【論文】図書館法70年―住民自治による追求

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図書館事業は住民自治に基づくものです。図書館法はそれを基礎に置いていますが、政府の政策は近年、それを損なう動きが顕著です。住民自治を基本として図書館事業を進展させる取り組みが重要です。

そもそもは「持ち寄り、分け合い」

図書館のそもそもは住民自治のあらわれと思っています。地域住民は共につながり、協力しあって過ごしていますが、近代に至る前から、所有している図書などを持ち寄り、必要とする人に見せることが日常的に行われている事例は多くありました。それは「持ち寄り、分け合い」と捉えられていたのです。それは国際的にみても多くの事例があります。2016年に新築開館した岡山県瀬戸内市の瀬戸内市民図書館は、図書館は「もみわ広場」だとの考えを明らかにしています。暮らしや仕事などから発生した疑問や課題を「もち寄り」、その解決、展望などを「みつけ」、それを集う人たちと「わけ合う」場が図書館の役割と捉え、それを「もみわ」と称しているのです。図書館法は「土地の事情及び一般公衆の希望に」沿うことを「図書館奉仕」として課していますが(第3条)、その根底には、上記の考えがあると思っております。

ちなみに、瀬戸内市民図書館は、オープンまでの建設準備の過程で、計12回のワークショップ「としょかん未来ミーティング」を重ね、サービス、建築・情報デザイン、運営などについて、市民と専門家が積極的に意見を出し合って造られました。

図書館法の変遷

図書館法は1950年に公布、施行され、本年は70周年です。この法律は住民や自治体が意図した図書館事業の進展に重要な役割を果たしてきたといえます。60年代には、日本図書館協会は図書館振興のための全国調査を図書館員の参加のもとで行い、資料提供を重点とする提起をまとめました(『中小都市における公共図書館の運営』)。その具体化を図る動きも顕著となり、資料の貸し出し、予約サービス、開架書庫などの動きが各地でみられました。図書館法が提起している図書館事業の具体化を進展させたといえます。

70年代には東京都において図書館建設を内容とする施策が実行されました。都内の図書館長を交えた検討で報告書『図書館政策の課題と対策』が出されました。都はそれに基づいた行政計画を策定し、図書館建設の補助金交付も含む事業を展開しました。その交付要件には、館長の司書有資格、人口規模に応じた司書有資格職員配置があり、司書職制度の具体化に結びつきました。

この動きは全国に影響をもたらし、その後合わせて23道府県で同様の施策が実施されました。政府はこの動きに、図書館法第20条に基づく補助金交付も併せて行い、かつてなく多くの補助金交付が続きました。

以上のように、図書館振興には、図書館団体や自治体が重要な役割を果たしてきたのです。その状況に合わせた図書館法改定などの動きはありませんでしたが、最近20年余りは図書館法の根幹を損なう政治が続き、法に触れるような動きが顕著となっています。その経緯を捉え、許さず、「持ち寄り、分け合う」図書館づくりを期すべきだと思います。

図書館法は現在まで24回改定されています。その経緯を確認すると、図書館法のみの単独の改定は1回に過ぎず、ほとんどは地方自治法など他の法律により関係する条項が改定されています。しかも、図書館の役割・機能強化・進展につながる改定はまれで、変質、低下に結びつく改定が多いのを感じます。

さらに政府の政策転換により、関係法律の一括改定による場合も少なからずあります。なかでも最も問題だと思うのは、1999年の第一次「地方分権推進一括法」です。地方分権推進を目的に475件もの法律を一括して改定し、図書館法については、国庫補助金交付要件である図書館長の司書有資格や、交付のための基準=人口規模に応じた司書有資格者数を規定するなどの「最低基準」廃止を中心的内容としていました。図書館の管理運営の体制は司書である館長と司書集団によるもので、司書職制度の確立は基礎・基本です。それを否定したのです。それに至る前には地方自治経営学会なる団体が、図書館長の司書有資格要件は地方自治に沿わないなどという見解を出すなどしていました。

資料1 図書館法の特徴

  • 第1 憲法、教育基本法、社会教育法の法体系に位置づけ。国民の教育を受ける権利として位置づけ。さらに教育機関として位置づけ。
  • 第2 無料利用の原則を確立(第17条)。
  • 第3 地方分権に基づいた管理運営。自治体議会が定める条例により設置、運営(第10条)。
  • 第4 図書館協議会による住民参加(第14~16条)。
  • 第5 他の自治体の図書館との協力、支援(第8条)。
  • 第6 司書職制度を提起(第4~7条)。
  • 第7 私立図書館、地域文庫への支援(第25条2、第27条)。

都道府県立図書館の機能低下

さらに第一次「地方分権一括法」には地方自治法も改定し、都道府県(以下、県)の図書館事業の位置づけを廃する措置もありました。第2条第6項第4号、別表第3には県の事務として県立図書館を明示していました。広域の地方公共団体と位置付けていた県行政を踏まえた内容です。それは図書館法第8条において「県の教育委員会は県内の図書館奉仕を促進するために、市町村教育委員会に対し、総合目録の作製、貸出文庫の巡回、図書館資料の相互貸借等に関して協力を求めることができる」と具体化していました。

ところが、地方自治法のこの条文は削除されてしまいました。県立図書館の市町村立図書館への協力・支援があいまいになったのです。地方自治法は市町村(以下、市)を基礎自治体と位置付けることにより、自治体事務の優先、包括的な役割を果たす考えを明確にしたのですが、県については広域行政体として、政府施策に補完的な役割を位置づけることに力点が変わったのです。その結果、多くの県立図書館の運営方針では、それまで最も重視していた「県内図書館への支援、連携協力」よりも、「来館者サービスの充実」を重点に位置づけるように変わったのです。

利用者から求められた資料を確実に提供するためには、自館所蔵資料だけでなく、他の図書館から借用して提供することが通例になっていますが、それは県立図書館の基本的役割でもあり、「協力貸出」と呼んでいます。それがあいまいになったのです。県立図書館では来館者の資料要求に応えることに重点が置かれた結果、市立図書館からの依頼には「貸し渋り」が広がっている、との批判も顕著です。

司書職制度

図書館法は第4条に司書・司書補を図書館の専門職として規定していますが、同法公布の1950年の年末には地方公務員法も公布されています。この法律には、自治体職員の専門職に結びつく「職階制」が規定されており(第23条)、法案が公になった当時、図書館界においては司書職の制度化の実現を図るためこれを重視する取り組みがされました。日本図書館協会の機関誌『図書館雑誌』や全国図書館大会において議論が行われ、県や政令指定都市において、一部ではありますが司書職制度が導入されました。

その後一部の県でしたが、図書館設置促進の補助金交付の交付要件に、司書有資格の図書館長と人口規模に応じた司書有資格者配置を加えていました。この動きに沿って政府も図書館法第20条にもとづく補助金交付を内容とした施策を展開し、その実施にあたっては司書職制度に関わる「最低基準」が適用、具体化されることになりました。これらの動きにより、90年代初頭には司書有資格者は5割を超えました。

しかし、司書職の制度化はなかなか進みませんでした。1973年には、東京のある特別区の図書館員が他の職場に異動させられたことに対して、当人が東京都人事委員会に提訴しました。当該の区だけでなく、全国的な支援運動もあり、司書職制度のあり方にも関わる問題として注目されました。東京都人事委員会は異動を容認する裁決を発表しましたが、図書館法は司書職を配置することを課していることも同時に明らかにし、評価されました。

ところで、1997年に自治省(当時)は「地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針」を自治体に通知しました。「ジョブ・ローテションを通じて様々な職場をバランスよく経験することで、…スキルアップを図り、能力開発や人材育成の度合いをチェック」するという「経歴管理システム」導入を課しました。複合専門型職員の育成を図るというのですが、結果として特定分野のベテランを育成することを妨げることに結びつきました。その後、指定管理者制度の導入が図られますが、自治体のさまざまな分野の経験豊かなベテランが希薄になる結果を招いたもとでは、この制度導入に異論、阻止することが困難になりました。

司書職制度は全国的に一般化することはなく、一部の各自治体の取り組みによって辛うじて存在しているにすぎません。司書職は図書館の管理運営に欠かせない基本的条件であり、その制度化が進まないことが図書館振興を妨げています。

指定管理者制度

2003年の地方自治法改定により、公の施設の管理運営を指定管理者に委ねる制度が始まりました。図書館においてはそれまで、自治体が民法第34条に基づき設置した地方公社(財団法人)に委ねる動きがありました。1985年の政府の「地方行革大綱」によるものと思われますが、『地方公社総覧 1999』(ぎょうせい、2000年4月)を点検したところ、地方公社の「主要業務」に図書館を挙げている自治体は25市町村、2特別区、4政令指定都市、2県の合わせて33ありました。当時、京都市、東京都足立区、調布市などではその導入にたいして図書館員や住民などによる反対運動が大きく展開され、全国的にも関心が寄せられました。足立区における動きに対して、国会の衆議院予算委員会分科会において海部文部大臣(当時)が「図書館法の規定からみても公立図書館の基幹的な業務については民間の委託になじまない」と答弁する状況もありました。

こういった状況を経て指定管理者制度問題に対しては、図書館界では広く異論が出されています。日本図書館協会は2004年8月に疑問、課題を明らかにし、調査研究を進めることを表明、その後たびたび見解等を明らかにしています。さらに2009年以降毎年、全国の図書館の協力を得て、調査を行っています。「公の施設」に関係する団体は多くありますが、統一した全国調査を行っている唯一の事例と思われます。総務省は2006年以降3年ごとに「公の施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査」を実施しているほか、2012年以降は毎年「地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査」を実施し、その中には図書館を含む23種類の公の施設についての指定管理者制度の導入状況も設問に加えています。日本図書館協会の調査結果データとこれらのデータを合わせて点検すると、問題点がより具体的にはっきりします。

総務省調査によれば、全国の指定管理者制度導入施設数は2018年4月1日現在7万6268施設ですが、導入の割合は県施設については6847施設、59・6%です。市区町村の導入施設数は6万1364施設ですが、導入の割合は公にしていません。

図書館については、導入の割合は都道府県12・9%、指定都市23・7%、市区町村19・4%(うち特別区54・1%、中核市11・1%、特例市24・4%)であることを総務省は「地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査」で明らかにしています。

決して導入率が高い施設とはいえませんが、東京特別区は異常に多い実態にあります。その要因は「都区財政調整制度」にあります。東京都は特別区のほぼすべての行政分野の経費について積算、調整したうえで特別区財政調整交付金を交付しています。その財源は特別区の歳入の3割も占める実態にあり、特別区制度存在に関わっています。図書館費については、人口35万人の標準区には7図書館分の管理運営経費を積算していますが、そこには管理運営、窓口業務、指定管理の3件の委託料を計上しており、2館は指定管理委託の対象としているのです。その結果、特別区では5割を超える図書館に指定管理者制度を導入する結果を招いているのです。

指定管理者の種別ですが、全国の指定管理施設では民法法人(公益法人、地方公社等)が25・4%と最も多く、次に株式会社21・2%と続いています(総務省調査)。ところが、図書館については、株式会社が最も多く72・6%も占めています(日本図書館協会2018年調査)。

指定管理者制度については、国会では図書館を事例として挙げることが多くありました。その要因は、佐賀県武雄市の図書館がカルチャー・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)を指定管理者にしたことにあります。「ツタヤ図書館」と称し問題になっていますが、図書館のなかで販売等の営業活動をしていることに特徴があります。指定管理者の「自主事業」を認める側面もありますが、営利を目的としたことを許すべきではありません。国会でもそれが問題になりましたが、政府は明確な答弁をしないままになっています。

ところで、高市早苗総務大臣(当時)は図書館の指定管理を肯定する発言はしていません。指定管理者制度は、指定管理者が管理運営するなかで得た料金等は自らの収入としていますが、それを踏まえて行政当局は委託管理料の削減に結びつけています。自治体財政に資するとしているのです。しかし図書館は図書館法第17条の無料原則が貫徹しており収入を得ることは許されていません。したがって委託管理料の減少に結びつくことはありません。図書館は指定管理者制度の主要な目的に沿わないのです。

教育委員会から首長所管への動き

2019年6月「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」が制定されました。多様な内容を含んだ「第9次地方分権一括法」ですが、図書館など社会教育施設の所管を教育委員会から首長部局に移管することを可能とする内容も加えていました。公立博物館を観光に資する施設として位置づける閣議決定をし、その動きを踏まえて「社会教育施設の所管の在り方を検討するワーキンググループ」を中央教育審議会のもとに設置し、文部科学大臣は中央教育審議会に諮問しました。

社会教育施設は教育委員会所管が法制度上基本となっていますが、首長所管の博物館は3割を超える実態にあること、同時に指定管理者制度導入が多いことを文部科学省は明らかにしています(ワーキンググループでの説明)。図書館については、2018年現在170館、5%が長所管で、県立は岐阜、愛知、三重、奈良、佐賀の5県が知事部局所管になっています。指定管理者制度導入は90館と5割も占めています。

図書館を教育委員会所管とする意義は、長の政治的立場等を忖度することを許さないためにも重要です。教育委員会は首長から自立した行政委員会であり、その管理の下にある図書館は、その基本を踏まえることが重要です。さらに図書館は地方教育行政法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)第30条に基づく教育機関です。教育機関は「教育委員会の管理の下自らの意思をもって継続的に事業運営を行う機関」です。司書職制度は、そのためにも重要な意義をもちます。

図書館の管理運営の基本には日本図書館協会が1954年に定めた「図書館の自由に関する宣言」があります(1979年改訂)。資料の収集、提供などを確実に実施するためには必要なことです。

資料2 図書館の自由に関する宣言(一部抜粋) 1954年採択 1979年改訂

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。

  • 1.図書館は資料収集の自由を有する
  • 2.図書館は資料提供の自由を有する
  • 3.図書館は利用者の秘密を守る
  • 4.図書館はすべての検閲に反対する

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。
1979年5月30日 日本図書館協会総会決議

各地の自治体議会では、社会教育施設を首長部局所管に移すことの協議が行われている事例もありますが、図書館にとっては基本的なあり方に触れることです。このようなことは推進すべきではありません。

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以上、図書館法を基礎において、図書館事業の基本と、それを踏まえた取り組みなどについてまとめました。

とりわけ、2000年以降、政府の政策は図書館振興を妨げる動きが顕著です。住民自治を基本とする図書館のあり方に立ち返り取り組むことにより、図書館のさらなる進展を目指したいと思います。

松岡 要
  • 松岡 要(まつおか かなめ)
  • 元図書館問題研究会委員長

1967年、国立図書館短期大学修了。同年東京都目黒区立図書館に勤務。1987年、図書館問題研究会委員長就任。2003年、日本図書館協会事務局長就任。2012年、日本図書館協会退職。


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