【FOCUS】第34次地方制度調査会発足
─市町村業務の再編、地方分権改革転換も視野に

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今次の地制調は、人口減少、資源制約のもとでの地方制度のあり方の集大成であり、市町村業務の再編、地方分権改革転換も視野に入れたものです。内容をよく見極め、精査、検証していきたい。


はじめに

2025年12月28日、朝日新聞は「地方分権 人手不足で転換」との記事を掲載し、その中で「政府は、人手不足で市町村が担いきれない自治体業務を都道府県が担うなど、市町村事務の再編・統合に向けた検討に入る。2026年1月にも政府の地方制度調査会で議論を始める」と述べています。

これに先立って、総務省は地方公共団体の行財政の持続可能性をめぐって、2024年11月に有識者研究会を設置し、各行政分野の事務を分析し、課題と対応方策を例示した報告書(後述)を公表しています。先の記事によれば、総務省は「地方分権は転換点に来た。放置すれば、10年後には自治体業務が回らなくなる」として、2025年9月に全都道府県の担当者会議を開催し、その中で対応策として、▽市町村の事務を都道府県に移す▽近隣の市町村が広域で連携し対応する▽デジタル化を進めるといった例を示し、今後の業務分担のあり方を模索するよう促しました。すでに国の動きを受けて検討を進めている県もあるといいます。

第34次地制調の発足と諮問内容

こうした中、政府は今年1月19日に第34次地方制度調査会(以下、地制調)を設置し、第1回総会を開催しました。会長には市川いちかわ あきら委員(住友林業会長)が選任され、木原誠二きはらせいじ官房長官から諮問文が手交されました。内容は以下の通りです。なお、専門小委員長には山本隆司やまもとyるうじ氏(東大教授)が選任され、会長共々3期連続の選任で、これまでの路線が継承されています。

人口減少により深刻化する人材の不足や偏在、デジタル技術の進展等の課題に対応し、将来にわたり、地域の特性に応じて、持続可能かつ最適な形で行政サービスを提供していくため、国・都道府県・市町村間の役割分担、大都市地域における行政体制その他の必要な地方制度の在り方について、調査審議を求める。

諮問の趣旨について、はやし 芳正よしまさ総務大臣は「将来にわたって住民の生活を守り、個性豊かで活力ある地域を残していくためには、自治体が社会の変化に対応し、本来注力すべき事務に注力するための取組をこれまで以上に着実に進めていく必要がある。そのため、地方の声にも耳を傾けながら国・都道府県・市町村間の役割分担や大都市地域における行政体制等の地方制度のあり方について、従来の発想にとらわれず、柔軟に議論を行うことが重要である」と述べています。

その後の懇談では、主に地方6団体の委員から発言があり、その内容は総会議事録が総務省サイトにアップされていますのでお読みください。

今後、実質的な審議は専門小委員会で行われます。審議はまだ始まったばかりですが、ここでは今次地制調の諮問の趣旨、留意点、課題について検討します。

総会を受けて、2月18日に第1回専門小委員会が開催されました。そこで事務局から諮問事項に係って(1)国・都道府県・市町村の役割分担のあり方に関する検討の方向性(案)、(2)大都市地域における行政体制に関する検討の方向性(案)が提示されました。その内容は、専門小委員会の初回では異例ともいえる、かなり踏み込んだものであり、当初から事務局が審議の方向性を提示するもので、審議のあり方としては問題です。このことについて、山本専門小委員長は「通常ですと、地方制度調査会の第1回は基礎資料を提示するのですが、今回はそれに比べますと一歩踏み込んだ形の資料になっております。冒頭に申し上げたように、今回はかなりテーマが重いということがありまして、初回から事務局にいつもより踏み込んだ資料を作成していただいております」と述べています。その背景については、後で触れます。

事務局案の要旨は次の通りです。

(1)国・都道府県・市町村の役割分担のあり方に関する検討の方向性(案)

地方分権改革の下での役割分担の基本的なあり方では、①基礎自治体(市町村)優先の原則」を踏まえ、基礎自治体に対して積極的に事務や権限を移譲してきた、②国は本来果たすべき役割を重点的に担い、都道府県はその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないものを補完的に処理する、③主体間の連携では、自治法上の共同処理制度の選択肢の拡大、④政策遂行プロセスでは、地方自治に影響を及ぼす国の施策の立案過程に地方の意見を反映するための仕組みを整備してきた。

社会経済情勢の変化に対応して進められてきた取組は、①簡素で効率的な行政の要請等を背景とした実施主体の最適配分では、▽NPMの台頭等を背景に事務・権限の一部を外部化する手法の定着、▽国による標準的な事務処理のあり方や基準設定の拡大、▽安定的な財政運営等の観点から事務の実施主体を市町村から都道府県単位に広域化、▽住民との近接性が求められず統一的な事務処理が可能なものは地方共同法人等により全国単位で広域化、▽国や地方共同法人等が提供する共通基盤・共通機能を地方公共団体が共同利用することを進めてきた。

②行政ニーズに応じた連携のあり方の多様化では、▽複数の地方公共団体が一体となって行政サービスを提供する協働的な手法の拡大、▽複数の団体や分野のインフラを「群」として捉え維持管理を効率的・効果的に行う取組の推進、▽激甚災害の頻発化や技術職員の減少等を背景に災害等の一定の場合における国等による代行制度の拡充を進め、③政策の立案・実施プロセスへの地方の参加では、▽国と地方で構成される協議会で共通化するシステムの選定や進捗状況の管理を行う推進体制の構築、▽住基ネット利用事務について地方公共団体との協議を通じて分野横断的な見直しを推進してきた。

〈検討の方向性(案)〉

○将来にわたって、持続可能かつ最適な形で行政サービスを提供していくための国・都道府県・市町村の役割分担のあり方については、これまでに進められてきた取組から、

  • 地方公共団体の業務の各プロセスにおいて実施主体を調整する「行政主体を通じたプロセスの最適化」の定着
  • 典型的な共同処理制度以外の「簡素で弾力的な連携手法」の指向
  • 企画政策の立案から実施の各段階で、国と地方が方針や進度などを調整する「国・地方が協働した政策立案・実施」の仕組みへの期待の高まり、といった傾向が表出していると言えるが、これらをどう評価するか。

○これらの傾向をより加速させる必要がある場合には、国・都道府県・市町村の役割分担のあり方に関する新たな考え方として定式化する必要があるのではないか。

○役割分担の新たな考え方を各行政分野に広げていく必要がある場合には、これを各府省にフィードバックし、現場のニーズに合致した形で必要な個別法の見直しを行うなどの動きにつなげていくことが求められるのではないか。

(2)大都市地域における行政体制に関する検討の方向性(案)

大都市圏では、自治体の区域を超えて都市が連坦するほか、規模能力が大きい都市が存在し、大都市が経済成長を牽引する方向性と圏域における広域行政を充実させる方向性を如何にして調和させるかが、固有の課題になってきている。このような中で、国内外の大都市では、①効率的な行政執行のため一層制の大都市の創設等の垂直的な統合、②大都市圏全体で広域的に事務を処理する仕組み等の水平的な連携・統合という、概ね二つの方向性の間で様々な制度が模索されてきた。今後の社会経済情勢を見据えた大都市制度のあり方として、都道府県から独立した一層性の大都市である、いわゆる「特別市」の制度化による垂直的な統合の意義、課題、課題への対応方策をどう考えるのか、また、大都市圏における都道府県や指定都市の区域を超えた水平的な連携・統合をどう考えるのか、強化する場合の課題は何かの検討が求められる。

今後、審議は約2年かけて行われますが、朝日新聞(2026年2月19日付)によれば、年内をめどに中間報告をまとめ、最終的には地方自治法等の改正も視野に入れています。

先行した有識者研究会の報告内容

総務省は、今次の地制調の審議に先立って有識者研究会「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」(座長・山本隆司)を設置し、事前の検討を行っています。報告書は2025年6月に公表されており、それは今後の審議の基礎にもなるものであり、内容を見ておきたいと思います。

報告書は、今後、人口減少、人材不足が深刻になる、新たな視点から地方行財政、事務処理のあり方を見直すことが必要であると指摘し、対応策として、①事務を減らす、②まとめる(水平連携・垂直補完)、③担い手を広げる(民間活用・住民参加)、④生産性を高めることが求められる。まず、市町村が地域の状況を踏まえて検討し、それを都道府県が支援し、国は具体的な対応方策について一定の選択肢を示し、制度上対応すべきものについては国・都道府県・市町村の役割分担の変更等の見直しを行うとしています。

具体の業務分析では、既に10分野(介護保険、国民健康保険、老人福祉施設、保育、小中学校教育、道路、上下水道 、鳥獣被害対策、地球温暖化対策、消費生活相談)について調査、検討を行い、具体の方向性を例示しています。他の業務についても新たな見直しの視点を踏まえて順次見直すよう提起しています。なお、社会教育分野については、現在、中央教育審議会(生涯学習分科会)で具体の検討がされています。

検討に向けた留意点、課題

まず、審議の進め方ですが、前述のように事務局は第1回専門小員会で審議の方向性、土俵づくりに係る「検討の方向性(案)」を提示しており、相当前のめりになっています。それはこの間の新聞報道にもあるように、今次の地制調が市町村業務の再編・統合、地方分権改革の転換を意図しており、地方自治法改正も視野に入れているからです。今次地制調の幹部も「今回はかなりテーマが重い」「そもそもの考え方から整理をしなくてはいけない段階になっている」(山本専門小委員長)、「もっと大きな枠組みの中で制度あるいは必要な法律を見直しておかないと次の時代にはマッチできなくなる」(市川会長)、「基礎自治体、広域自治体の在り方がどうあるべきか、国がその役割分担を整理する、制度化が必要であればする」(谷口副会長)と述べています。その意味では、政府・総務省主導であり、事実が先行し、地制調は政府の戦略、政策的意図を公的にオーソライズする役割を担わされているといえます。

もちろん、今日の市町村の置かれている状況や業務の実態、実施体制等をリアルに見れば、市町村業務のあり方の検討は必要であり、その実効ある対策が求められています。問題は検討の方向性、視点です。事務局案では、この間の取り組みとして業務の外部化、国による標準的な事務処理のあり方や基準の設定、事務の主体を都道府県単位に広域化、協働的な手法の拡大、国等による代行制度の拡充等が例示され、それらを踏まえて「簡素で弾力的な連携手法」や「役割分担のあり方に係る新たな定式化」が提起されています。その意味では、これらの内実をよく見極めていくことが必要です。基本は、市町村業務の縮小再編・統合、地方分権改革の転換ありきではなく、全国市長会会長の松井まつい一實かずみ委員も述べているように「基礎自治体優先の原則、補完性・近接性の原理を維持しながら住民に身近な基礎自治体が、今後いかに持続可能な形で行政サービスを提供していくのか、そのあり方を考える視点が重要」(総会発言)です。

大都市地域の行政体制に関しては、事務局の提案を受けて、議論がに特化しています。指定都市市長会も、諮問に合わせて早々に「特別市」制度の法制化を求めるコメントを発表しています。しかし、同制度は二層制の自治、府県の役割、住民自治の後退、形骸化、更には府県の再編にも繋がります。また、その内実も広域行政(自治)の充実というよりは、大都市の持つ「経済成長を牽引する方向性」に重点を置いているように見えます。その一方、自民党と日本維新の会の連立政権合意書の統治機構改革では、副首都構想絡みで大阪市を廃止し特別区を設置して広域行政に係る権限、予算を大阪府に一元化する「大阪都構想」も再々度浮上してきています。

そうした中で、全国知事会会長の阿部あべ守一しゅいち委員は「特定の制度を前提とした議論ではなく、大都市の果たすべき役割や都道府県、周辺自治体との関係を含めて幅広く丁寧に検討すべきです」(総会発言)と述べています。

最後ですが、この課題を考える際に政府の地方制度改革、自治体戦略との関連をよく見ておくことが必要です。この間、政府は急激な人口減少、少子高齢化、資源制約等により地域、自治体を取り巻く環境は一層厳しくなる、「人口減少時代のパラダイムへの転換が必要である」として、自治体戦略2040構想を軸に徹底した自治体のスリム化、公務の市場開放・外部化、デジタル化、職員削減を推進してきました。公務・公共サービスは民に委ね、地域に委ね、今度は都道府県・国等に委ねていく。それは基礎自治体としての本来の市町村の役割を縮小再編、形骸化させるものです。その根底には、地方分権から集権化、地方自治から地方統治構造への転換を図る政府戦略が明確にあります。第33次地制調での国の地方自治体への補充的指示権、指定地域共同活動団体制度の創設もその一環であり、指定地域共同活動団体制度は自治体の役割をサービスプロバイダー(サービス提供者)からプラットホームビルダー(場の構築管理者)に転換させる戦略の具体化です。

そもそも政府には、基礎自治体そのものを拡充、強化する方針はなく、指定団体制度に係る国会審議(第213回国会)でも、「各市町村が地域の実情や行政課題に応じて市町村間の広域連携や都道府県による補完、自主的な市町村合併など多様な手法の中から最も適したものを自ら選択することが最適である」「デジタル技術を最大限に活用してサービスの維持強化や地域の活性化を図ることが重要」「地方創生の取組も一定の成果を上げてきた」と答弁しています。これはまさに基礎自治体(市町村)の再編方策です。地方創生にしても、重点施策の出生率の向上、東京一極集中の解消は改善どころか更に悪化し、地方は疲弊しています。「コンサル栄えて国滅びる」(横山 勲『過疎ビジネス』集英社新書、2025年)と告発されているように、誰の何のための施策なのか、その根本が問われています。

今後、審議は専門小委員会で急ピッチに進みます。第2回から関係省庁のヒアリングも始まっています。私たちも審議内容をよく見極め、精査、検証し、制度改革、法改正までも視野に入れて取り組んでいくことが必要です。

角田 英昭

1944年生まれ。神奈川県庁に就職、退職後、自治労連地方自治研究機構、自治体問題研究所で調査研究活動に従事。著書(共著)に『地方制度改革はどこに向かうのか─「公共私の連携」と指定地域共同活動団体制度』(自治体研究社、2025年)他。

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