ごあいさつ

自治体問題研究所は、設立して半世紀を迎える会員制の組織です。

自治体問題研究所理事長 岡田知弘(京都大学大学院経済学研究科教授)

東日本大震災と福島第一原発事故は、人間の生命と基本的人権が何よりも優先されるべきであり、それを保障する国と地方自治体の役割こそが求められていることを、私たちに示しました。しかしながら、前の民主党政権は「グローバル国家」づくりを求める財界の意を汲み、少数の多国籍企業の経済的利益を最優先にする、TPP(環太平洋経済連携協定)を推進、消費税増税政策を強行しました。復興政策も、復興予算の流用問題に象徴されるような惨事便乗型のものとなり、多くの国民の批判のなかで民主党政権は崩壊しました。しかし、2012年末に誕生した自民党政権は、これらの「構造改革」政策を引き継ぎ本格的に再稼働するだけでなく、原発の再稼働と新設、改憲や道州制を推し進めようとしています。改憲や道州制を強く主張する「日本維新の会」の国会進出もあり、平和的生存権を基本理念とする戦後憲法体制や、住民自治に基づく地方自治制度、地域経済社会の持続的発展が戦後最大の危機に瀕しているといえます。

他方で、この間、原発再稼働反対やTPP参加反対、地方整備局の広域連合等への移管反対をめぐる共同の取り組みの急速な広がりや、「小さくても輝く自治体フォーラム」運動の発展に見られるように、各地で「自治体らしい自治体」の地域づくりが開花しつつあります。自ら生活する地域のことは住民自身が決定するという住民主権の運動が広がり、生活の場に近いところでの「まち研」活動も次々に生まれつつあります。このような地域に根ざした研究活動と政策提案、地域創造活動こそが、将来の地域と日本を創りあげていく大きな原動力だといえます。

自治体問題研究所は、創立以来半世紀の間、住民自治の発展のための地方自治体や国のあるべき姿を追求してきました。この伝統を引き継ぎ、グローバル経済の下で経済効率主義が横行する現代において、ひとり一人の人間と自然・国土との共生が大切にされる地域や国をつくるために、批判的精神と創造的精神に富んだ研究所活動を旺盛に展開していきます。また、グローバル時代に相応しい、地方自治を軸にした国際連帯も必要となっています。世代をつなぎ、地域をつなぐ、私たちの研究所活動に、あなたも積極的に参加し、生きがいのある人生をともに歩んでみませんか。

自治体問題研究所理事長 岡田知弘
(京都大学大学院経済学研究科教授)