【連 載】自維連立政権合意書を検証する
自治労連・地方自治研究機構と自治体問題研究所は2026年4月から、自由民主党と日本維新の会の連立政権合意書についての合同研究会をスタートさせました。平和・人権・生存権を脅かすそれらの政策から市民生活と地方自治を擁護していくため、憲法・地方自治の視点から検証します。
- (このページ)第1回 統治機構改革(副首都構想)の内容と問題点(中山 徹)
- 第2回 インテリジェンス政策を検証する(山口 真美)
- 第3回 医療保障の抜本的な縮減と皆保険の空洞化(長友 薫輝)
- 第4回 介護保険制度の根幹を破壊する政策(日下部 雅喜)
- 第5回 自維連立政権合意書の憲法改正を検証する(山口 真美)
- 第6回 原発・エネルギー政策(大島 堅一)
- 第7回 安全保障(関 耕平)
- 第8回 外国人政策(柏原 誠)
- 第9回 まとめ(中山 徹)
「自由民主党・日本維新の会連立政権合意書」(2025年10月)が発表され、「一一、統治機構改革」が明記されました。その内容は「首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散及び多極分散型経済圏を形成する観点から、令和七年臨時国会中に、両党による協議体を設置し、首都及び副首都の責務及び機能を整理した上で、早急に検討を行い、令和八年通常国会で法案を成立させる」となっています。その後、自民と維新による協議体が設置され、2026年3月31日に「『国家社会機能継続性確保施策の推進及び副首都の整備に関する法律案』(仮称) 骨子案(ポイント)」)(以下、副首都法案(2026))が発表されています。ただ、この文章を書いている段階(5月14日)では法案は通常国会に提出されていません。そのため、副首都法案(2026)までの情報を元に、なぜ維新が副首都構想にこだわっているのか、それが地方自治との関係でどのような問題をもたらすのかを中心に考えます。
副首都法案(2026)の概要
定義と要件
副首都法案(2026)では、首都中枢機能代替地域と副首都の二つを定めています。前者は「大規模災害時に一定期間、首都中枢機能の一部を代替する機能を担う地域」で、後者は「大規模災害時に一定期間、首都中枢機能の全部又は大部分を代替する機能を担うとともに、多極分散型経済圏の形成の中核となる機能をも担う道府県」です。
前者の要件は、「東京圏との同時被災の可能性が低いものとして政令で定める要件に該当する地域」で、想定している災害は、首都直下型地震と富士山の噴火です。
後者の要件は、前者の要件に加え、以下のすべてに該当することとしています。「政治及び行政の中枢機能を代替する機能を発揮するため、国の行政機構の立地の状況について政令で定める要件を備えること」「経済及び人口の集積の状況について政令で定める要件を備えること」「副首都が担う機能を十分発揮するために必要な地方行政体制について政令で定める要件を備えること」。最後の要件については、以下のイメージが書かれています。政令市と県の連携協約等が結ばれていること、大都市法に基づく特別区(今後制度化された場合は特別市)が設置されていること。
基本方針、施策
政府は施策を進めるための基本方針を定め、副首都が指定されたときは、副首都ごとに整備方針を定めます。
首都中枢機能代替地域については、「事業者等によるバックアップ投資促進のため、必要な税制上の措置の整備その他の必要な施策を講ずる」としています。副首都については前記に加え、「首都中枢機能の代替のための拠点の整備、都市機能の増進に寄与するまちづくりの推進、規制緩和、民間投資の促進に必要な税制上の措置等の施策を講ずる」としています。
副首都構想は大阪都構想を実現するための方法
大阪都構想の否決→副首都構想の提案
副首都で重要なのは副首都の要件です。ここでは、副首都の要件が大阪都構想との関係でどう変化したかを見ます。
2015年5月に大阪都構想の住民投票が行われ、都構想が否決されました。それを受け、維新はその年の12月に副首都推進本部を設置しています。副首都推進本部の役割・機能については「東西二極の一極として〝首都・東京〟とともに我が国の成長をけん引し、非常時には首都機能のバックアップを図る〝副首都・大阪〟の確立に向けて」「『副首都』の必要性や意義、『副首都』にふさわしい都市機能や行政機能のあり方などについて」検討するとしています。
そして2017年3月に最初の副首都ビジョンが発表されています。そこでは副首都が必要な理由を3点にまとめています。一つ目は、「日本全体の成長力を高めるためには、東京⼀極に頼るのではなく、国全体の成長をけん引する国際競争力を持つ拠点都市を複数創出する」必要があること。二つ目は、「災害リスクを抱えるわが国において、東京一極集中は大きなリスク要因であり」「東京と同時被災の可能性の低い都市にバックアップ」機能を持たせる必要があること。三つ目は、「中央集権型システムを打破し、地域の自己決定・自己責任に基づく分権型の仕組みへの転換を先導する都市をつくる」必要があること。副首都にふさわしい行政機能については、広域機能と基礎自治機能を分けて議論し、内容的には大阪都構想ですが、大阪都構想が望ましいとは結論づけず、「副首都・大阪にふさわしい制度の検討を深めていく必要」があるとしています。このようにしたのは大阪都構想が住民投票で否決されてまだ2年しかたっていないからです。
この表現を変えたのは2019年7月の副首都ビジョン修正で、「特別区制度の実現により」「広域機能については大阪府に一元化」すると明記しました。言うまでもなくこれは大阪都構想のことです。
行き詰まった大阪都構想と副首都構想
維新は大阪都構想の2回目の住民投票を2020年11月に実施しました。大阪都構想は、二重行政をなくすと同時に大阪が副首都になるための条件だと訴えたわけです。ところが住民投票で大阪都構想が再び否決されたため、翌年3月に条例によって大阪府と大阪市の広域機能の一元化を進め、4月にはその条例に基づいて副首都推進本部(大阪府市)を設置しました。そして2023年3月に副首都ビジョン(改定版)を発表しました。副首都については「平時の日本の成長、非常時の首都機能のバックアップを担う」とし、従来の考えを引き継いでいます。2019年7月の修正では、副首都にふさわしい行政機構として特別区の設置を明記していましたが、2023年3月の改定版では、特別区の設置という表現はなくなり、代わりに「大都市における国と地方、広域自治体と基礎自治体のあり方について、公民連携や海外の取組事例も視野に、引き続き調査・知見収集を進める」に後退しました。このように変化したのは大阪都構想が2回にわたって住民投票で否決されたからです。
これに基づいて維新は「副首都機能の整備の推進に関する法律案」(以下、副首都法案(2023))を211通常国会に提出しました。この副首都法案(2023)では、副首都機能を「東京圏と並ぶ我が国の経済の中心として我が国の経済の成長を牽引するとともに、災害等の発生により首都中枢機能の全部又は一部の機能を維持することが困難となった場合に当該機能を代替する機能」と定義しました。
そして副首都の要件を、以下のいずれにも該当する地域としました。一つ目は「人口及び都市機能の集積の程度が高く、経済活動が活発に行われている地域」。二つ目は「東京圏が災害により著しい被害を受ける場合に同一の災害により著しい被害を受けるおそれが少ないと見込まれる地域」。副首都の要件に特別区の設置を入れることができなかったのは、二度にわたって大阪都構想が住民投票で否決されたこと、「大阪ありき」「我田引水」と批判されていたからです。実際、法案を提出しましたが、審議は行われず、大阪都構想、副首都構想、双方とも行き詰まっていました。
自公大敗という神風で、維新の思惑に沿った副首都法案が実現に向けて動き出す
この事態を大きく変えたのが2024年10月の衆議院議員選挙と2025年7月の参議院議員選挙です。自民、公明が大敗し、衆議院、参議院の両方で与党過半数割れが起こりました。この段階で、どの野党を与党に巻き込むかという政局になりました。
維新は2025年9月に「副首都機能の整備に係る立法措置 骨子素案」(以下、副首都法案(2025))を発表しました。目的は副首都法案(2023)と同じですが、要件の三つ目に、「大都市地域における特別区の設置に関する法律による特別区の設置が行われていること」を入れています。維新はこの副首都法案(2025)を成立させるのであれば、与党に加わるという態度に出ました。そして冒頭に書いた連立政権合意書が2025年10月に交わされ、自維連立政権が誕生しました。
維新は副首都法案(2025)を成立させ、大阪が副首都になるためには大阪都構想の実現が不可欠であると訴え、3度目の住民投票を行い、今度こそ大阪都構想を実現させようとしたわけです。
再び妥協を余儀なくされる
自維連立政権合意書に基づいて両党による協議体を設置し、議論を始めましたが、最大の問題は、特別区の設置を副首都の要件に入れるかどうかでした。特別区の設置を要件にすると、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」第2条に定められた200万人以上の条件を満たす必要があります。また、特別区の設置について積極的なのは大阪だけであり、大阪以外が副首都に名乗りを上げるのはほぼ不可能になります。
この膠着状況を動かしたのは2026年2月の衆議院議員選挙です。自民党は単独で3分の2を超える議席を衆議院で確保しました。参議院では過半数割れですが、状況が大きく変わり、維新のごり押しともいえる交渉では前に進まなくなりました。その結果発表されたのが副首都法案(2026)です。先に見たように、特別区の設置は要件になっていますが、それ以外でも要件を満たせるようになっています。ある程度、維新の顔を立てつつ、それ以外の道府県にも可能性を持たせた仕組みになっています。
| 2015年5月 | 大阪都構想住民投票(1回目)→否決 |
|---|---|
| 2015年12月 | 副首都推進本部を設置(2023年2月まで) 構成:大阪府、大阪市、堺市(2019年8月から参加) |
| 2016年4月 | 副首都推進本部を指定都市都道府県調整会議(地方自治法第252条の21の2)として位置づけ |
| 2017年3月 | 副首都ビジョン(2018年3月、2019年5月、2019年7月、2020年3月に修正) |
| 2020年11月 | 大阪都構想住民投票(2回目)→否決 |
| 2021年3月 | 大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例 |
| 2021年4月 | 副首都推進本部(大阪府市)会議を設置(現在も継続)(条例第10条に基づき設置)、構成:大阪府、大阪市 |
| 2023年3月 | 副首都ビジョン(改定版) |
| 2023年3月 | 「副首都機能の整備の推進に関する法律案」(211通常国会、維新提案)→廃案 |
| 2024年10月 | 衆議院議員選挙、自公改選議席数290→獲得議席215で惨敗、全議席465で自公過半数割れ |
| 2025年7月 | 参議院議員選挙、自公改選議席66→獲得議席47で惨敗、自公で122議席(全議席248)で過半数割れ |
| 2025年9月 | 維新「副首都機能の整備に係る立法措置 骨子素案」を発表 |
| 2025年10月 | 自維連立政権合意書→自民・維新連立政権(維新は閣外協力) |
| 2026年2月 | 衆議院議員選挙、自民改選議席数198→獲得議席316で圧勝、全議席465で自民だけで2/3を確保 |
| 2026年3月 | 「国家社会機能継続性確保施策の推進及び副首都の整備に関する法律案」(仮称)骨子案(ポイント) |
筆者作成
背水の陣で臨む維新、自治を揺るがす大問題を提起
そうなると3回目の住民投票を行っても、大阪都構想が否決されかねません。それを避けるために維新の会の吉村洋文代表は、住民投票の対象者を大阪市民ではなく大阪府民にすると言い出しました。
副首都法案(2026)の附則には「副首都が名称変更を希望する際の住民投票等の手続等について定める大都市法の改正を行う」と書かれています。普通に読めば、「大阪府」を「大阪都」に変えるかどうかの賛否を問うための住民投票です。この場合、住民投票を実施するのであれば、対象は大阪府民になります。
それに対して吉村代表は、「『都』を目指すということであれば、府全域の(都構想の)住民投票にするという法案になっている」「過去2回の住民投票の対象は大阪市だけだったが、名称を変更する場合は府全域に拡大できる」と述べています。
吉村代表は、多くの大阪府民は、大阪市を存続させるよりも、大阪府が副首都になる方を選ぶだろう。そのため、大阪府民を対象に大阪都構想の住民投票を実施したら、賛成票が多くなると考えているようです。
吉村代表の見解ですと、大阪市を廃止し特別区を設置する住民投票を、大阪府民の投票で決めるということになり、住民自治の視点から極めて大きな問題です。大都市法第7条で、市町村を廃止し特別区を設けるにあたっては、関係市町村における選挙人の投票(住民投票)を行わなければならないとしています。大阪都構想の場合、廃止するのは大阪市のため、大阪市民による住民投票になり、過去に2回実施されています。もし吉村代表が言うように大阪市民ではなく、大阪府民を対象とした住民投票にするのであれば、大都市法の改正が必要になります。この場合、大阪市を廃止するかどうかを、大阪市民以外も含めた住民投票で決めることになり、住民自治という点から見て重大な問題になります。
またほぼ同じ内容で、住民投票を3回もするのが、民主主義という点から見てどうなのかという大問題もあります。大阪ではこれを「勝つまでじゃんけん」と呼んでいます。9回連続で負けても、10回目に勝てば民意を得たと言えるのでしょうか。
おわりに
紙幅の関係で詳しくは述べませんが、副首都構想のもう一つの狙いは大阪経済活性化を政府の権限、予算を活用して進めることです。これについては最初から一貫しており、副首都法案(2026)でも明記されています。維新が大阪府政、大阪市政を担当して15年たちます。その間、維新が進めてきた経済対策は、大型開発、規制緩和、インバウンドです。このような経済対策を、副首都と言うことで、法制上、財政上、税制上の優遇措置を勝ち取り、さらに進めようとしています。大阪以外で副首都に名乗りを上げようとしている自治体の狙いも同じです。
さて、副首都法案(2026)のポイントは副首都の要件と経済対策の二つです。維新は大阪都構想を実現するために、特別区の設置を副首都の要件にしようと画策してきました。しかし、そもそも大阪都構想を実現する必要はないため、その点から見ると副首都は不要です。また、地域経済が低迷している最大の理由は消費不況です。それを引き起こしているのは、雇用の不安定化、実質賃金の低下などです。そこに手をつけず、維新が進めてきた経済対策を国の財源、権限を引きずり込んでさらに進めても、大阪経済の活性化は実現しません。そのような経済対策を進めるための副首都も不要です。むしろ地域経済の活性化をどのように進めるかという議論が必要です。
ただし、大規模災害時のバックアップ機能は重要です。それも、現状のままで国の機関を移転させるのではなく、地方分権をさらに進めつつ、バックアップ機能に限定した議論を進めればいいのではないでしょうか。
【注】
- 1 日本維新の会WEBサイト
- 2 副首都推進本部事務局「第1回副首都推進本部会議資料・副首都推進本部について」2015年12月
- 3 「朝日新聞」2026年4月2日配信
