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大阪市廃止・特別区への再編への賛否を問う住民投票実施にあたっての声明

大阪府議会、大阪市議会において、いわゆる「都構想」の設置協定書の承認が行われたことにより、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」の規定に基づき、大阪市の廃止と4つの特別区に再編することへの賛否を問う「住民投票」が、11月1日に実施されることとなった。

その内容は、2015年の住民投票で大阪市民が否決したものの焼き直しであり、さらに公明党の賛成を取りつけるためにより一層の矛盾と破綻を含んだものとなっている。

そもそも、政令指定都市である大阪市を廃止し4つの特別区に再編することは、地方行財政制度の仕組みからして、自治体が「自らのことを自ら決める」ための財政も権限も手放すことであり、地方分権の流れに背き、住民自治や地方自治体としての自治の力を弱めることは自明である。

大阪維新の会や公明党が、法定協議会を通じて強行を重ねた「協定書」の内容についても、疑念がある。この10年にわたる維新政治による「二重行政解消」「身を切る改革」とした保健所や公立病院等の公共機関の統廃合、住民サービスに従事する自治体職員の大幅削減、行政サービスの民間委託推進などの結果、「コロナ禍」への対応の遅れや不十分さが目立つなど、市民生活は大きな打撃を受けている。ところが、協定書をはじめとする大阪都構想の具体案では、これを解決・改善する内容は全くと言っていい程触れられていない。

また、特別区に移行した場合の財政シミュレーションについても、「コロナ禍での経済状況を反映したものに再検討すべき」との当然の声に対し、「どのぐらいの財政への影響が出るかは試算困難」としつつ、「減収があれば国が補てんしてくれる」「大阪メトロの赤字は一時的」などと、根拠も示さず「再計算は必要なし」と言い放つだけであり、とうてい市民の納得を得られる説明とはなっていない。

加えて、いわゆる「都構想」の唯一最大の経済政策ともいえる「IR・カジノ、万博でのインバウンド」についても、コロナ禍を踏まえて国際カジノ資本が「ランド型」から「ネット型」への転換を始めていることなどを見れば、「府に財政と権限を集中し、夢洲に巨額の費用を投じてIR・カジノを誘致しインバウンドによる経済効果を期待」とする計画そのものも抜本的に見直さなければならない。

今回行われようとしている住民投票は、歴史に名を刻む都市として発展してきた大阪市の廃止・特別区への再編という後戻りのできない重大な選択への賛否を市民に迫るものである。したがって、市民に対する十分な情報提供と、議論と熟慮の物理的・時間的な保障がなされることが大前提となる。

しかし、大阪府・市はこの説明責任の努力も放棄している。5年前の住民投票に向けては、合計39回、約3万2千人参加の「住民説明会」を行った。それですら、前回の住民投票当日の出口調査での有権者の回答は、「大阪都構想がわからない」が多数を占めたと言われている。

にもかかわらず、今回はコロナ禍を口実に、説明会は定員を絞り込んだ上でわずか8回、オンライン説明会3回しか行っておらず、大阪市を廃止するという重大な協定書の内容への理解を求める姿勢は到底感じられない。

今、大阪府や大阪市に求められるのは、コロナ禍の下での日々の暮らしや健康・生命の保障、営業や経営の立て直しへの公的支援、アフターコロナを見据えた「新たな生活様式」を支える行政施策・体制などの構築が最優先課題である。

この時期に、莫大な予算と人員を割いた上、まともな情報提供もなく、議論と熟慮の保障も行われないまま、住民投票を拙速に行うこと自体、住民自治の侵害というべきである。また、その結果として、大阪市を解体して、行財政権限が制約された4特別区に再編することは、団体自治の否定につながるものである。このことは、地方自治権を抑えようとしている政府の「自治体戦略2040構想」、財界の道州制構想と軌を一にする方向であり、日本の地方自治のあり方にとっても、危惧すべき事態だといえる。併せて、大阪市の消滅は、近畿地方の地域経済や地方自治のあり方にも多大な負の影響を与えると考えられる。

以上から、自治体問題研究所は、民主主義と地方自治の充実を希求する立場から、このような異常な状況の下での、「大阪市廃止・特別区への再編」の賛否を拙速に問う住民投票の中止を求める。と同時に、11月1日投票実施に向け、10月12日に告示が強行されようとしている情勢の下で、大阪市・大阪府に対しては徹底した情報開示と公正な情報提供、マスコミにはこの問題での争点について公正な立場からの報道を要請するものである。

そして何より、大阪市民の皆さんには、自らが住み働く自治体の姿やその施策のあり方について、学習や議論をおおいに広げ、11月1日の投票日には、熟慮に基づく賢明な意思表示をされるよう、切にお願いするものである。

以上

2020年10月09日
自治体問題研究所 理事会