【自維連立政権合意書を検証する】
第4回 介護保険制度の根幹を破壊する政策

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【連 載】自維連立政権合意書を検証する

自治労連・地方自治研究機構と自治体問題研究所は2026年4月から、自由民主党と日本維新の会の連立政権合意書についての合同研究会をスタートさせました。平和・人権・生存権を脅かすそれらの政策から市民生活と地方自治を擁護していくため、憲法・地方自治の視点から検証します。

はじめに

2025年10月の「自由民主党・日本維新の会連立政権合意書」は医療・介護などについて、「社会保障関係費の急激な増加に対する危機感と、現役世代を中心とした過度な負担上昇に対する問題意識を共有し、この現状を打破するための抜本的な改革」を目指すとしています。

維新の会の目玉政策の「現役世代の社会保険料引き下げ」では、医療改革(医療費削減)とともに介護改革も重要な意味を持っています。医療給付額約48兆円に対し介護給付は約14兆円で3分の1程度ですが、「現役世代の負担」で見れば、第2号被保険者(40歳~64歳)の介護保険料は、介護給付費の27%を占めもっとも割合が高く、全国計で3・75兆円(2026年度予算ベース)を占めています。1人当たり平均では月額は6360円(見込額、事業主負担分含む)に上り、介護保険開始時の2075円と比べ3倍以上となっています。

政権合意で変わること
─自民・維新政権合意によって「加速化」「重点化」するもの

日本維新の会が政権に加わることにより、自民党がこの間進めてきた政策で「加速化」「重点化」することがあります。

第一は、徹底した給付抑制です。冒頭紹介した政権合意書に「社会保障関係費の急激な増加に対する危機感と、現役世代を中心とした過度な負担上昇に対する問題意識」とあるように、自・維政権の社会保障政策の重点は、深刻な少子高齢化や危機的な介護従事者不足の解決よりも、ひたすら社会保障給付の抑制・削減を優先させることです。自・公政権ではできなかった介護保険の利用者負担増と給付抑制が一挙にすすめられる危険性があります。

第二は、保険者再編と機能強化・情報基盤整備です。政権合意書には「医療介護分野における保険者の権限および機能の強化並びに都道府県の役割強化」とあり、具体策として①保険者の再編統合、②医療介護保険システムの全国統合プラットフォームの構築、③介護保険サービスに係る基盤整備の責任主体を都道府県とする、が拳げられています。

①の「保険者の再編統合」は、介護保険では、広域連合化や都道府県の役割強化などをすすめようというものです。②の「医療介護保険システムの全国統合プラットフォームの構築」は、全国医療情報プラットフォームの構築を一層強力に推進しようとするものです。③の「介護保険サービスにかかる基盤整備の責任主体を都道府県とする」は、介護保険の原則とされてきた「市町村主義」を転換し、都道府県単位での再編を志向するものです。

第三は、人口減少下での介護提供体制の縮小・再編です。政権合意書で「人口減少下でも地方の医療介護サービスが持続的に提供されるための制度設計」とあるように、人口減少を口実に、制度の根幹にかかわる改変を狙っています。

政権合意はどのように実行されつつあるか
─合意以降の政策動向

(1)徹底した給付抑制について
─介護サービス利用者負担増が重大な局面

介護保険は、3年ごとの「介護保険事業計画期間」に対応して制度見直しが行われており、現在の見直しは2027年度からの第10期介護保険事業計画に向けて行われています。政府が狙ってきた介護保険の給付と負担の見直しの「3大改悪」(①介護サービス利用料2割負担の対象拡大、②ケアマネジメント有料化、③要介護1、2の保険給付外し)のうち、①②の利用者負担増が重大な局面を迎えています。

表にあるように、③の「要介護1、2の生活援助等の総合事業移行・保険給付外し」は見送られましたが、②「ケアマネジメント有料化」は住宅型有料老人ホーム入居者のケアマネジメントへの利用者負担導入が法改正で強行され、①の「介護サービス利用料2割負担の対象拡大」は、今年2~7月の特別国会での法改正には間に合わなかったものの、2027年度実施に向け検討を続け2026年末に結論、2027年通常国会での法改正が執念深く狙われています。

表 介護保険3大改悪の現局面

出所:2025年12月24日大臣折衝事項、12月25日介護保険部会「意見」などから筆者作成。

①「介護サービス利用料2割負担の対象拡大」は、現行の1割負担の基準(合計所得160万円・年金収入等280万円未満)をどこまで下げて拡大するのかという議論に加え、昨年12月に預貯金等を利用者負担割合決定の要件に一部追加することが示されました。具体的には、「年金収入等230万円以上」までを2割負担の対象に拡大するが、預貯金等が「300万円以下」であれば申請により1割負担に戻すというものです。厚生労働省は「配慮措置」と説明していますが、本当の狙いは「利用者負担への預貯金等の反映」です。

日本維新の会は、これまでも高齢者は現役世代と比べ預貯金等が多いとして「所得だけでなく預貯金等も勘案すべき」と強く主張してきました。しかし、実際に預貯金等を反映させることは困難です。自治体は、所得(収入)は税情報を通じて把握できていますが、金融資産(現金、預貯金、有価証券など)は把握できていません。預貯金等を利用者負担に反映させようとすれば、全高齢者の預貯金口座にマイナンバーをひもづけることが必要です。さらに、法改正、システム整備により市町村の介護保険担当課が預貯金等情報を把握できる仕組みの構築が必要です。マイナンバーの預金口座のひもづけは大手銀行で5%以下であり、金融資産反映の仕組みの構築には何年もかかります。

しかし、厚生労働省の示した「預貯金等を申告させて1割負担に戻す」方法ならば、必要な範囲の預貯金を申告させることで把握することができます。現在でも、介護保険施設入所者の食費・居住費等の負担軽減制度(補足給付)は、低所得要件(住民税非課税世帯)に加えて資産要件(預貯金等が500万円以下等)が導入されています。市町村は、同制度の申請者に預貯金通帳の写し等の挙証資料を添付して預貯金等の額を申告させ、金融機関調査の「同意書」を書かせ、さらに虚偽申告の場合は、給付額全額に加え2倍の加算金を払わせる(3倍返し)というペナルティを課しています。この方法を利用者負担割合の決定事務にも持ち込もうというのです。

厚生労働省は、審議会で2割負担対象拡大の結論が出ていないにもかかわらず、今年5月から「介護保険制度における預貯金等の把握等に係る検討の場」を非公開で開催し実務的な検討を重ねています。

ケアマネジメント有料化は、在宅サービス分野の「居宅介護支援」については見送られましたが、住宅型有料老人ホームへの「登録制」導入と併せて、有料老人ホーム入居者に対するケアマネジメントを担う新たな類型(登録施設介護支援)をつくり、これに原則1割の利用者負担を導入しようとしています。これは、特別国会で6月19日に参議院で可決し6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」で法改定(老人福祉法と介護保険法)が行われ、2年以内に施行されようとしています。

(2)保険者再編・機能強化・情報基盤整備

特別国会での介護保険法改定では、介護サービス利用時等の電子資格確認の導入など介護被保険者証に係る見直しが行われました。情報基盤整備の一環であるとともに、現在第1号被保険者全員に65歳の年齢到達時に交付している介護保険被保険者証の交付をとりやめ、要介護認定時にマイナンバーカードを活用して電子資格確認・情報確認を可能とする改定です。ケアプランデータ連携システム普及、要介護認定情報の電子化なども併せ、介護保険におけるIT化、情報基盤整備は一気に進められようとしています。

(3)人口減少下での介護提供体制の縮小・再編

人口減少を口実とした介護提供体制の縮小・再編では、介護保険法改定で「特定地域サービス」が規定されました。

図 現行サービスと特定地域サービス・特定地域居宅サービス等事業の概要

出所:厚生労働省 老健局「社会福祉法等の一部を改正する法律の広報資料について」(第135回社会保障審議会介護保険部会参考資料1、2026年6月29日)。

①「特定地域サービス」とは─全国一律の基準を放棄し地域差別

国は、「中山間・人口減少地域では、『高齢者人口の減少』『生産年齢人口の減少による介護人材の確保の困難』が進んでおり、必要なサービスを維持するため、地域の実情に応じて柔軟なサービス提供を可能とする仕組みを設ける」(厚生労働省老健局広報資料・図)として、全国一律の介護サービス基準を放棄しようとしています。

人口の減少その他の厚生労働省令で定める基準に該当する地域として都道府県が定める地域(これを「特定地域」とよびます)に所在する介護サービス事業所(施設サービスと居宅介護支援を含む)の提供するサービスを「特定地域サービス」として、管理者・専門職、夜勤職員などの人員配置基準を緩和します。これによって、介護保険の加入者は、住んでいる地域によって差別され、介護サービスの「質」が低下させられることになります。

さらに、事業所に支払われる介護報酬は、現在の出来高制(サービス提供時間・回数に応じた報酬支払い)から、月単位の定額制にすることも可能とされています。定額制の報酬は、事業者にとっては利用が少ないほど事業収益の増加が生じ得るため、利用者にとっては必要な回数や時間のサービス提供がされない事態が起こり得ます。

このように、「特定地域サービス」は人員配置基準緩和でサービスの質を低下させ、定額報酬でサービス量を抑制することにつながります。

②「特定地域居宅サービス等事業」─保険給付外しで介護保険の根幹を破壊

さらに、法改定では特定地域がある市町村が、保険給付に代えて地域支援事業として事業費で委託する「特定地域居宅サービス等事業」を創設しました。これに移行すれば、事業費の範囲内でのサービスしか提供されず、市町村の裁量でさまざまな制限を付けることが可能になり、被保険者としての受給権はありません。「特定地域居宅サービス等事業」は、特定地域内に住む要介護1~5の認定者すべてが対象です。

この改定は、要介護1~5の利用者を「住所地域」で区分し、「訪問介護」、「訪問入浴介護」、「通所介護」、「短期入所生活介護」の四つのサービスを保険給付から外すことを可能とするものです。介護保険料を年金天引きで強制徴収する仕組みは堅持しながら、保険給付からは除外するという「保険料あって給付無し」という介護保険制度の根幹を壊す歴史的な改悪といえます。

政権合意書は「介護の危機」を解決しうるか

介護保険は「三つの危機」(①制度改悪と給付抑制によってサービスが制約される「保険としての機能不全」、②介護従事者の確保が著しく困難、③保険料が給付に連動して上がるため、保険料を抑えるため給付を抑えざるをえないという財源的制約)が指摘されています。政権合意に基づく介護政策の方向では、保険機能不全を全国の中山間地域等に一挙に広げる一方、介護従事者確保はますます困難になることは明らかです。また、介護保険料問題では、日本維新の会の首長が知事と大阪市長をはじめ大半の自治体行政を牛耳る大阪において突出して高い介護保険料(全国1位・大阪市、全国2位・守口市、全国3位・門真市)になっていることを見ても、維新の会がそうした介護の危機を生み出してきた張本人であることを証明しています。

日下部 雅喜

1956年岐阜県生まれ。日本福祉大学卒業。大阪府堺市職員として社会福祉行政に従事後、ケアマネジャー、佛教大学社会福祉学部非常勤講師。共著に『ケアという地平─介護と社会保障法・労働法』(日本評論社、2024年)、『“次期”介護保険改悪と障害者65歳問題』(日本機関紙出版センター、2023年)、『「自立支援介護」を問い直す─介護保険を使わないのが「自立」なのか』(日本機関紙出版センター、2021年)、『検証 介護保険施行20年─介護保障は達成できたのか』(自治体研究社、2020年)など。

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