外国人留学生の入団も実現しました。「女性消防団」は、避難所運営や防災倉庫点検、防災啓発などで、女性ならではの視点や気づきを生かした活動に取り組んでいます。
女性消防団誕生のきっかけ
板野町は徳島県の北東部、阿讃山脈の麓の町です。2024(令和6)年5月1日、板野町に女性だけで構成する「板野町消防団第五分団(女性消防団)」が発足しました。
人口約1万2000人の小さな町に誕生したこの女性消防団は、火を消さない消防団としてスタートしました。団員は、防災士・看護師・介護士・元高校教諭・元保育士・自営業・会社員など多様な経験を持つ16名、平均年齢は49歳です。活動の柱は、災害時の避難所運営や防災啓発、防災倉庫の点検清掃など、女性の意見やニーズを反映させ、女性の視点を生かした後方支援活動です。
女性消防団誕生は、2022(令和4)年秋、筆者が、ある出来事から、消防団の活動は消火活動だけではなく、避難所支援や、防災啓発など地域住民の命を守る幅広い役割があることを知り、女性ならではの感性を生かした女性だけの消防団を作りたいという思いが芽生えたのがきっかけでした。
東日本大震災時、避難所での生活を余儀なくされた女性たちが性的被害を受けた話や、長引く避難所生活でストレスがたまり災害関連死された話を聞くたびに、板野町で災害が起きて避難所運営をする折には、女性や高齢者、子供、配慮が必要な人たちのために、女性の目線でできることは全てやりたいと思いました。その思いが原点となり、賛同してくれた女性たちが集まりました。
女性消防団頑張る
発足して最初に取り組んだのは、町内31カ所に設置された防災倉庫の点検と清掃でした。実際に確認すると想像以上に備蓄物資が少なく、特に女性や乳幼児に必要な物資の不足が目立ちました。生理用品は28枚入りが3パックしかなく、手に取ると包装紙は劣化して粘着テープはなかなかはがれませんでした。紙おむつや哺乳瓶も少なく女性や子供たちへの配慮がないと感じました。これまでは男性が中心となり、男性の視点で整備されたからだと思いました。このことからも、「避難所で安心して過ごせる環境を整えたい」という思いが強くなりました。その思いから女性目線で必要な備蓄品を町に提案し、年に1回団員が手分けして防災倉庫点検を継続しています。
その他、女性消防団は次のような活動を行っています。
- 防災減災に関する講座の企画・開催
- 避難所運営ゲーム()の実施
- 奇数月の第二土曜日に「道の駅いたの」で開催される防災マルシェで、ミニ消防車の展示、水消火器の体験、災害時のトイレの使い方講習
- 各種防災講座やイベントに参加し知識と技術の習得
- 非常呼集訓練への参加
- 年末警戒活動
- 出初め式への参加
防災マルシェでの消防車展示には、幼稚園や小学校の子供たちがご両親や祖父母と一緒に訪れ、消防服を着せてもらって写真を撮ったり、水消火器訓練をしてくれ、地域交流の場になっています。
一つ一つの活動を誠実に重ねて、地域の皆さんに女性消防団の活動を知っていただき、防災を「自分ごと」と考えていただく努力を重ねることも私たちの大切な役割と思っています。
現在年2回から3回開催する定例会では、活動方針や講習会・イベント情報を共有し、団員からの意見や要望について協議します。子育てや介護などで参加できない団員はオンライン参加してもらい、それでも参加が難しい団員のために、定例会で決まったことは副団長が議事録を作成してグループラインで共有し、把握できるようにしています。
定例会や年末警戒などの行事には、子供さんを連れての参加もOKです。今年5月の定例会では、団員から要望のあった「炊き出し訓練」をしました。団員の子供さんも2人参加し、防災倉庫に備蓄している水、カセットコンロ、鍋を使い、災害用炊飯袋「」でご飯を炊き、ふりかけと缶詰をおかずにしました。ハイゼックスはラーメンも作れ、子供たちに大好評でした。知識を学ぶだけでなく、実際にやってみることも、災害時に落ち着いて行動できる力を育くむことを実感しました。
外国人留学生の入団も実現
若い団員の入団が進まないため、地元の短期大学の女子学生に入団してもらえないかと考え、町と大学と協議相談して、3名の女子学生が入団してくれました。1名は地元出身、2名はバングラデシュとミャンマーからの留学生でした。消防団に外国人留学生が入団する事例は全国でも例が少ないと思います。
この留学生の入団は筆者が強く希望しました。板野町には四国八十八カ所霊場のうち三つの寺院があり、近年外国人のお遍路さんが多く訪れています。災害が発生し、外国人のお遍路さんが避難所に避難してきた時、英語が話せる留学生が団員としていてくれたら大きな安心につながると考えたからです。その思いを学校側に伝え町にも働きかけた結果、入団を可能にするための条例改正も行われ、入団が実現しました。多様な文化や言語を持つ人たちとも支え合うことによって、地域全体の防災力が向上していける前例を作りたいと思います。
誰もが安心して過ごせる地域目指し
今後の課題は、若い世代の団員を増やし、女性が積極的に避難所運営に関わる体制を築いてゆくことです。そのために、女性を対象にした避難所運営訓練や防災講座を開催して、「防災は自分ごと」と考える機会を増やし、女性ならではの視点や気づきを生かした防災減災の取り組みを広げていきたいと思います。
行政と連携を取りながら、女性の声を反映させて、誰もが安心して過ごせる地域づくりを目指し、女性消防団だからこそできる活動を一歩ずつ積み重ねていきたいと思います。
