【論文】外国籍住民の受け入れと基礎自治体―自治体だからこそできることに立ち戻る

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外国人の受け入れは、基礎自治体が具体的にどのような受け入れをしているのかが極めて重要です。国も先進的な自治体の取り組みに合わせた制度変更をしています。地方から国を動かせるのです。

はじめに

2018年12月に改正された「出入国管理及び難民認定法」(以下、「入管法」)によって新たな在留資格「特定技能」が創設されて、日本は初めてミドルスキルの労働者の受け入れを始めました。また、この入管法によって、法務省の内局であった出入国管理局が出入国在留管理庁となり外局化されました。これまで外国人労働者は専門知識や日本人にはない高度な技能を持った者でないと入れないとしてきたのを、日本が真正面から労働者を受け入れるようになったと受け止められ、この改正は新聞やテレビで大きく取り上げられました。

このように外国人の政策はもっぱら国の入管政策に注目が当たります。ですが、近年、外国人の実際の受け入れに着目すると、国以上に地方の政策が大きな役割を果たしています。そして、筆者からすると、現代日本の外国人の受け入れを巡って地域間競争(あるいは自治体間競争)が生じており、先進的な試みを行う自治体の施策が国の政策に取り入れられていっている様子が伺えます。自治体(とりわけ基礎自治体)からこの国を変えていくチャンスもまた芽生えてきているのです。本稿ではこのような視点から外国籍住民と基礎自治体との関係を論じてみたいと思います。

自治体が仕掛ける新しい外国人受け入れスキーム

近年、国よりも外国人の受け入れに積極的なのは自治体の方です。筆者がとりわけ注目しているのは、横浜市と浜松市です。それぞれ特徴のある受け入れを進めています。横浜市は、ベトナムの自治体(ホーチミン市、ダナン市、フエ省)と協定を結んで、横浜市で介護人材として働く者を送り出してもらえるようにしています。この際に、ただ外国の自治体と協定を結ぶだけでなく、現地の医療系大学・職業訓練校(バククォアナムサイゴン短期大学、レティリエン職業訓練校、ドンア大学、フエ医科・薬科大学)とも協定を結び、日本での受け入れ事業を展開する事業者(学研ココファン)とも提携を結ぶのです。

これによって、ベトナムの自治体は自治体内で横浜市と協定を結んだ現地の医療系大学・職業訓練校に、横浜へ介護就労を考えている者の推薦を依頼し、医療系大学・職業訓練校は介護就労希望者を横浜市に推薦します。推薦された者は、日本での受け入れ事業展開者が開発した事前教育がなされて来日し、日本語学校で日本語を学んで、さらに2年かけて専門学校に通わせ日本の資格を取らせます。資格を取ったのちは、日本での受け入れ事業者の運営する施設に配置しようとするものです。市は、日本語学校の費用のうち35万円と専門学校に通う間の奨学金160万円を負担する、としています。この受け入れスキームは、いってみれば、横浜市が介護人材育成に必要な教育費を負担してまで、外国人介護人材を呼び込もうとするものです。市が積極的に動いて可能となった受け入れスキームではありますが、実際の受け入れ実施主体は民間事業者です。しかし、その民間事業者とも協定を結び、やらなくてはならないことを明記し責任を持たせています。これによって外国の自治体および医療系大学・職業訓練校は、安心して優秀な人材を送り出せるという仕組みです。基礎自治体が積極的に外国人受け入れの絵図を描き、それに沿った受け入れを図ろうとするものなのです。

これに対して、外国人受け入れの絵図は民間セクターが描いて、基礎自治体はそれを徹底的に側面からサポートしていくというあり方を示すのが浜松市での受け入れです。浜松市での外国人の受け入れの主役は浜松経済同友会です。同友会が中心になって「浜松で働く」をキー概念にして、有限責任事業組合「浜松外国人材定着サポート(Hamamatsu employment support services for foreigners)」を作って浜松で働く希望のある者にインターネット上の総合的職業・居住情報の案内板(eコモンズ)を作って、広く雇用および地域情報を知ってもらうものです。

横浜市が介護人材という特定の業種での外国人の受け入れを志向する取り組みなのに対し、浜松はあらゆる業種で正社員として外国人を受け入れようとします。ホームページには、求人やインターンシップを行おうとする企業・事業所が求人情報を載せると同時に、静岡大学等で外国人留学生としてやってきた外国人で日本就労を希望する者たち自身のプロファイリングも載っています。求人側、求職側がそれぞれ自己の情報を開示するとともに、地域で居住するためのサポート資源がどこにあるのかについても、ホームページ上で基本的な情報とコンタクト先が載っています。浜松市国際課や浜松国際交流協会も関わることで、このホームページに開示される情報が外国人からも安心して見てもらえるよう保証するようになっています。

紙幅も限られることから、本稿では横浜市と浜松市の事例しか挙げられません。入管法の改正のニュースに目が行きがちになりますが、地方ではそれぞれの地域の必要とする労働市場に合わせた具体的な取り組みが地道に積み重ねられており、それぞれ固有の受け入れの仕組みを展開させてきています。

自治体だからこそ変えられる日本の外国人の未来

近年、国の入管政策も国が一方的に決めるものから、先行して独自の取り組みを行っている自治体の政策を国が取り入れるということも見られるようになってきました。その典型が、神奈川県が公立高校の入試で用いている「在県外国人等特別募集枠」(以下、「在県枠」)です。在県枠を用いることで、神奈川県は、一般入試が「英語」、「数学」、「国語」、「理科」、「社会」の5科目受験を要求するのに対して、在県枠ではこれを「英語」、「数学」、「国語」の3科目受験としているのです。在県枠は一校10名程度ですが、現在では13校がこれを導入しているので、年に150人程度の外国人子弟がこの制度で県立高校に入学していることになります。

在県枠で入学してくる外国人子弟の多くは「家族滞在」の在留資格です。日本に滞在する全ての中長期在留者はなんらかの在留資格を持たなくてはなりません。身分系の在留資格と呼ばれる「日本人の配偶者等」、「永住者」、「永住者の配偶者等」、「定住者」といった在留資格であれば、高校や大学を出た後に自由に仕事に就くことができます。しかし、在留資格「家族滞在」の子どもが就職先を見つけても在留資格を変更できなければ、働けるとは限りません。外国人の子どもたちに「勉強をしろ」、「日本語を覚えろ」と言っておきながら、勉強し日本語を覚えてもその先に日本滞在を可能にする道はこれまで保障されていたわけではないのです。

ところが、国は在県枠の成果が現れてきていることを鑑みて、2017年以降、日本で高校を卒業して就職先を見つけた外国人子弟に、その者が小学校の中学年までに来日し小学校を卒業し(小学校の在学期間3年以上)、日本の中学に入学・卒業、そして高校に入学・卒業した日本での就学期間9年以上の場合には、就労制限のつかない「定住者」の在留資格を出し、中学時に来日し高校に入学・卒業した就学期間4年以上の者には、就職先で正社員として働くための「特定活動」の在留資格を出すことにしました。外国人子弟を高校の教育課程に取り込み、卒業生を出してきたことによって、その者たちが働ける在留資格にたどり着く道が開かれたのです。しかし、国がこうした制度を開いても、都道府県や基礎自治体での取り組みが行われていないところでは、この新たに開かれた道を活用することはできません。外国人子弟が成長したのちに働けるかどうかは、県や基礎自治体が積極的に外国人子弟の高校への進学に制度的に関わってきたかどうかに依存してしまうのです。

おわりに

外国人というと、ともすると国の問題と思いがちです。しかし、本稿で紹介したように、外国人がどこまで日本で幸福に暮らせるかは、実は基礎自治体や都道府県の具体的な取り組みにかかっています。

裁判でも、同じことが示されていたのを思い起こして欲しいのです。外国人の公務就任権が争われた平成17年1月26日最高裁判所大法廷判決・平成10年(行ツ)93号管理職選考受験資格確認等請求事件の原審平成9年11月26日東京高裁判決では「管理職の職務も広範多岐に及び、地方公共団体の行う統治作用…特に、公の意思の形成…関わり方、その程度は…様々なものがあり得るのであり、…公権力を行使することなく、また、公の意思の形成に参画する蓋然性が少なく、地方公共団体の行う統治作用に関わる程度の弱い管理職も存在するのである。したがって…職務の内容、権限と統治作用との関わり方及びその程度によって、外国人を任用することが許されない管理職とそれが許される管理職とを分別して考える必要がある。そして、後者の管理職については、我が国に在住する外国人をこれに任用することは…国民主権の原理に反するものでは」ないとなっていました。

また、外国人の地方参政権では、平成7年2月28日最高裁第三小法廷判決・平成5年(行ツ)第163号選挙人名簿不登録処分に対する異議の申出却下決定取消事件で、「憲法93条2項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である」[傍線は筆者]となっています。

裁判所でも、外国人の地方公共団体での公務就任や地方参政権について、地方が独自に決めることができる、という判断が行われているのです。あとは地方が外国人住民に対して腹をくくれるかどうかだけなのです。

【注】

  • 1 本節の事例については、丹野清人(2020)で詳しく論じた。
  • 2 横浜市の受け入れについては、2019年2月22日横浜市健康福祉局高齢健康福祉課発の横浜市記者発表資料を参照のこと。全体像がわかり易く出ている。(https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/kenko/2018/0222kaigojinnzai.files/0001_20190322.pdf
  • 3 金銭的な支援以外に、横浜市は市営住宅の空き家を活用した住宅支援もこの受け入れではプログラム化している。
  • 4 具体的な「浜松外国人材定着サポート」については右のRLアドレスで確認して欲しい。(https://hamamatsu-ecommons.com
  • 5 横浜市や浜松市と異なる第3の外国人受け入れタイプが、茨城県における取り組みだ。農業での技能実習生でベトナムと協定を結んで受け入れを行っていたことから、そのつながりをベースに県が外国人雇用を考える企業・事業所と日本での就労を考えている外国人が出会って交流する場を設定し、企業・事業者と労働者のマッチングの支援を行うというものである。
  • 6 県立高校11校と横浜市立高校2校でこれを行っている。
  • 7 法務省のRLに詳しく出ているので、ぜひ確認してもらいたい。(http://www.moj.go.jp/isa/content/930003573.pdf

【参考文献】

  • 丹野清人、2020、「地方から始まる外国人の新しい受入れ」『移民政策研究』第12巻、49~64ページ。
丹野 清人
  • 丹野 清人(たんの きよと)
  • 東京都立大学人文社会学部教授

1966年茨城県生まれ。著作に『国籍の境界を考える[増補版]』(吉田書店、2020年)、『越境する雇用システムと外国人労働者』(東京大学出版会、2007年)などがある。

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