【ZOOM IN】大規模データセンターと地域はいかに共生をはかれるのか

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生成AI等の需要拡大にともない、大規模なデータセンター整備が各地で進められています。とくに首都圏の事例を中心に、地域の暮らしへの影響と、計画の問題点を指摘します。

はじめに

生成AI等の需要が急速に高まるなか、大規模なデータセンター(以下、DC)の建設が、首都圏を中心に次々と計画されています。大量の電力を消費し水の消費や排熱が懸念され、火力発電所並みの発電機と燃料貯蔵を伴うため、周辺住民の生活環境に深刻な不安を与え、「新たな公害」として社会問題化しています。脱炭素社会への転換に逆行しかねません。

特に、住居地域に近接した工場等跡地においては、建築基準法や環境関連法令の不備をかいくぐるかのように開発計画が進められ、環境に影響を及ぼす恐れのある情報が秘匿性を理由に示されぬまま、地域との合意形成が拒まれ、軋轢あつれきが生じています。

本稿では、昨年9月に発足した都市型データセンターあり方検討会(座長=寺西俊一・一橋大学名誉教授)(以下、あり方検討会)が紛争化する首都圏の事例を中心に検討するなかで、浮かび上がった共通する特徴と背景、地方自治体や住民の取り組みの動向、身の丈に合った地域に根差すDCのあり方等を考えます。

大規模DC開発計画に見る共通の特徴

1980年代から、金融機関や電気通信事業者や大学、研究機関が小規模なDCの整備を進め、90年代には府中ふちゅうインテリジェントパーク(東京都府中市)のような地域冷暖房区域へのDC誘致も行われてきました。最近では、松江市(島根県)や石狩市(北海道)など地方自治体と連携して地域振興につながる地域共生型DCに向けた地道な取り組みが、国内DC事業者によって実施されていました。

しかし、ここ数年の大規模DC計画はこれらと異なり、地域自治体と連携した計画的な誘致によってではなく、AIの急速な需要を見込んだ投資の対象として、場所を選ばず大規模跡地をDC用地として取得しています。自治体や地域住民との間に軋轢を生じている事例の多くは、日本のDC事業者とは異なる開発姿勢の外資系ハイパースケーラー(クラウド事業者)が特定目的会社や不動産事業者とともに進めている計画となります()。

表 住宅地に近接するデータセンター建設計画 問題事例(首都圏)

都市型データセンターあり方検討会調べ

こうしたDCに共通の六つの特徴を見てみましょう。

① 住宅地に隣接する大規模工場等跡地で計画され、周辺住民への環境影響が大きい

② 地方自治体の計画的な誘致ではなく、開発事業者は投資を目的とする特定目的会社や不動産事業者

③ DC運営者は外資系ハイパースケーラーで秘匿性を理由に情報を開示しない

④ 周辺住民が懸念する「新たな公害」に対する規制がなく、周辺環境との調和や住民に寄り添う姿勢にかける

⑤ 事業者が委託した企画会社が住民対応にあたるため、事業者の顔が見えず、責任の所在が不明である

⑥ 法令に違反しないとして、環境アセスメントや地区計画の策定、地域住民との協議に応じない

なぜ「新しい公害」といわれるのか

周辺住民がまず懸念するのは、猛暑時の排熱による熱中症リスクの増大、いっときも止まることのない冷却ファンの騒音、低周波音、電磁波の影響、および地域を拒絶するような看板のない圧迫感のある異質な建物です。

東京都内では熱中症搬送者数が年々増加傾向にあり、昨年は最高気温40・3℃を記録しました。気候変動の影響により都の内陸部では気温の上昇傾向が止まらず、熱中症警戒アラート発令日が2030年には2倍になるとの推定も東京都環境科学研究所から公表されました。DCは大量の排熱に伴い、暑熱時にさらに周辺地域の温度と湿度を上昇させ、熱中症リスクを増大させることが懸念されます。一部のDC計画では事業者のシミュレーション結果が開示され、DCが隣接したマンションや住宅では数℃の温度上昇が予測されています。

また、毎月定期的に稼働する非常用発電機の大気汚染・悪臭・騒音、住宅地との敷地境界付近に貯蔵される大量の重油や軽油、および発火危険性の高い無停電電源装置などの火災リスクに対する懸念も大きいです。

1970年代の光化学スモッグ警報発令時には、工場の操業削減や不要不急の自動車抑制など施策がとられましたが、止めることのできないDCの場合は、むしろサーバーの冷却のため電力消費、放熱や水蒸気を増大し、結果的に熱中症リスクを高める点が大きな違いです。こうした環境リスクを考慮すれば、住宅地と一定距離を離して立地させることが望ましいでしょう。

なぜ住宅地に隣接して計画できるのか?

建築基準法の建築物の定義に「データセンター」はなく、目的(用途)として、事務所や倉庫、電気通信施設、その他(データセンター)などとみなされ、どこにでも建てられるとして住宅近接地に用地を取得できます。

日野台、日野、小平、宮原各DCは工場跡地、塩浜、千石、印西各DCは駐車場跡地、昭島DCはゴルフ場、富ヶ谷DCは梨農園、桜台DCは学校跡地、いずれも住宅地に隣接する大規模跡地の計画です。用途地域については、日野台DCは工業地域、印西DCは商業地域、多くは準工業地域で、いずれも周辺は戸建て住宅やマンション等の住宅地に土地利用が変容している地域です。なかでも、日野台DCは第一種低層住居専用地域の隣に高さ72メートル(条例でマンションは25メートルに制限)、千石DCの建物はマンション敷地境界とわずか3・7メートルに高さ51メートル、小平DCでは民家敷地境界とわずか10メートルに高さ50メートルの建築物が立つ計画です。いずれのDCも従前の建物の高さを超える建築物です。

駅前商業地域のマンションに隣接する印西DCは、住民だけでなく市長や市議会も事業者に代替地を提示し変更を促したものの、外資系事業者は受け入れることがありませんでした。多額の投資を前提とする計画の遅れを嫌い、後出し規制への損害賠償の可能性を示唆する事業者に対し、自治体はなすすべもありません。

投資目的の開発の弊害

大規模DCは土地取得以外にも数百億円規模の投資が必要なため、多くの場合、資産運用を目的とする従業員が一人もいない「特定目的会社」が事業主となります。設計者も運営事業者が決まらないまま、開発計画手続きが進むこともあります。小平DCのように、手続き途中で事業者が不動産信託受益権の売買により特定目的会社に変更され、設計者まで変更されるケースも例外ではありません。そのため、自治体や住民との協定内容や説明が承継されるかどうか、責任の所在があいまいになりがちです。投資目的で開発を進める大規模DCには、秘匿性を理由にDC運営事業者名が公表されないケースもあります。大量の電力を消費し、排熱や騒音、低周波音等の環境影響を及ぼす事業でありながら、責任を負うべき事業者名が公表されない事例は、従来の開発計画ではありえないことです。

地方自治体のジレンマと新たな動き

多くの自治体は、大規模DCの立地により、雇用の創出は少ないものの、固定資産税の増収に期待を寄せているのは事実です。ただ、数百億円と高価なサーバー資産について、固定資産税(償却資産)が正しく自己申告されるか不明です。サーバーは秘匿性の高い資産のため、ハイパースケーラーは情報を開示せず、サーバーを自社開発しています。もしくはリース品である等の理由付けで、償却資産を申告しない可能性もあり、税収を期待する自治体にとっては期待外れとなる可能性もあります。しかも特定目的会社は9割を配当すれば損金として扱え、法人税が免除されるなどパススルー課税の特典があることから、シンガポールなどからの多額の海外投資の受け皿となり、利益は海外へ流出します。

日本のDC事業者には、積極的に固定資産税額を公表して地域貢献の姿勢を示しているところもあります。

自治体においては、事業者と区民のコミュニケーションの円滑化を図るため、東京都江東区は、独自に2025年12月にDC指導要綱を、今年2月には区民向けのガイドラインを作成しました。区民が、事業者に対して排熱、非常用発電機排気浄化、災害対策、危険物管理などの情報提供や早期開示を求めやすくしています。

東京都も3月末、電力需要や脱炭素、まちづくりとの整合を図りつつ、その整備促進を後押しすべく、「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」を公表し、地域との調和を図ることを掲げ、地域共生事例などを紹介しました。残念ながら規制の導入はせず、事業者の努力義務にとどめています。

事業者と住民に任せるのではなく、自治体として環境影響面からチェックする動きもでています。

日野市では、環境基本条例に定める市民の申出(第8条)を根拠に、環境審議会で審議し、学識経験者からの意見を聴く場を設け、開発事業者の説明を求めるなど事業の進捗に合わせた審議の場を設けました。身の丈に合った地域振興に役立つ地域共生型DCを目指し、冷却方法の改善による廃熱利用、排熱削減、施設の縮小など代替案を含む議論がなされ、事業者に調査・予測・評価を要請しています。

市民団体の動向

各地の住民は団体を立ち上げ、自治体や事業者に対して情報の公開を求め、計画変更を求めるなど粘り強く運動を展開しています。2026年4月現在、首都圏では、建築確認取り消しを求め、富ヶ谷DC、印西DCで行政訴訟が、昭島DCでは公害紛争調停が、日野台DCでは指導基準適合通知書の交付に対する審査請求が提起されています。

あり方検討会では、DC計画の適正化をはかり住民の生活と環境を守るとともに、今後各地で起こる問題の未然防止に寄与することを目的に、省庁ヒアリング、専門家や研究者の協力をえて各地の事例の検討を重ねています。3月10日に要望書をまとめ、ガイドラインを検討中の日本データセンター協会(JDCC)と東京都に要望書を提出しました。提出した要望書では、情報開示の義務付け、環境アセスの適用、居住環境保全に配慮した立地規制、発電機及び燃料貯蔵量の制限のほか、災害時に計算処理を他DCに分散させ、地域へ電力や水の供給を行い、熱中症アラート発令時にも同様に排熱抑制するワークロードシフト導入についても提案しています。海外におけるDC規制等の動向を踏まえ、国の省庁に対する要請を行うことを予定しています。

急がれる関連法令の整備

経済産業省・資源エネルギー庁は省エネ法改正に伴い、2029年度以降新設する場合、エネルギー効率の指標となる「設計PUE1・3以下」を事業者に求め、操業2年後には罰則も適用されます。発熱量の大きい高性能GPU(画像処理装置)の需要拡大により従来のサーバー空冷方式だけでは対応が困難となり、水冷(液冷)方式や液浸方式などへの設計変更が求められます。排熱を無駄に捨て周辺環境に影響を及ぼすのではなく、エネルギー効率を高め、エネルギーを回収し廃熱を利用する技術の導入、定期的に稼働させる非常用発電機について、内燃力火力発電所と同等な規制の導入が求められるのです。

あり方検討会は、総務省には、非常時・緊急時のワークロードシフトを推進すること、ガバメントクラウド制度を見直し、地方自治体の身の丈に合ったDX推進に切り替えること、消防庁には、地下貯蔵方式であっても、住宅地に隣接または近接して重油等危険物を大量に貯蔵することを規制すること、国土交通省には、実態に合わせて建築物の定義にDCを設け、用途地域による建築物の用途制限を設けること、環境省には、環境影響評価法の対象事業に一定規模以上のDCを加えること、財務省・金融庁には、資産運用を目的とする特定目的会社等がDC開発事業者となることによる開発責任の不明確化、不適正な税負担等が生じる問題の是正などを求める予定です。

おわりに

現在、DCの立地については、近接需要の「都心型DC」と、「電力供給地型DC」へ二極分化する傾向にあるなかで、地域の身の丈に合った小規模・分散型DCを、自治体が主導して地域の産業・教育・福祉に貢献するものとして位置付けることを期待したいところです。

DCのセキュリティは主にサイバーテロ、災害・事故、内部統制、入退室管理等の問題です。AIの軍事利用を容認するハーパースケーラーは、秘匿性を理由に地域との関係を隔絶する傾向にあり、テロのリスクを高めるものであり、住居地域に隣接した立地を今後厳しく制限されるべきです。

現代社会にとって不可欠な施設であればあるほど、十分な対策を取りつつ、地域との共生を図り、「地域と共存する存在」となることを期待したいです。

伊瀬 洋昭

東京都公害研究所(環境科学研究所)、都立アイソトープ総合研究所、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターを経て、認定NPO法人日本国際親善協会(JIFA)理事長。元東京工業大学講師(環境社会論)。

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