コロナ禍における中小企業振興を考える―中小企業振興基本条例の課題と可能性―

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新型コロナウイルスが変異を繰り返しながら猛威をふるい続けています。2020年1月下旬に日本国内でウイルス感染を確認してから、数度にわたる緊急事態宣言のほか、十分とは言い難い補償とセットになった自粛要請が繰り返され、地域の主な経済主体である中小企業の多くが疲弊している状況です。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて拡充した雇用調整助成金は、2020年1月から2021年5月末までの支給決定分で3兆4166億円に上ります(北海道新聞、2021年6月15日付)。そのほか、国や都道府県による緊急融資も2020年以降激増する状況です。例えば、北海道信用保証協会の債務残高は、2020年5月末時点で8145億9900万円であったのに対して、2021年5月末時点では、1兆6832億800万円と、1年間で倍増しているのです。主な使途は運転資金であり、緊急融資によって企業の存続を図っている状態であるといえます。しかし、コロナ禍が収束するめどが立たないことから、返済開始時期に売上が戻っているのか、不安を感じている事業者が多いことは看過できません。1990年代後半の金融不況、2008年からのリーマンショックに端を発する世界同時不況を上回る経済危機が起こり得るのではないかと懸念しています。

市区町村による中小企業支援に目を向けてみると、コロナ禍において、国や都道府県による緊急融資などの情報を集約することや、信用保証を受ける際の経費の補助、プレミアム商品券の発行など、緊急的な対応が多く見られました。しかし、そのような緊急的な対応に加えて、地域の中小企業をはじめとする事業者の被害実態を踏まえたうえで、実態に即した個別企業支援を行い、地域の産業政策へ昇華させる必要があるのではないかと考えています。

例えば、理念型の中小企業振興基本条例を全国に先駆けて制定した東京都墨田区では、コロナウイルスが猛威をふるい始めた2020年3~5月という非常に早い時期に、区内事業者に対して新型コロナウイルスによる影響調査を実施しました。インパクトの実態を明らかにすることに時間を要したのですが、事業者が事業継続のために資金繰りに関する支援を求めていることに加え、区内の産業を発展させるために必要な施策として、区内の産業をPRすることを求める声が大きいことを明らかにしました。その結果、本来2020年春に展開する予定でありながらコロナ禍によって延期していた、スタートアップ支援策「サブス区」(人情サブスクリプション)を9月にあえて開始する方向へかじを切り、多方面に反響を呼びました。

市区町村レベルでの中小企業振興基本条例(小規模企業振興基本条例や地域経済振興条例含む)の制定数は、2020年12月末時点で605を数えます。しかし、条例を制定したものの、条例に対する理解が進まないケースや条例を基に具体的な施策検討が進まないケースが多く見られます。いかにして「条例に魂を吹き込むか」というのは、各地で条例制定運動が進められる際の課題でもありますが、コロナ禍だからこそ、条例を基にして地域の実態を踏まえて独自施策を検討、策定し、実施していく必要があるのではないでしょうか。

大貝 健二
  • 大貝 健二(おおがい けんじ)
  • 北海学園大学経済学部准教授 自治体問題研究所理事

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