【論文】大阪 住民自治、市民協働を伝える市民ジャーナリズム ローカリズム × ジャーナリズム市民の直接的行政参画の具現化に向けて

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大阪市廃止に反対する市民活動を通して芽生えた、市民の自治意識を背景に誕生したCO。住民自治や市民協働、ローカリズムを具現化しようとする市民をつなぐジャーナリズムを目指しています。

住民参加による行政を目指して

大阪コミュニティ通信社(英文社名「United

Community Osaka」、以下、CO)は、インターネットを通じて2021年2月から試験的なニュース配信を開始、5月より定期配信を始めた、生まれたばかりの市民メディアです。目指しているのは、住民自治を具現化しようとしているコミュニティや、市民と行政との協働を進めているさまざまな団体をつなぎ、コミュニティ同士の緩いつながりを広く市民に伝えていくことです。

人口275万人の大阪市、総人口881万人の大阪府といった大都市において、自治や行政とのつながりといったことは、なかなかイメージのつかないものです。そうした中でも、エネルギーや水道などのインフラや、保育や教育、公園運営など、住民にとって生活に直接かかわる事柄が大きく変化しています。身近な行政に目を向け、住民から行政への要望や提案、地域のことについて住民参加による行政が行われることが重要ではないかと、私たちは考えています。

現在ヨーロッパを中心に起こっている、市民の直接的な政治参加活動や、地方行政の透明性を求める活動に代表される「ミニュシパリズム」は、一つの方向性だと考えています。

COでは試験的配信から半年間、都市部での町おこしや、都市農業の抱える課題と展望、あるいは教育自治や大阪市において進む自治の崩壊など、実際の活動や人物へのインタビュー、COの視点を通して考える自治などを番組・記事として掲載してきました(写真1・2)。10分間程度の映像とテキスト記事による掲載方法を主としています。これは、インタビューや映像を通じて、生の声を聞いてもらい、映像でより具体的なイメージを持ってもらおうという側面が一つです。また、一般のニュース同様テキストでの情報発信を行い、より多くの人に見てもらいたいという両面からの選択でした。しかし、掲載手法をはじめ、映像としての見せ方やメッセージとしての伝え方など、試行錯誤の繰り返しでもあり、まだまだメディアとしての影響力を持つまでには至っていません。また、収益化のモデルも確立しておらず、経営や運営をどのように成立させるかは、市民メディアとしての大きな課題でもあります。

大阪という特殊事情から発する自治の目覚め

2008年の橋下徹大阪府知事の誕生が、大阪維新の会という新しい政治勢力の台頭の始まりとなりました。2011年のダブル首長選でこの特定の政治勢力により、大阪府・大阪市の行政は大きく転換します。大阪市廃止・特別区を設置する、いわゆる「大阪都構想」が掲げられ、公営事業の民営化、民間委託が進められ、大学や医療機関、公的事業の多くの統廃合も進みました。

大阪市では、24区役所の窓口業務は派遣社員へと転換され、バス・地下鉄事業は民営化されました。水道事業の府市統合が画策され、上下水道運営の民間委託が積極的に進められています。また、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の統合と独立行政法人化により、日本で唯一、公営の研究所を持たない大阪では、新型コロナウイルス感染でウイルス解析などが進まないという事態に直面しました。パークPFIを導入した大阪城公園では、在阪民放テレビ局や吉本興業などの民間企業13社による劇場やレストラン利用を促進する商業施設が林立する姿に変わりました。

大阪ではこうした民間への転換を良しとする市民が多く、吉村洋文知事・松井一郎市長の両首長を支えているのかもしれませんが、生活に直結する公営事業が市民の手の届かないところにいってしまい、確実に自治が阻害される状況が生まれています。

市民が自分たちのメディアを持つ

2015年、2020年の2回にわたって行われた「大阪市廃止・特別区設置」の住民投票は2回とも僅差ではありますが否決、大阪市民はこの行政の転換にNOを突きつけました。

この2回の住民投票に取り組んだ多くの市民活動が集ったのが「大阪・市民交流会」(平松邦夫・中野雅司共同代表)です。この交流会に集まった団体、個人は、約10年にわたって、水道民営化問題や公園等の運営の民間委託、人工島夢洲の開発とそれに伴うカジノ誘致、開発の抱える課題など、民間委託や民営化の課題、公共事業の重要性などの学習会や講演などを行ってきました。しかし、そうした活動の多くはマスコミに取り上げられることは少なく、思うような広がりが見られたとは言い難い状況でした。しかし、交流会に集まった人々には、着実に行政に対する意識が芽生え、自治の重要性が認識されるようになったと思います。2020年の住民投票後に交流会で行われた「私たちが目指す大阪」をテーマとしたワークショップでは、「地域おこしや文化と芸術を守る都市」、「支え合える大阪、絶望しない街」、「伝統産業、伝統文化に立脚した経済」、「自治への参加」といった意見が出されました。

そうした中に、インターネットラジオなどで市民活動や市民の声を集めて発信する、というアイデアがありました。つまり、交流会に賛同する団体や個人の活動を一つのメディアとしてまとめ、発信していくことで、これまで注目されなかった活動やメッセージをより強く発信できる自分たちのメディアを持たないか、というものでした。アイデアの主は、後にCOの共同代表になる山口達也氏です。アイデアはすぐには実現しなかったものの、2021年3月にCOとしてスタートするに至りました。

都市農業のこれからを考えるシリーズ「農業のある大阪の未来」
新たなまちおこし、地域づくりを取材するシリーズ「まちづくりは、人づくり」

大都市での新たな住民自治を探る

大阪市廃止は住民投票で否決されたのもつかの間、吉村・松井両首長は、都市計画を大阪府に集約させる「府市広域一元化」条例の制定や、大阪都市計画局の新設を進め、大阪市立高校を廃止し府立高校への移管を決めるなど、着実に大阪市の自治を瓦解させる行政を進めています(写真3)。

COでは、これら自治を阻害する行政のあり方も問題として取り上げ、伝えることをしてきました。一方で、「NEXT OSAKA」を標榜し、あるべき大阪の未来を探るための番組・記事として『本渡章の「古地図でたどる大阪の歴史」~「区」150年の歩み』をスタートしています(写真4)。大阪市の誕生をはじめ、戦前の大大阪と呼ばれた大阪市の経済の隆盛と人口爆発、戦後の復興から人口減少の現代にいたるまでにそれぞれの区が果たした役割をたどり、今後の大阪のエネルギーはどこへ向かっていくのが良いのかを考える企画です。また、大阪の財政の系譜をたどり、これからの大阪の税のあり方はどのようにあるべきかを探る企画も始まります。

これらの独自企画を進めつつも、今後は、大阪府下の各地域で、住民自治や行政との協働、また地域を活性化させる活動を行っている団体や個人の活動を紹介し、メッセージを届けるメディアとして発展することを目指していきます。

大阪市から公立高校をなくし財産まで奪う行政訴訟事件を追っている
NEXT OSAKAを考える本渡章氏の「区」150年の歩み

COのWEBサイト▼
https://ucosaka.com/

[読者のみなさまへのメッセージ]

大阪コミュニティ通信社(CO)は、2度目の住民投票を否決に導くための運動を展開した市民グループ、「大阪・市民交流会」の活動を通じ、息の長い市民活動を今後も展開しなければ市民自治が危機に直面するという思いから、ネット関係を得意とする人たちが始めたものです。すでに多くのコンテンツがアップされていますが、残念ながら認知度はそう高くはありません。「自治」とは何か、生まれ育つ街の姿はどうなっているのか、そこに培われてきた文化を継承することは可能かなど様々な視点にあふれています。是非多くの皆様の応援をお願いします。

市民交流会共同代表・第18代大阪市長

平松邦夫

いしだ はじめ

広告会社を経て、コンピュータソフト企画・開発、Webサイト開発・運営。2021年より現職。

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