【論文】自治と民主主義のために情報公開を進めよう―情報公開の仕組みと保存期間1年未満の行政文書の問題点―

  • 三木 由希子(みき ゆきこ)
    特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長

2017年11月15日

月刊『住民と自治』 2017年12月号 より

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国では、公文書管理と情報公開のあり方が問題になっています。自治体も他人事ではありません。民主主義を強化し自治を進めるために、制度の課題は何か、何をすべきかを見ていきます。

南スーダンPKO日報問題、森友学園問題、加計学園問題が相次いで先の通常国会で問題になりました。共通するのは、安倍政権のものごとの決め方と行政文書の問題です。そして、南スーダンPKO日報問題は情報公開請求に対して不存在決定したこと、森友学園問題は国有地の売却金額を情報公開請求に対して非公開としたことがきっかけとなって、さまざまな問題が明らかになりました。情報公開制度が重要な役割を果たしました。 情報公開制度と公文書管理制度は車の両輪と例えられるのは、ここに理由があります。わたしたちの権利としての情報公開制度と、公文書の管理の問題についてみていきます。

情報公開制度の制定状況と目的

情報公開制度が日本で最初に制定されたのは、1982年のことです。山形県金山町で制定され、まもなく神奈川県も条例を制定し、その後徐々に自治体から広がっていきました。1999年に国の情報公開法がようやく制定され、2001年4月に施行されて国の行政機関に対しても情報公開請求ができるようになりました。また、2002年10月には独立行政法人等情報公開法が施行され、独立行政法人、一部の特殊法人、日本銀行に対する情報公開請求もできるようになりました。情報公開法の制定は自治体の条例制定を加速させ、総務省の調査によると、2014年10月1日現在で2町村を除き、すべての自治体が情報公開条例を制定しています。

何のために情報公開制度を制定するのかは、目的規定で明らかにされています。自治体は条例ごとに異なる目的を定めていますが、たとえば情報公開法では目的を、「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること」などによって情報公開を進め、「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」としています。

重要なのは、国民主権に由来していること、政府は情報公開によって説明責任を果たすとしていることです。説明責任を果たすために必要な公文書が存在すること、それを最大限に情報公開することがこの目的の達成には必要ですし、主権者としてわたしたちが情報公開請求をすることも目的達成には必要です。

権利保障の範囲は制度によって異なることも

情報公開制度はすべて同じ仕組みかというとそうではありません。各市町村・都道府県の条例や情報公開法などは共通する内容も多いのですが、違いもあります。この違いは、保障される権利の範囲にも影響を与えます。

開示請求権をだれに認めているのかは、制度ごとに異なります。国の法律は「何人も」としていますので、だれでも、日本に在住か否かを問わずに請求ができます。一方、自治体の場合は、「何人も」となっているものもありますが、在住・在学・在勤・事務所や事業所が所在している場合しか請求ができないところもあります。たとえば、福島原発事故に関連する情報は福島県内の市町村に存在していますので、時には直接自治体にかかわりがなくても情報公開請求をしたい場合がありますが、それができないこともあります。だれでもどこに対しても情報公開請求ができる、という仕組みにはなっていないのです。

請求できる公文書の範囲も異なる

もう一つ重要なのが、請求対象情報をどのように定義しているかです。

国や多くの自治体の制度が、①職員が職務上作成・取得した文書であること、②組織的に用いられていること、③行政機関として保有していること、の3つの要件で行政文書を定義し、請求対象としています。職員が職務上作成・取得したすべての文書が対象になるとは限らず、個人的なメモや控えなどは基本的に除外されます。しかし、複数の職員で共有したりした場合は、②の条件に該当して行政文書になるという、文書の利用のされ方で判断することになっています。

このような定義であるので、加計学園問題では、「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などが記録された文部科学省の文書が行政文書に当たるかどうかが最初、問題にされました。前文部科学事務次官や現役職員の証言などから文部科学省内で共有されていたことが指摘され、最終的に政府は行政文書であると認めることになりました。しかし、通常はどのように内部で文書が利用されているかを外部からは知ることができませんので、政府や自治体が信用できないと、行政文書かどうかを適切に判断しているかどうかも信用できないことになります。

また、別の行政文書の定義の仕方をしている自治体条例があります。決裁・供覧などの手続きで決定・確認された文書のみを行政文書と定義し、請求対象としているものです。この場合、最終的に意思決定された文書は対象になりますが、検討過程の文書の多くが請求対象から外れることになります。加計学園問題の文科省文書のような文書も、正規の内部手続きを経ているわけではないので、このような定義だと行政文書とはならず情報公開請求対象にならなくなります。

自治体によっては、そもそも情報公開請求できる範囲が制度上、非常に限定されていることがあるということです。また、情報公開請求対象範囲が管理される行政文書の範囲となることもあり、行政文書管理の仕組みに影響を与えることにもなります。自治体によっては、他の自治体に少なくとも追いつくために制度の改正などの議論を本来はする必要があります。

原則公開の仕組みだが黒塗りも多い

情報公開制度は、原則は公開で例外が非公開という枠組みになっています。そのため、例外として非公開にする場合を定めています。具体的には、個人情報、法人に関する情報、犯罪捜査・防止に関する情報、意思形成過程情報、事務事業に関する情報、他の法律や条例で非公開とされている情報(法令秘)が自治体で、国では、法令秘情報はありませんが加えて外交防衛情報が一定の条件に当てはまると非公開になります。

この非公開規定は、考え方を示したもので、どの情報を非公開にするのかを個別具体的に示しているわけではありません。公開することによる行政事務への支障のおそれや、意思形成過程への不当な干渉、法人に対する不利益などが生じると行政が判断すれば、非公開にできる定め方になっています。

情報公開請求は、政府や自治体が公開していない情報の公開を求めるものですから、情報を公開することで仕事がしにくくなる、どうなるかわからない、公開すると批判されそうと考えると、非公開としておいたほうが安全と判断しやすい傾向にあります。そして、何を非公開とするかは、一義的には行政による裁量的判断に委ねられています。

国ではTPP交渉に関する文書が、東京都では豊洲新市場に関する文書が全面黒塗りで出てきて、「のり弁」と揶揄されましたが、情報を公開して説明責任を行政として果たす必要性よりも、行政自らの利益を守る必要性が優先されると、不必要に非公開範囲が広くなることもあります。結果的に、部分公開はするがほとんどを黒塗りにしてしまう、全部非公開として何も出さないということも起こります。

しかし、非公開の範囲は必ずしも固定的ではなく、時代とともに変化するものもあります。たとえば、入札の予定価格があります。1998年までは非公開で絶対に公開されることはありませんでしたが、談合が深刻な問題となり、当時の建設省などが予定価格の事後公表を自治体に通知して以来、公開されるようになりました。また、保育所や介護施設などの福祉施設に関する情報は、以前は情報公開請求が必要だったり一部非公開になっていましたが、社会的要請を受けて義務的な情報公表の範囲が広がってきています。

このように時代とともに非公開の範囲が変わることもありますが、もっと重要なのが、非公開決定を争うということです。

非公開決定は不服申立てや裁判で争うこともできる

情報公開制度は開示請求権を保障し、公開を原則としていますので、非公開決定は請求者の権利を侵害していることになります。そこで、非公開決定を審査請求や裁判で争う機会が保障されています。

審査請求は、非公開決定を行った行政機関に対して行うものですが、実際には情報公開審査会という第三者機関が審査を行います。同審査会は、非公開となった文書を実際に見て非公開が妥当かどうかを審査でき、文書を所管している担当課と審査請求人双方からの説明や意見を聴いて、最終的に答申として意見を出します。審査請求をすると、だいたい20?$(Q"230%で公開範囲を一部拡大、数パーセントで全部公開を求める答申を審査会は出しています。審査請求は無料でだれでもできますので、納得のいかない非公開は争うことが重要です。

また、情報公開訴訟を提起することもできます。情報公開訴訟では弁護士を依頼せずに本人訴訟で行われることも珍しくありませんが、通常は弁護士に依頼して訴訟を起こすことになります。提訴に当たっては裁判所に対して費用の納付も必要なので、どこまで争うかは、さまざまな条件を考えて判断をすることになります。

非公開を争った答申や判例の蓄積が、あいまいな非公開規定の解釈基準を作ったり、何は非公開にできないかという基準になったりします。争うことが、情報公開の範囲を広げることにもつながりますし、制度の限界が明らかになり制度改正議論の根拠となっていきます。わたしたち一人ひとりが、制度を育てていくことになるわけです。

1年未満保存文書を中心に 行政文書不存在という問題

情報公開制度を使う上で大きな問題になるのが、行政文書の不存在です。なかでも南スーダンPKO日報問題、森友学園問題では保存期間が1年未満の行政文書が問題になりました。

国は公文書管理法を2011年4月に施行しました。同法の制定で変わったことが、保存期間が満了した行政文書の廃棄に内閣総理大臣の同意が必要になったことと、歴史文書の国立公文書館などへの移管が義務付けられたことです。これにより、行政文書の廃棄は内閣府が行政文書ファイル管理簿をもとに審査を行うことになりました。

行政文書ファイル管理簿は、行政文書ファイルの名称や所管課、何年保存なのかなどを登録する仕組みで、インターネット上で公開されています。公文書管理法は保存期間が1年以上の行政文書ファイルの登録を義務付けていますが、1年未満の場合は登録しなくてよいとしています。結果的に1年未満保存は廃棄審査をする方法がなく、2011年4月に総理大臣が1年未満は廃棄審査を要しないと決定し、これを根拠に各省庁が随時廃棄をしています。

もともと1年未満という保存期間は、日々発生する軽微な行政文書が想定されていましたが、公文書管理法やその規則などではその基準を設けていません。現状では、何を1年未満の保存期間とするかは、省庁次第、もっというと各課次第なのです。

この問題は、深刻でした。南スーダンPKO日報は実際に廃棄していなかったにもかかわらず、陸上自衛隊のルール上は1年未満に該当するので、廃棄済みで不存在と虚偽の説明を防衛省はし続けました。さらに特別防衛監察により、情報公開請求を受けた陸上自衛隊が、当初日報を行政文書ではなく個人文書と判断し、存在そのものを隠ぺいしていたことも明らかになりました。

また、森友学園との交渉記録も、財務省は1年未満保存で廃棄済みと説明し続けています。しかし、1年未満は基準もなく、行政文書ファイル管理簿に登録されず、廃棄した記録も残らないので実際に廃棄したか否かも外部からは確認しようがありません。ブラックボックス化している1年未満の行政文書が、不存在や情報隠ぺいの温床になっていると疑われる状況です。このような公文書管理のあり方では、情報公開制度があっても文書の存在そのものが隠されることになりかねません。

行政文書を何のために保存するのかという問題

情報公開制度は、行政文書によって政府が説明責任を果たすための仕組みです。そうすると、行政文書は説明責任を政府が果たすべき期間、保管されていないと本当はおかしいわけです。南スーダン日報は部隊が完全に撤収するまでは少なくとも保管すべきですし、森友学園との交渉記録は会計検査院の検査対象になる5年間は、説明責任を果たす必要があります。それにもかかわらず1年未満で廃棄ができるという仕組みに問題があります。

現在、1年未満の保存期間の基準を設けようと、内閣府公文書管理委員会が検討をしていますが、実態が不明なため具体的な検討も難しいところです。そもそも1年未満という保存期間を認めるか否か、認める場合はどのように管理をするのかという抜本的な見直しと検討が必要です。

また、1年未満という保存期間は自治体のなかにも存在しています。たとえば、東京都は知事部局の文書保存期間基準の14・7%が1年未満の保存期間に区分されていました。1年未満と1年保存を合計すると、52・7%で、短期で廃棄されるものが多いことがわかります。行政が説明責任を逃れる方法として行政文書を短期間で廃棄することになると、情報公開制度も意味をなさなくなります。

情報公開制度と公文書管理制度は、行政文書を持つ政府や自治体が責任ある行動をとることではじめて、情報公開請求をするわたしたちの知る権利が保障され、公開された情報をもとに参加や監視ができるようになります。民主主義を強化し自治を進めるためには、制度の問題や課題について市民も行政も、両方が当事者として積極的な議論をしていくことが求められます。

【注】

2017年11月15日

月刊『住民と自治』 2017年12月号 より

  • 三木 由希子
    三木 由希子(みき ゆきこ)
    特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長

    横浜市立大学文理学部国際関係課程卒。情報公開・個人情報保護制度やその関連制度に関する調査研究、政策提案、意見表明、情報公開制度の活用を行う。

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