーも設けています。運営には住民全員が関わっており、域外の商店ではなく同施設で買い物をすることによって、地域ぐるみで店舗を支えようとしているのも、注目すべきポイントです。

新たな地場コンビニづくりへ

以上のように、地域の個性を生かしたコンビニが各地で登場していますが、まだまだ少数派です。今後、地域に役立つコンビニを増やしていくためには、大手コンビニを地域に埋め込む施策が重要になってきます。大型店の出・閉店に対して地域貢献を求める条例があるように、コンビニについても地方自治体が独自に条例を制定し、地域貢献を求める仕組みを導入してみたらどうでしょうか。たとえば、地域のための出店規制・誘導策や、地域内での商品・サービスの調達拡大、オーナーや従業員の働き方改善など、地域にふさわしい新たな「地場コンビニ」を目指していくことが、コンビニ業界にとっても地域にとっても共存共栄につながるのではないでしょうか。

コンビニは、地域のなかで存在感を高めています。また、公共的な役割の発揮も期待されています。装い新たな地場コンビニづくりを通して、地域の期待に応えることこそ、これからのコンビニには求められているのです。

岩佐 和幸
  • 岩佐 和幸(高知大学人文社会科学部教授)
  • 高知大学人文学部教授

主著に『入門 現代日本の経済政策』共編、法律文化社、2016年。『資本主義的グローバリゼーション』監訳、高菅出版、2015年など。