生活保護決定に記載された「理由」

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本年6月27日、最高裁が生活保護の基準改定を違法とする判決を下したことが大きく報じられました。この判決で違法とされたのは、2013年から2015年にかけての保護基準改定でしたが、その後の2018年の基準改定に伴う保護変更決定に関する行政不服審査に、筆者も携わったことがあります。そのとき気になったのは、受給者に届いた保護変更決定の通知書の中で、しばしば「保護決定の理由」の欄にわずかに1行「保護基準改定等」としか記載がなかったことでした。

行政の決定が相手方である国民に対して不利益となるような場合、「理由」を示すことが法令上義務付けられています(行政手続法14条など)。生活保護が変更される場合の決定についても同様で、通知書に「理由」を付さなければならないと規定されています(生活保護法25条2項により同法24条4項を準用)。とはいえ、通知書の「理由」欄に「保護基準改定等」とだけ記載して、それでこの義務付けに応えたことになるのかが疑わしいのです。

行政の決定に「理由」を示すことについては、大まかに2通りの観点からその必要性が指摘されます。1つには、行政の判断の慎重さと合理性を担保して恣意しいを抑制するためです。いま1つには、決定を受ける相手方に「理由」を知らせて、相手方が納得できないときに審査請求や訴訟提起により不服を申し立てる便宜を与えるためです。このことは最高裁判決で繰り返し言明されていて、学界でも広く認められています。

そうすると、通知書で示される「理由」とは、どんな事実関係にどんな法条を適用して決定に至る判断が導かれたかが明らかになるようなものでなければなりません。また、その「理由」は、決定の通知書で示されるべき原則ですから、その通知書の記載自体から読み取れる必要があります。それ以前の通知等も併せ参照すれば分かるとか、通知書だけで不明な点は問い合わせてくれば補足説明する、というような記載では足りないし、審査請求などを検討するときの役には立ちません。

また、たった1行の「理由」の記載でもって詳細がわからなくても、それは通知を受けとる側に専門知識が乏しいことが問題なのではありません。一般の生活保護受給者に限らず、行政実務の経験者や法律専門家でも、保護変更決定の「理由」欄に「基準改定等」とあるだけでは直ちに「基準改定」を特定しづらく、その内容を確認することもできません。これでは通知された保護変更決定が適正かどうか、よほど生活保護制度に詳しい人でなければ判断が困難でしょう。結局、「保護基準改定等」というのは、変更決定がなされた“きっかけ”だけを記載した的外れなものに過ぎず、法令上義務付けられた「理由」というに値しないのです。

保護変更決定に記載された「理由」が十分であるかどうかは、保護基準の減額改定が違法か否かとは無関係で、また、個々の保護変更決定が保護基準に照らして正確に算定されているかどうかとも一応は別の問題です。それでも、粗略な「理由」の記載に目をつぶったままでいるとき、恣意的な判断や算定の誤りをも見逃すことにならないかが懸念されるのです。

梶 哲教

1960年生まれ。大阪学院大学准教授。専門は行政法学。大阪自治体問題研究所理事。

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