新型コロナ感染症に対する有効な医療と予防を


私の勤務先はコロナ専門病棟を持つ病院と診療所、介護施設を運営するみなと医療生活協同組合*(愛知県・名古屋市)です。新型コロナ感染症に見舞われてから1年半、緊急事態宣言発令の有無、感染の波の大きさに関わらず、ずっと緊張した取り組みを続けています。この間の経験を住民との協力、自治体との連携を中心に報告します。

初めの半年は感染症の実態がよくわからない中で、通院する患者さんの不安と防護物資の不足がありました。その中でゾーニング*を明確にした、PCR検査のできる発熱外来を作りました。特筆すべきことは、病院の感染防護具が足りないことを知った地域の組合員さんが、ガウン、フェイスシールド、マスクなどを作って大量に病院へ届けてくださったことです。このことは職員にとって、強い心の支えになりました。また地域では組合員さんたちがお互い電話などで連絡を取り、つながりが途絶えないよう、孤立した人がいないように努力してくださいました。

その後愛知県からの依頼もあり、中等症のコロナ専門病棟を作ることになりました。新型コロナの患者さんの治療、看護には通常にない努力と時間、感染防護の手順への習熟が必要です。コロナ専門病棟や発熱外来で働く医療従事者は「家族の世話ができなくなるのではないか」とか、「他の同僚と会えなくなるのでは」という不安からスタートしました。しかしながら、「目の前の患者さんにできる限りのことをしてあげたい」、「自分たちが地域をコロナ感染から守るんだ」と士気は高く、チームでの診療に自信を深めていきました。こうしたスタッフの勇気と貢献なしには、新型コロナに対応できなかったと思います。

感染がピークとなると、重症患者さんの治療も始まりました。保健所からの入院依頼や、検査依頼も多くなり、保健所との連絡、情報共有は大切なものになりました。入院先がなかなか決まらないことも多くなり、保健所の苦労も並大抵ではなかったと思います。

ワクチン接種会場では組合員の方にボランティアとして、案内や予診票の相談に乗っていただいて大変助かっています。また予診票の書き方班会を地域の組合員で開催して、医療生協らしいワクチン接種の取り組みを行ってきました。そこに7月からワクチン供給が少なくなるという問題が持ち上がりました。すでに予約を受け付けた医療機関は大変です。私たちも名古屋市に対して安定したワクチン供給を訴えてきました。多くの自治体も困惑していると聞きます。

供給が減る一方で、早くワクチンが打てるかのように人々の気持ちを焦らせるメッセージを出し続けてきた政府のやり方は間違っていたと思います。自治体や接種機関と密に連絡を取って安定した接種を行うべきでした。

新型コロナ感染のパンデミックは日本社会の多くの問題点を明るみに出すと同時に、医療やケアの大切さをわからせてくれました。ケアをすることされることが尊重される社会をめざしていきたいと思います。そのためにも医療・介護の現場と地域住民、自治体との連携を強めていくことが大切です。

尾関 俊紀
  • 尾関 俊紀(おぜき としのり)
  • 日本医療福祉生活協同組合連合会副理事長 みなと医療生活協同組合理事長・医師 自治体問題研究所理事